どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ねえさんといもうと

2019年05月17日 | 絵本(外国)


   ねえさんといもうと/シャーロット・ゾロトウ・文 酒井駒子:絵:訳/あすなろ書房/2019年


 1974年に矢川澄子さんの訳で、福音館書店から発行されていますが、この2019年に酒井駒子さんの絵・訳で出版されたもの。絵と訳がおなじ方というのははじめてでした。

 ねえさんは とっても いもうとおもい。

 でも、あるひ、いもうとは なんだか ひとりになりたいと思いました。

 「さあ すわって」「あっちよ」「こっちよ」「さあ おいで」といわれるのに、あきあきしたのです。

 そこで、ねえさんが、おやつをよういしているあいだに おうちをでて みちをどんどんあるいていって、くさはらの なかに。
 ねえさんの よぶこえがきこえてきても、へんじをしません。

 でも、いもうとは、野菊の中にねころんで、ねえさんのことを考えます。

 ねえさんといもうとの、こころの微妙な交錯が、いわさきちひろをおもわせる絵で展開します。

 ねえさんがあまりひどくなくので、いもうとは、ねえさんのかたに てをおいて いつもおねえさんにしてもらうように やさしく なぐさめてあげます。

 少し距離を置くと、それまでみえなかったものが見えてくる瞬間があります。
 兄弟だったらどうなるかちょっと考えました。

 おかあさんがでてこないのですが、二人目が生まれると、おかあさんは下の子に手がかかり、姉はひそをまげてもおかしくはありません。素敵な子育てをおもわせる、あねといもうとです。


おおきさくらべ

2019年05月16日 | 絵本(昔話・日本)


    おおきさくらべ/川村 たかし・文 遠山 繁年・画/教育画劇/2003年


 「上には上がある」「井の中の蛙大海を知らず」型ですが、「おれは このよのなかで いちばん おおきいのさ」と、いつも じまんしていた つるが主人公。

 池の方が大きいといわれ、ずうんとのびをし、山の方が大きいといわれると、また背伸びをしておおきくなってみせた つる。

 山に言われて海にいくと、そこには、大きな大きな”えびだいじん”。つるは、エビほどずうんとのびることができず、おまけにクジラの鼻からふきだしてもとのところへ。

 海、空、つるは自分より大きいものは いくらでも どこにでも、あることに気がつきます。だからといって自分を卑下していないようですよ。

 小さな子にも”大きい”っていうのが、どういうことか素直につたわりそうです。

 ”えびだいじん”、なかなか迫力がありました。


すいかのたね

2019年05月15日 | 絵本(日本)


    すいかのたね/さとう わきこ:作・絵/福音館書店/1987年


 ばばばあちゃんが、すいかの種を植えたのを見ていたこねこがさっそく地面をほってみると、でてきたのは くろい すいかのたねが ひとつ。「なあんだ つまらない くろい たねだ」と、がっかりして、またもとのようにうめておくと・・。 

 それを見ていたうさぎも、きつねもほじくってみて、「まったく くだらん くろい すいかの たねじゃないか」

 きつねをみていた ばばばあちゃんも、自分が植えたことを忘れ、ほじってみて、「なあんだ、すいかのたねか」というと、スイカの種は怒り心頭。

 「いいかげんにしろ。つまらんとか なんとか やたら いいくさって! もう おいら めをだすのは やめだ やめだ!」

 すると、ばばばあちゃんもおもわず怒鳴り返します。

 「おまえさんが いつまでも ぐずぐずしているから こういうことになるのさ! いいかげん めを だして おおきくおなり!!」

 すると、スイカの種は、「これでも これでも つまらんやつかい え!」とばかり、猛烈なスピードで、ぐんぐんおおきくなり、森の中だけでなく、ばばばあちゃんの家もスイカだらけ。

