どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

もみのき そのみを かざりなさい

2023年03月16日 | 五味太郎

    もみのき そのみを かざりなさい/五味太郎/KEC中央出版/2020年

 

 季節はずれですが、クリスマス・イブをむかえる準備でしょうか。

 白い地に四角な窓枠のような構図。シンプルな絵が続きます。最初のページの枠は青一色、最後のページの枠は緑一色。

 夜空にはポチンと星、船が飛んで、サメが泳いで、花が一凛、・・・・

 「みち こころみなさい」

 「きつね うらみなさい」

 「いえ たびにでなさい」

 「にわとり かえりみなさい」

 「うし まなびなさい」

 ・・・・・

 命令口調。だれが、だれに 命令しているか?。

 「ピアノ みみをすませなさい」というのは、ピアノにいっているようでもあり、ピアノに「耳をすませなせなさい」といっているようでもあり。

 ただ、最後のほうは 

 「もみのき そのみを かざりなさい」

 「ろうそく ゆれなさい」

 「くつした まちなさい」

 「こども いのりなさい」

 「あした ほがらかに めざめなさい」

  と、クリスマス・イブの雰囲気。

 短い含蓄のある言葉。

 クリスマスは、家族で過ごし、その中でプレゼントをもらったりというイメージがありますが、本来は、祈りの日であるのでしょう。


ぼくのともだちは、あたまに はながさいている

2023年03月15日 | 絵本(外国)

    ぼくのともだちは、あたまに はながさいている/ジャーヴィス・作 まきもり れい・訳/岩崎書店/2023年

 

 楕円形のテーブルで、お絵かきしているなかには、皮膚の色が異なる子、車いすの子がいます。頭にきれいな花が咲いているのはデイヴィッド。

 みんなデイビッドのことが大好き。みずたまりにはいって ばしゃばしゃしたり、なんでも歌にして歌ったり いつもいっしょに遊びます。

 ところがある日から、デイビッドは、あそぼうといっても遊ばなくなり、おしゃべりもしなくなりました。幼稚園には、ぼうしをかぶってきて、先生が、コートをぬいで、ぼうしやマフラーをとりましょうといわれ、デイビットがぼうしをぬぐと、はなびらが ひらひらおちました。頭は、ぽきっとおれそうな こえだみたい。

 みんなは、とんがった えだで、けがをするかもしれないからと、デイヴィットに ちかづこうとしませんでした。

 それで、ぼくは・・・。


 紙に花をえがき、それをきりぬいて、デイヴィットの頭に、色をもどしてあげました。ずっとずっと 新しい花をつくっていると、みんなも てつだいたいっていいだし・・

 そしてある日、デイヴィットの頭に、花をもどしていると、本当の花が あたらしく咲いて、つぎからつぎへと花が ひらきはじめ うるさい はちたちも もどってきました。

 

 ともだちを思う”ぼく”の優しさがあふれ、ほっとします。


げんないとカッパ・・山形

2023年03月14日 | 昔話(北海道・東北)

         山形のむかし話/山形とんと昔の会・山形県国語教育研究会共編/日本標準/1978年

 

 最上川のほとりにすんでいたげんないは。背がでっかく、頑丈で力こぶも石みたいにもりあがっていたど。

 夜、せんべい布団にくるまって、壁の隙間からちらちらと光る星を眺めていたら、川のほうでコトラコトラと音がしたど。そっとおきて戸を少し開けてのぞくと、黒い影。よくみるとカッパ。げんないはしらんぷりしてねていたど。

 つぎの晩も、つぎの晩も、カッパがあがってきて、すぐそばまでくるようになり、雨降りの真っ暗な晩、カッパはびしょびしょにぬれた手で、げんないのしりごを、ひょえらっとおさえた。「つめでえ」と、げんないがおきあがると、カッパは、たたったあとは知って、チャポランと川の中にしずんでいった。

 「カッパのやつ、おらのしりごをねらっていやがる」と、のんきなげんないも、腕を組んで考えたど。

 つぎの晩、げんないは、しりごをわざとふとんからつんだしてねていたど。ねむったふりをしていると、カッパが、またこっそりもぐりこんできて、げんないのしりごめがけて、がぶらっとかぶりついたど。

 ガリッ ガリガリ ガリガリ

 なんとかたいこと固いこと。カッパの歯が、ぽろりぽろりと折れてしまったど。げんないは、寝る前に、大きな鉄瓶の蓋を、しりごにはめ込んでおいたもんで、かたいはず。カッパは 泣き泣き川へ沈んで、二度と上がってこなかったど。

 

 この話で楽しいのは、結末の部分。

 なに、カッパはどんな声でないたかって。さて、なんとないたもんだべな。キャッ キャッてなくのは、サルだし、カオカオッってなくのはカラスだし、やっぱりげんないにきいてみないとわからないな。


ライオンとタカとアリになった男の子 ノルウェーのむかしばなし

2023年03月13日 | 絵本(昔話・外国)

   ライオンとタカとアリになった男の子/菱木晃子・文 MARUU・絵/BL出版/2019年

 

 ある男の子が、お父さんが息をひきとるときに残してくれた、古びた剣と、すりきれたぬのきれ、わずかなパンくずをもって旅にでました。

 ライオンとタカと小さなアリの争いを解決した男の子は、ライオン、タカ、アリに変身する力を得て、タカになって、空へ舞い上がり、大きな湖をわたっていきました。

 やがて、お姫さまから、ふたりの姉のつぎに、トロルのもとに連れていかれることになることを聞いた男の子は、トロルの使いの竜を退治にでかけます。

 男の子は、九つの頭を持つ竜を退治しますが、お姫さまが、九つ頭のトロルにさらわれてしまいます。

 トロルがいる湖の真ん中の岩山にのりこむと、お姫さまの姉が、三つ頭のトロルのシラミをとっていました。もうひとりの姉は、六つ頭のトロルのシラミを、さらわれたお姫さまは九つ頭のシラミをとっていました。

 トロルの弱点を聞き出した男の子は、お姫さまと二人の姉をすくいだし、王さまのもとへ帰りつきました。

 

 トロルといえば、すぐに「三匹のヤギのガラガラドン」が浮かびますが、 MARUUさんが描くトロルは、これまでのイメージをまったくかえる斬新なものでした。

 タカになって自由自在にとびまわり、ライオンになって竜に立ち向かい、アリになって鍵穴を自由に通り抜けると、昔話の王道です。

 

 「このおはなしをきいたあたなにも、きっといいことがありますよ!」の結びもしゃれています。


ふ・ふ・ふ

2023年03月12日 | 絵本(日本)

    ふ・ふ・ふ/作・梅田さとえ 絵・多田ヒロシ/あかつき/2017年

 

 「ふ」からはじまる「ことば」が繰り返されます。

 ふくろうの「ふ」。ふうせんの「ふ」

 魔女が 火を「ふ」くと ふわーっ ふきこぼれ よろけた魔女がねこを「ふんずけちゃって」

 ねこが にわとりを ふんづけ

 にわとりが かえるを ふんづけ その かえるが お花を ふんづけ

 ・・・

 ・・・

 

 あたりまえの 言葉がなかったら?

 考えたこともない世界。

 意思疎通ができず、学ぶことも 本を読む楽しみも、歌もなく、詩もうまれず 歴史もなくなる!!

 ”ふ”だけでなく 五十音すべてで 考えられそう。 


こんにちわ いぬ

2023年03月11日 | 絵本(日本)

    こんにちわ いぬ/きたやま ようこ・作/あかね書房/199年

 

 犬のじんべいが、「おれ さんぽにいく。ゆうた ついてこい。」といったかどうか?。
 ”ゆうた”が、じんべいと散歩に行くと、おなじように犬を連れて散歩している人から声をかけられました。

 「かしこそうなだね。よく いうこときくだろう」

 「おさんぽさせるの たいへんね」

 「たくさん たべるでしょう。なに たべさせてるの」

 「いい いぬだね。うちのも なかなかだけど」

 ・・・

 ・・・

 「おお こわい。あっちにいこうね」

 いろいろ声をかけられ、ゆうたくんは、うれしかったり、戸惑ったり、がっかりしたり。

 そんなゆうたに、じんべいが 一言。

 「ゆうた ひとのいうこと なんか きにするな。おれは おれだ。」

 