 ばばばぁちゃん、切れたのではなく、植物の心理が、よーくわかっていたんですね。

 みーんな、おいしそうに食べています。

 ばばばあちゃん とってもいい味が出ています。

 うらやましいほど、スイカが あっちにも こっちにも ぽこん ぽこんと なっています。 


ゆうこのキャベツぼうし

2019年05月14日 | 絵本(日本)


    ゆうこのキャベツぼうし/やまわき ゆりこ:作・絵/福音館書店/2008年



 おおきなキャベツをもらったゆうこ。帰る途中暑くなったので葉を一枚はがして、ぼうしがわり。

 キャベツぼうしが大きすぎて、目の前がよく見えず、どしん!とこぐまにぶつかって、こぐまにもキャベツの葉を一枚。

 こぶたとこぎつねにも一枚。うさぎにも一枚。

 ”おおかみおに”ができると、こぶたがおにになって「おれは おおかみだぞ つかまえて くっちゃうぞー キャベツぼうしも くっちゃうぞ」と、みんなをおいかけていると、きのかげからおおかみが。

 おおかみが おいかけようとすると もう だれもいません。そのとき、こぶたがくしゃみをして、おおかみにつかまってしまいます。

 いつもは悪役のおおかみですが、おおかみもキャベツぼうしをかぶって「おおかみおにごっこ」です。

 いっぱい遊んだ後は、うちでキャベツをたべます。ゆうこのおかあさんも、おいしいロールキャベツをつくってくれます。

 でもオオカミは、キャベツぼうしを たべずに だいじに とっておきました。

 キャベツが嫌いな子がいたら、読んであげたい絵本です。


警官と讃美歌

2019年05月14日 | オー・ヘンリー

     赤い酋長の身代金/オー・ヘンリー ショトストーリーセレクション 千葉茂樹・訳/理論社/2008年


 公園のベンチで、新聞を利用して一夜を過ごそうとしているソーピーにとっては、冬将軍の挨拶状は至極迷惑。
 今年もその時期がやってくると、ブラックウエル島刑務所が、彼の別荘地。

 慈善団体や自治体の施設もあるが、慈善でほどこされる寝床には、いつも入浴の義務がついてまわり、パンをひとつもらうたびに、根掘り葉掘り質問されるのは、ソーピーの誇り高い魂にとって耐えがたい苦痛。

 法律のお世話になって刑務所にはいるほうがまし。

 まずは高級レストランで、散々おいしいものを食べて、金がないと宣言すること。上着は見苦しいものではなく、うまくいくと目論見どおりいくかも。ところがすり切れたズボンとぼろぼろの靴のせいで、入店お断り。

 それではと、きらびやかに陳列されたショーウインドウに敷石を投げつけるが、駆けつけた警官は、窓ガラスをこなごなにした人間が、いつまでも現場にいるはずがないと、路面電車に乗ろうと走っている男をおいかけはじめます。

 気取りのないレストランで、ステーキ、パンケーキ、ドーナツとパイを食べて、無銭飲食を告げると、ふたりのウエイターから店から放り出されてしまいます。

 ショーウインドウの前に立つ、品のいい服を着たおしとやかな若い女性を「女たらし」をよそおって、遊びに誘うと、「ええ、いいわよ」と彼女は楽しげ。「ビールをたっぷりおごってちょうだい、わたしも 声をかけようとおもっていたんだけど、おまわりがみているんだもの」

 女をふりはらってにげだし、やってきたのは讃美歌がながれてくる教会。

 そこでソーピーに不思議な変化が。退廃的な日々、恥ずべき欲望や枯れてしまった希望、破綻した才能や生きる原動力になっているあさましい動機などをふり返って、恐怖を感じたのです。

 なんとしても泥沼からはいあがり、なんとしても自分をしっかりとりもどそうというというソーピー。

 明日は仕事をさがそうとすると、だれかがソーピーの腕をつかみます。ごつい顔の警官でした。

 何もしないソーピーに治安判事は、三か月の禁固刑を命じます。


 わざと捕まろうとしても捕まらず、人生をやり直そうと決意したとたんに刑務所おくりになるのは、人生そのものかも。


ばけずきん

2019年05月13日 | 絵本(昔話・日本)