 犬好きの人には、犬の種類がよくわかっているようで、シベリアンハスキーといいます。巻末に犬を連れた作者の写真も。

 じんべいもゆうたくんも、目のかすかな動きで感情が表現されています。

 人間関係では何気ない一言が、相手を傷つけることもありますね。やはり相手を思いやる心が必要です。なげかけられた側も、「おれは おれだ」と思えば、気にならなくなります。


ぐん太

2023年03月10日 | 絵本(日本)

    ぐん太/夢枕 獏・文 飯野 和好・絵/小学館/2021年

 

 「荒れ地で、草も木も なんも生えねえ 花もさかねえ けものもいねえ。」のは、石の下に こええもんが すんどるからと いわれていた夜泣き石。

 父っさまも、そのまた父っさまも もちあげようとして、石の下敷きに。誰一人持ち上げられなかった夜泣き石。

 「ああ もちあげてえなあ あの石を 千年 万年 一億年も うごかねえ あの石をよ」 ぐん太は石を持ち上げようと決意します。

 毎日 毎日 稽古して 村一番の力持ちになって、天をささえている巨人にも、山を 三つも四つも ひっぱる男にも 負けなかった ぐん太。それでも 石は 持ち上がらなった。

 あるとき 死んだ父っさまが夢にでて いいます。

 「なあ ぐん太よ あの石は 力だけじゃあ もちあがらねえ
  泣いたことのねえやつにゃ もちあがらねえ
  ときには負けたりもしてよ ほろほろ涙も ながしてよ
  そのくやしさや 
どうにもならねえ 心の心を かかえてよ
  人を好きになる力で もちあげるんじゃ 
人を許す力で もちあげるんじゃ」

 

 それから 何年もたって じっさまも おっかさんも 死んでしまってよ 妻も 子どもも 死んでしまってよ かみも 白うなったな

 それでも ぐん太は 生きていて

 なみだが こぼれて こぼれて どうしようもなかったとき

 ぐん太は はじめて 石を持ち上げられるような 気がして

 おおおおりゃあああ

 どおおりゃあああ

 ど どうだあああ

 あがった

 あがったあ!

 もちあがったあ!!

 恐竜 とかげ 鳥のむれ

 かぞえきれない 生きものや

 木だの 草だの 花だの 虫だのや

・・・

・・・

 すべてのものが 石の下から ふきでて 天まで届き 壮大な 世界の誕生です。

 

 石は、なんで 泣いていたのか?

 すべてを解放するためには、力ではないというのが ストレートに つたわってきました。


ちいさいおなべ

2023年03月09日 | 紙芝居

    ちいさいおなべ/脚本・絵  村田エミコ/童心社/2015年(8画面)

 

 はるちゃんのおうちの台所には、大きなお鍋、中ぐらいのお鍋、それから小さい小さいお鍋が並んでいます。

 一番大きなお鍋さんは、カレーやシチュー、スパゲッティーづくりに大活躍。

 味噌汁お鍋さんは、毎日使われ、おやすみする日はありません。

 それに比べて、ちいさなお鍋さんは、いつも台所の隅っこで、ひとりぼっち。

 ある日、おかあさんとはるちゃんが、小さなお鍋をみつけ、あかちゃん用の おかゆを つくりました。小さなお鍋は、小さいお口で、ぱくぱく ぱく 食べる 赤ちゃんを見て、うれしさ いっぱい。

 

 自分の居場所がないと思っていた小さなお鍋が、赤ちゃんのために活躍するのは しばらく 続きそうです。

 見やすくて、鍋の表情も おすまししたり、びっくりしたり、汗を流したりと 楽しい紙芝居です。


巨大な木の樽

2023年03月09日 | 日記
 時々通る道に、巨大な木の樽を発見。今あまり作る人がいないという木樽。樽があった家は、建て替えられているようですが、この樽は、そのまま残されたようです。三人がかりほどある直径。何に使われていたのでしょうか。屋根があるので屋外に設置されていたのでしょうか?

もっかい!

2023年03月08日 | 絵本(外国)

   もっかい!/エミリー・グラヴェット・作 福本友美子・訳/フレーベル/館2012年

 

 おやすみ前に、ドラゴンの子が、大好きな絵本をママに 読んでもらいました。

 おわると、もっかい!の催促。

 ママが、「もう おはなしは おしまいです。」「つぎの日、もっかい よんであげるから」というと

 もっかい!

 もっかい!

 「おやすみ」と おわらせ、ママが寝てしまうと

 もっかい!

 もっかい!

 もっかい!

 ママがおきないので、

 もっかい!

 と、火を噴くと、絵本に 本当の穴が開いてしまいます。

 

 ママも疲れているから同情しますが、これだけ 「もっかい!」といわれると、読みがいがあります?。ママが読む絵本の内容が、だんだん変わっていくのですが、これがいけなかったのかな それともママの気持ち?

 ママが読む絵本は、いままでいちども ねむったことのない 赤いドラゴンのセドリックが主人公。セドリックは 「おひめさまをつかまえて、パイにして むしゃむしゃ」から「おひめさまとは なかなおり。」。

 ドラゴンの子が、もっかい! と繰り返すごとに 赤みがまし。真っ赤になって 火を噴いています。そしてトロルも登場です。


ルンペルシュテイルツヘン

2023年03月07日 | グリム(絵本)

   ルンペルシュティルツヘン/絵・ボールガルトン 訳・乾佑美子/童話館/1994年

 だいぶ前に、覚えてみようと思った話ですが、「ルンペルシュティルツヘン」のほか、でてくる名前が、舌を噛むようであきらめてしまった話です。

 

 むかし、貧乏な粉屋が、「わたしにはむすめがひとりおりますが、このむすめは、わらをつむいで金にいたしますんで」と、自分を偉くみせようと、つい王さまに いいました。「たいしたわざだな」「わしがためしてやろう」と、王さまはむすめを城につれてくるようにいいます。

 王さまは、むすめが城にくると、わらでいっぱいになった部屋へむすめをつれていき、糸車と糸巻きをわたして、あすの朝まで、わらを紡いで、金にするよういいます。

 わらを金にする どうして?

 これは誰にも できそうにありません。しかし、昔話では、できないことはありません。こびとがやってきて、首飾りとひきかえに、わらを 金の糸にしてしまいます。

 すると、もっと金が欲しくなった王さまは、前より大きな部屋のわらを金に紡ぐように命じます。今度も、こびとが、むすめの指輪と引き換えに金に紡ぎます。三回目には、「おきさきになってから、一番はじめにうむ子どもを おれにくれるか?」と聞かれ、約束してしまいます。

 やがてお妃になったむすめに、あかちゃんがうまれると、あの こびとがやってきて、子どもを連れて行こうとします。こびととの約束を、すっかりわすれていたお妃が、あまりにもひどく泣くので、こびとは、「三日間だけ、時間をやろう。そのあいだに、おれの名前をあてられたら、子どもはわたさなくていい」と、いいました。

 一日目、二日目がすぎ、三日目に 使いの者がかえってきて・・・。

 

 名前をあてられたこびとは、よほど悔しかったのでしょう。われとわが身を、まっぷたつに ひきさいてしまいます。

 

 ポール・ガルトンが描く人物は、高学年向きでしょうか。娘は、好みがわかれるところ。こびとは、おばあさん風でもあり、小鬼風にも見えます。

 「名前をあてる」という話はほかにもありますが、この「ルンペルシュティルツヘン」が「がたがたの竹馬こぞう」と訳されることもあるというのは、今回知ることができました。


赤いこん箱・・山形

2023年03月06日 | 昔話(北海道・東北)

   山形のむかし話/山形とんと昔の会・山形県国語教育研究会共編/日本標準/1978年

 

 おばあさんが、川で 食器を洗っていると、川上から流れてきたのは赤いこん箱と白いこん箱。「赤いこん箱、こっちゃこい。白いこん箱、あっちゃいけ」というと、流れてきたのは赤いこん箱。白いこん箱は「あーん、あーん」と泣きながら流れてしまった。

 赤いこん箱には、めんこい子犬。大事にそだて、ある日、山へいき、「ここをほれ、カンコーカェン、あそこもほれ、カンコーカェン」というので宝物がでてきた。

と、ここまで「花咲かじい」と、おなじ進行。

 灰をまいて、花が咲くのではなく、灰を畑にまきます。すると畑一面にヒョウ(スベリヒユ)がでました。ふたりでヒョウを食べると、じいさんの腹がはってきて、ちょっと腹に力を入れると、屁が出て「綾ちゅうちゅう 錦さらさら ごよの股のあわいから ツツラプンバンピー」と聞こえます。