         ばけずきん/川村 たかし・文 梶山 俊夫‣画/教育画劇/2003年


 きつねが悪さをすると、おしまいには、どこか、きつねにとっては悲しい結末ですが、川村さんのは一味ちがいました。

 だんごやで、だんごになりすまして、おきゃくを しこたまおどろかしたり、重箱になって、ひろった子どもをびっくりさせたのはいいが、しっぽがみえて、まだまだ修行が足りない黒ぎつねが、”ばけてぬぐい”をかぶって、稽古中。

 ひとりのお坊さんが、きつねをみつけ、ばけてぬぐいは、役に立たなくなったからと自分の頭巾ととりかえっこ。

 お坊さんからもらった頭巾をかぶって 町にでた黒ぎつねでしたが、姿は丸見え。でも町の人はお坊さんの頭巾をかぶっているので、えらい人かもと、手をあわせておがみます。

 いい気分のきつねが、ふと水たまりをのぞくと、自分の姿が、うつっています。

 ここまでくると、きつねがおぼうさんに仕返しするかと思うと、お坊さんが頭巾がなくて、いまごろ、寒くないかなと、頭巾を、かえしにいきます。

 お坊さんもあたたかそうなずきんをかぶって、落ち葉掃除です。

 ずいぶんこころ優しいちいさな黒ぎつねでした。


こわい!?おもしろい^0^おはなし会  2014~2024

2019年05月12日 | お話し会

 5月の図書館祭りでのおはなし会。

2024.5.16
 もう少しで猛暑日でした。

 1 手遊び
 2 すずめとからす(語り)
 3 ワンピースの話
 4 よかったね(大型絵本)
 5 三本のカーネーション(イタリアの昔話)

2019.5.12
 ぽかぽか陽気。不特定多数だと、年齢もさまざでまですが、楽しめるプログラムでした。

 1 ひねくれもののエイトジョン(アメリカの昔話 偕成社)
 2 おおかみと七ひきのこやぎ(同名絵本 福音館書店)
 3 大きな荷物(おはなしおばさんの小道具 藤田浩子)
 4 くわずにょうぼう(同名絵本 福音館書店)
 5 日天さん、月天さん(ペープサート 永柴孝堂)

 たまたま「おおかみと七ひきのこやぎ」を読んでいたのですが、同じ話でも訳が微妙に違っています。
 おおかみが、がらがら声をなめらかにするのがハチミツでしたが、岩波少年文庫では、チョーク。
 岩波版では、針と糸、はさみをもってでかけますが、今回のは、おおかみをみつけてから、とりにかえります。こやぎが隠れる場所もちがっています。


2018.5.13
 あいにく雨模様の一日でした。

 1 でいだんぼうのおとおりだ! (小川町の民話 はすの実ころり/民話らいぶらりい)
 2 コッケモーモー       (同名絵本 徳間書店)
 3 やなぎのしたから      (手遊び)
 4 ラピンさんと七面鳥     (アメリカの昔話 偕成社)
 5 うさぎのかくれんぼ     (おはなしおばさんの小道具 藤田浩子)
 6 ふしぎなお客        (イギリスとアイルランドの昔話 福音館書店)
 7 アナンシと五        (子どもに聞かせる世界の民話 実業之日本社)

 小さい子から小学生ぐらいまで。どうしても年齢の幅が大きくなるので、焦点のあて方が、むずかしいところがあるのかも。

 「うさぎのかくれんぼ」は指人形を使ったもの。布のなかにかくれるのですが、きになるらしく後ろをのぞきこむ子も。

 「コッケモーモー」は、絵本の展示をみて、さっそく借りだす保護者のかたがいました。
小学校での絵本の読み聞かせや語るときに、学校の図書館にあるのか確認しておくと、図書館の利用につながりそうです。 


2017.5.7
 第16回といいますから、16年目。

 1 ふるやのもり(おはなしのろうそく4)
 2 ペープサート ふたりのあさごはん(けんいちとみけやのおはなし にしゆうこ・作 子どもの本研究所)
 3 だいくとおにろく(同名絵本)
 4 エプロンシアター おべんとう
 5 くらーいくらいおはなし(ルース・ブラウン 佑学社)
 6 めっきらもっきらどおんどん(大型絵本)
 7 魔法のかさ(おはなしのろうそく30)

 途中の手遊び。いろいろあって先輩の引出しの多さにあらためて感心するとともに勉強になりました。


2016.5.14

 1 鳥のみじい(子どもに語る日本の昔話2)
 2 かあさんうさぎのつなひき(じょうずなわにのかぞえかたーたのしいどうぶつ昔話ー絵本から)
 3 ろくろっ首(かたれやまんば第3集)
 4 はらぺこあおむし(大型絵本)
 5 ネコの家に行った女の子(子どもに語るイタリアの昔話)
 6 明かりをくれ(スペインの昔話ーおはなしのろうそく30)

 子ども10人以上と保護者の方。手遊びをまじえてあっというまの45分でした。

 「はらぺこあおむし」は、あおむしの人形をつかって食べるシーンもあって人気でした。

 「ろくろっ首」はこわそうですが、笑い話。あっとするオチがなんともいえません。
 自分も楽しめるのもおはなし会のよさでしょうか。


2015.5.16

 1 王子さまの耳はロバの耳(子どもに聞かせる世界の民話 ポルトガル)
 2 にんじんとだいこんとごぼう(かたれれやまんば第一集)
 3 おばあさんとぶた(おはなしおばさんの小道具)
 4 猫と小僧様(かたれやまんば第三集)
 5 ギーギードア(たなかやすこさん語りから)
 6 旅人馬(日本昔話百選)


2014.5.17

 1 アナンシと五(子どもに聞かせる世界の民話 実業之日本社)
 2 食わず女房(子どもに語る日本の昔話3 こぐま社)
 3 三びきのやぎのがらがらどん(同名絵本 福音館書店)
 4 はらぺこピエトリン(子どもに語るイタリアの昔話 こぐま社)
 5 足折れつばめ(子どもに語る日本の昔話3 こぐま社)
 6 三本のカーネーション(子どもに語るイタリアの昔話 こぐま社)

 

2011.5.14

 1 ミアッカどん(イギリスとアイルランドの昔話 福音館書店)
 2 くわずにょうぼう(同名絵本 福音館書店)
 3 ちいちゃい、ちいちゃい(イギリスとアイルランドの昔話 福音館書店)
 4 おいとけ堀(日本昔話百選 三省堂)
 5 ちょうむすび(黒いさくらんぼ 小澤昔ばなし研究所)
 6 地獄からもどった男(子どもに語る日本の昔話1 こぐま社)


つぶときつねのはしりっこ

2019年05月12日 | 絵本(昔話・日本)


         つぶときつねのはしりっこ/文・いしだとしこ 絵・みやじまともみ/アスラン書房/2005年


 赤ぎつねが、田の畔を歩いていると、いっぴきのどろだらけの「つぶ」をみつけます。

 「どろんこ田んぼの ごみかぶり しりこ ねじって どごさいく しりこ ねじって どごさいく」とからかうと、「つぶ」も ふたを ぱくぱくいわせて、いいかえします。

 「やけのが原の 赤ぎつね おまえのしリっぽ もえているぞ おまえのしりっぽ もえているぞ」

 悪口をいいあっているうち、はしりっこ しようとなって、鳥居くぐって 石段百登って、お宮様の松の根まで、はしりっこです。

 「うさぎとかめ」の話ですが、擬音語が絶妙です。

 赤ぎつねがはしる様子は、 しょん しょん しょん しょん しょん しょん

 赤ぎつねのしっぽは、長く立派なしっぽ。「つぶ」がくいつくのは、最適。

 なかなおりするラストも納得で、水田の風景もなつかしい感じです。


たんぽぽのまほう

2019年05月11日 | 絵本(日本)


    たんぽぽのまほう/こどものとも 2018年5月号/河本祥子・作/福音館書店


 のうさぎの〝くう”は、お母さんからいわれて、おばあちゃんにやきたてのクッキーをとどけます。

 おばあちゃんは、くうがもっている、タンポポの綿毛に気がつくと「今日はお天気もいいし、タンポポ日和だ。こんな日には タンポポのまほうがおきるかもしれないよ」と言います。

 くうは、両手いっぱいに綿毛を集め、ふーっと吹いてみます。

 するとふしぎふしぎ、くうの体が 綿毛と一緒にふわりとうかんだのです。

 そのまま、ふんわり ふんわり かぜにながされていくと、ふくろうの家がみえます。
 目をぱちくりしたふくろうじいさんに手をふって、ふんわり とんでいくと、木の枝にひっかかてしまいます。
 そこには、リスさんが。

 リスさんとあそんで、さらにとんでいくと、のねずみのおかあさんが、あわててとびだしてきました。

 子どもたちが病気というので、くうちゃんは、お医者さんをよびにスピード上げてとんでいきます。

 ハリネズミのお医者さんと手をにぎり、綿毛を、ちからいっぱいふくと、すぐにのねずみの家に。

 注射をまっているのねずみの子、こわそう。 

 今はタンポポの季節。綿毛をふきたくなります。季節感いっぱいの絵本です。


ぞうのボタン

2019年05月11日 | 絵本(日本)


   ぞうのボタン─字のない絵本─/原案・なかえよしを うえののりこ・絵/冨山房/1975年


 表紙をよく見ると、ぞうのおなかにボタンが四つ。

 あれ、ぞうのおなかのなかから うまがでてきました。うまにも四つのボタン。
 すると、うまのおなかからライオンが。ライオンにも四つのボタン。

 おなかから、大きな動物から、だんだんちいさな動物がでてきます。

 あひるさんから、ねずみくんがでてきて・・・。

 ねずみのおなかにも四つのボタン。

 ああああ、ぞうさんがでてきます。

 文字が一切ありませんから、読んであげるというより、「なにが出てくるかな?」と会話しながらページをめくっていく感じでしょうか。

 一度見ると、次はなにがでてくると、子どもの声が聞こえてくるようです。そして今度は、もう一度最初にもどり、でてくるものを自分なりに創ることも。


コップをわったねずみくん

2019年05月10日 | 絵本(日本)


    コップをわったねずみくん/作・なかえ よしを 絵・上野 紀子/ポプラ社/1980年


 オットットットト ガッチャーン!
 こっぷをわったねずみくん

 だれかのせいに しちゃおうとして 言い訳をかんがえます

 ぞうさんが ながい はなで のもうとして
 きりんさんが、ながい くびで みずをのもうとして
 あしかくんが きょくげいをしようとして
 とりさんが はねをバタバタさせて
 ねみちゃんが かってに みずをのもうとして・・・

 ねずみくんが、絵の下の方であるきまわり、ぞうときりんが、大きく描かれていて対照的な構図。モノトーンで背景は白とシンプル。アクセントは枠のえんじ色。ページによって、ねずみくんの表情がかわるところも注目です。

 最後は「おかあさん ぼく コップをわりました」と正直者のねずみくんです。

 うんうんとうなずきながら楽しみました。


 図書館の追悼企画展示にあった絵本です。上野紀子さんが亡くなったのは今年の2月。
 ご夫婦で絵本をつくっているのも素敵です。


赤い目のドラゴン

2019年05月09日 | 絵本(外国)


   赤い目のドラゴン/作:アストリッド・リンドグレーン・文 イロン・ヴィークランド・絵 ヤンソン 由実子・訳/岩波書店


 四月のある朝、突然やってきたドラゴンと、十月二日の突然の別れ。

 「わたしは そのばん おふとんをすっぽりかぶって、赤い目をしたみどりいろの わたしたちのドラゴンのことをかんがえて、なきました」

 私が、ぶたごやにいたドラゴンをみつけたのは、ぶたが十匹のあかちゃんをうんだつぎの日でした。

 おかあさんぶたは、はじめはおっぱいをあげていましたが、するどい歯でかみつくので、おっぱいをあげなくなります。

 このままでは死んでしまいます。私と弟は、雨の日も風の日もドラゴンがすきな、つかいのこしのろうそく、ひも、コルクをもっていってあげます。

 ドラゴンはひとこともいわず、ただたべおわったときだけは、大きな音でゲップをし、しっぽを右左にふってまんぞくそうな音をたてました。

 ドラゴンは、ごちそうをとられないように、こぶたにかみついたり、ぶたのえさ箱でおよいだりしました。

 ときどき、機嫌が悪くなって、何日もそんなふううにしていると、私と弟は、とてもはらがたって、ごちそうをあげないというと、小さなドラゴンは、たちまちなきはじめます。かわいそうになって、クリスマスのろうそうを、ほしいだけあげると、小さなドラゴンは、なくのをやめて、しっぽをふってわらいます。

 十月二日の夕方、夕日にあかくそまった牧場で、寝る前の運動をしているおかあさんぶたやこぶた、小さいドラゴンを見守っていたとき、、小さいドラゴンが、私のまえにやってきて、つめたいはなさきを、わたしのほっぺにすりつけました、目はなみだでいっぱいでした。別れの涙でした。

 ドラゴンは、たかくたかくまいあがり、夕日に向かってとんでいきます。

 赤い目をしたとてもチャーミングな小さなドラゴン。別れの日の真っ赤な太陽のあざやかさが印象的です。

 いつまでも人間のそばにいることができなかったドラゴン。別れは必然ですが、私と弟とすごした日々をわすれることはなさそうです。

 2005年に荒井良二さんが、2002年に、スウェーデン政府がリンドグレーンを記念して創設した「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を受賞しています。

 この4月にニュージーランドの11歳の女の子が「竜が見つかったら てなずけられるよう超能力もさずけて」と首相あて、思いを伝えたというニュースがありました。ほほえましい。
 首相も子どもの気持ちを尊重して直筆の返事をしたといいますから、流石です。


ふしぎな紙切り老人・・チベット

2019年05月08日 | 昔話(アジア)

        チベットのものいう鳥/田海燕・編 君島久子・訳/岩波書店/1977年


 あるところに「人を泣き笑いさせる技を備えた」紙切りの老人がいました。

 紙で虫や魚を作り、ぷーっと息を吹きかけると、たちまち生きた虫や魚になってぴちぴちとおどりだす。ひとしきり遊んだころ、手をたたくと、もとの紙の虫魚にもどってしまいます。
 雪の降りしきる夜に、飢えこごえていると人がいると、紙で真っ赤な太陽を切り抜き、岩壁にはりつけひとふきすると、紙の太陽は光を出し、明るく輝く太陽となって、人々をぽかぽか照らします。
 それから桃の木や李の木の型をきりとってひとふきすると、花が咲き、桃や李がたわわに実を結び、人はそれをほおばりながら、喜びに顔をほころばせます。

 うわさをきいた王さまは、老人をよび、「わしは、おまえがふしぎな技を持つとは信じない、人を泣き笑いする力を持つとも思わないから、ひとつためしてやろう。おまえはわしに頭をさげさせてみるがいい。もしできなければ、首を切り捨てる」。

 紙切り老人は、「頭を下げさせることはさしてむずかしいことではありませんが、もし本当に頭を下げさせたら、「国王をあなどる罪」をわたしにおきせになる」と、ことわりますが、王さまは、家来がいならぶ手前、けっして罰はくわえぬと宣言します。

 そこで、紙切り老人はこころみることに。

 何の音沙汰もなく、王も家来たちも自然にわすれてしまったころ、王さまの国を牛馬を率いた大群が堂々ととおりすぎていきます。王さまが一人の武将に様子をみにいかせると、そこには黄金の甲冑をつけ、刀剣をもった武士がいました。
 この武士たちは地下王国のもので、地下王国で苦心惨憺してそだてた桃の実を食べれば不老長生がかなうという蟠桃の木が天空にまでのびて、天帝が自分のものにしてしまうので、天宮に談判しに行くところでした。

 地下王国の国王には王子がおり、王さまは長女と婚姻を結びたいと考えます。なんとか二人は結婚しましたが、三日目に、空模様が急にかわり、雷鳴がなると、天空から人間の手や足などがばらばらと落下してきます。

 天空に談判しにいった地下国王の首も落ちてきます。王はこの悲しい出来事を娘には知らすまいと胸におさめ、地下国王の首を火の中になげこませます。首がじゅうじゅうと音をたてて焼けている最中、さわぎを聞いてかけつけた王子は、一目でそれが父親の首と知り、火の中にとびこんでしまいます。

 ところが、そのあとふしぎなことが起こります。地下国王が天空から無事に降りてきたのです。天帝と毎年半分づつ蟠桃をわけることに協議がととのったのでした。

 王子が亡くなったことを知った地下国王は激怒します。王さまは地位を失うことを恐れ、ひたいを床にうちちつけて詫びを入れ、地下国王の許しをこいます。

 突然の笑い声で頭をあげると、それは紙切り老人でした。約束通り王さまに頭をさげさせたのです。

 罰をくええないといったにもかかわらず、王さまは武将に合図し、紙切り老人を殺そうとします。その瞬間老人は、腰から綱を取り出し天空に向かって投げ上げます。そして綱をするするとよじのぼり、」あっというまに雲間にきえてしまいます。
 武将たちも、すぐに綱をのぼりはじめますが、あまりにものろすぎると王さまがののしると、綱はプッーンと音を立てて切れ、王さまは落ちてきた武将の下敷きになって死んでしまいます。

 「蜘蛛の糸」とおわりはおなじですが、綱が切れてしまうまで、次から次へと、ストーリーが展開していきます。紙が生き物になったり、地下国王がでてきたり、不老長生の蟠桃がでてきたりと息もつかせぬ展開です。


一枚うわて

2019年05月07日 | オー・ヘンリー

       人生は回転木馬/オー・ヘンリー ショトストーリーセレクション 千葉茂樹・訳/理論社/2007年


 オ・ヘンリー(1862~1910)の時代も今も、強盗、詐欺師の類はなくなることもない。

 ハナミズキの苗を、スモモ、サクランボ、桃といつわって一仕事した詐欺師のジェフが、うっかりその町に着いて、住民におわれて逃げた先でであったのが、強盗のビル。

 ビルも、目をつけた家の娘となかよくなり、家にいれてくれたらこんどは合鍵を作って強盗に入ろうとしたが、ほかの女の子と路面電車にのっているところを見られて、鍵をあけてくれるはずだったのに、へそを曲げた娘に大声をあげられ、散々苦労してにげかえっていました。

 このふたりがあったのが、リックス。シカゴにある豪壮な家具つき事務所を舞台に、フロリダ州の湖の底の土地を住宅地といつわって、資本家から散々ぼったくった男。この詐欺がばれて、くつ下とイギリス製のマリファナタバコ一ダースだけをもって、西部へ逃げざるをえなかった男でした。

 ある日、銀行から五千ドルをいただいてきたビルは、リックスには百ドルを気前よく、分け与えます。 そして詐欺をするにも元手が必要だろうとジェフにも分け与えようとします。しかしジェフは、汗水たらしてかせいだ金をまきあげるようなことはしない、有りあまった金をつかいたがってるまぬけどもからしかかせがない、強盗を尊敬できないと、ことわります。

 ビルは銀行強盗でえた金で、とばく場をひらくことに。ジェフは師匠のモンタギューから、金を借りて、町でたった一軒のトランプを売っている店に行って、全部買い占めます。そしてとばく場が開くのを待って、トランプを全部、その店に返します。ジェフはすべてのカードに印をつけておきました。

 ビルがトランプを買った店は、ジェフが印をつけてかえしたカード。勝負の結果はあきらかで、とばく場は閉店になります。

 ジェフは、とばく場で得た五千ドルを、年内にはまちがいなく五倍にあがると見込まれる金鉱山の株券に投資します。ところが、その株券はリックの会社のものでした。

 いずれもひとくせのありそうな面々。詐欺師のジェフのやり口も、インチキな薬を売りこんだりといろいろでてきます。

 今も高利がうたい文句の詐欺商法がはびこっています。儲け話にのりたくなりますが、考えるとそんなにうまい話があるはずがありません。しかし、儲けたいという心理がある間は、詐欺は、なくなることはなさそうです。


金のくさりをつけた王子さま

2019年05月06日 | 昔話(ヨーロッパ)

       黒いお姫さま ドイツの昔話/ヴィルヒルム・ブッシュ・採話 上田真而子・訳/福音館文庫/2015年)


 金のくさりを体に巻きつけて、旅に出た王子が、ある町をとおりかかると鐘がなっていました。
 王子が、町の人にたずねると、ある貧しい男が借金を残して死んだのだが、代わりにそれを支払ってくれるものがあらわれなと埋葬してはならないというのです。
 王子が借金を払ってやったので、男はやっとお墓にうめられます。

 旅をつづけた王子は、盗賊にであいます。盗賊のほら穴には、盗賊たちがさらってきたひとりのお姫さまもいました。三日間つづけて盗みに出て、一番手柄のあったものが、姫を妻にしようと盗賊の頭がいいます。
 三日間、王子は、体につけている金のくさりをもってかえります。

 めでたく姫を妻にもらった王子でしたが、お姫さまは「泥棒と結婚して暮らさなければならないなんて、なんて、ふしあわせののでしょう」とさまざめと泣きました。

 王子は身分をあかし、盗賊たちが酒盛りをしてぐでんぐでんに酔っぱらっているうちに、四頭立ての馬車にのって一目散に逃げだします。

 海辺の町まできましたが、お姫さまの国へかえるのは、海をわたらなくてはなりません、王子は船長にたのみ、二人は船にのります。

 ところが、船長はお姫さまの国の者で、王さまは、姫を盗賊から救い出したものに姫を妻とし、王にするというおふれをだしていたのです。

 そこで船長は水夫たちに命令して、海に投げ込もうとします。けれども王子が命を助けてくれるよう懸命に頼んだので、水夫たちは古い小舟に王子をのせて海にながします。飢え死か溺れて死ぬだろうと思ったのです。

 やがて船長はお姫さまを救い出した男として、結婚することになりました。もちろんお姫さまを脅して、真相は絶対に言わないように念をおしていました。

 一方、王子の小舟は陸に打ち上げられますが、どこにも明かりは見えず、人もすんでいそうにありません、ところが小舟の中に、なにやら白いものが動いています。それは王子が十ターラーを払ってやったので埋葬された、あの貧しい男の幽霊でした。

 幽霊は、その日のうちに王子を都につれていきます。

 王子が宿屋で笛をふいていると、笛の音はお姫さまの耳にとどきます。お姫さまは、王子がきているのに気がつきますが、真相をいわないように船長に誓いをたてていたので、王さまにもいうことができません。王さまは「いってはならないのなら、書けばよいであろう!」と、真実を知ることができます。

 このあと、もう一波乱あるのですが。おわりはハッピーエンドです。

 この話に限らず、冒頭部で死者を弔う場面がでてくるものが多くありますが、どれも報恩に結びついています。