 山形一のだんな衆の家で披露すると、だんなは大変喜んで、宝物をくれます。

 となりのじいが、おなじまねをすると、「綾ちゅうちゅう 錦さらさら ごよの股のあわいから」のつぎは、「ビリビリッ」と、なんともきたない音がして、そこら一面よごしてしまったので、鼻をつまんだ若い衆から表に投げられ ひどく腰をうって寝込んでしまう。 (どんぴんさんすけ サルまなぐ)

 

 ”屁”の話は、昔話には欠かせませんが 外国ではどうでしょうか。

 「スベリフユ」は、地方によって、トンボグサ、チギリクサともよばれ、CAM型光合成をするといいます。雑草というイメージですが、世界では貴重な植物といいます。CAM型光合成おそるべしです。


まのいい りょうし

2023年03月05日 | 絵本(昔話・日本)

    まのいい りょうし/小沢正・文 飯野和好・画/教育画劇/1996年

 

 同じタイトルの瀬田貞二、赤羽末吉版の絵本がありますが、最後に、ほんとに ほんとに まが いい展開。飯野さんの絵も武骨な感じの猟師で圧倒されます。

 猟師なのに、鉄砲を撃っても、いちども 獲物にあたったことがない どんべえさん。なぜかこの日は、大当たり。

 鉄砲の玉が とんでもない方向にとんだと思ったら、あっちこっちへ はねかえったあげく、いのししのおしりにこつん。おこったいのししに追われ、木の上にのぼると、いのししは、木の根っこに頭をぶつけ、どたん。

 木のそばにふじつるをみつけ、いのししを しばろうと ひっぱると クリの実が ぱらっ ぱらっら。袋に入らないほど クリの実を袋に入れて、川の丸木橋をわたりはじめて、川の中へ ぽちゃ-ん。

 川の中で、木の根っこのようなものに さわると、それは、ウサギの足。さらに、地面から なにかが とびだしているのに気がつき、ひっぱってみると 大きな 山芋が ずるっ ずるっ。おなかのあたりが もぞもぞ しているので、ふところをみると 大きな鯉。

 「なあんて なあんて まが いいんだろう」と、帰る途中、長者どんから、うるさいカラスを うちおとしてもらいたいと、いわれ 鉄砲に 水が入って つかいものに ならないからと、ことわると、弓で うちおとせという。

 大きな弓の つるを ひきしぼり、「ええーいっ」と、はなつと、弓はとんでない方向へ。ところが ところが この矢が 宝物を盗んで 逃げ出そうとした 泥棒の 風呂敷をつらぬいて、そのまま 泥棒もろとも 蔵の壁に宙ずり。

 名人と見込まれた どんべえさんは、長者のむすめと いっしょになり、長者のあとを つぎます。

 

 「まが いい」と表現は いまの子は ? となりそうですが、何回も繰り返されるので、そんなに気にならないかもしれません。


ぼくは びっくりマーク

2023年03月04日 | 絵本(外国)

    ぼくは びっくりマーク/作・エイミー・クラウス・ローゼンタール 絵・トム・リヒテンヘルド 訳・大友剛/ひさかたチャイルド/2023年

 

 ぼくって、みんなと いっしょに いると ひとりだけ めだっちゃう。ならんでいても、はしっこに立っていても。みんなとおなじようになるように がんばってみても、やっぱりおなじ。なやんで、くるしんで、しょんぼり。

 にげだしたぼくは、かわったこに こえをかけられた。

 「なんさい?、すきな いろは? たんじょうびは いつ? おなかすいた? えをかくのすき? いぬとねこのどっちがすき? たいようって しっている ? ・・・・」。この子から 質問の連射。おもわず

 ちょっと まって!

 かわった子に もういっかいやってくれる? といわれ 「やあ! こんにちわ! わーい! ヤッホー! これはいいぞ! ・・・」。

 ぼくは うまれて はじめて じゆうを しった。

 すぐ みんなに あいにいき 「ねえ みんな、みて みて! これが ぼく なんだ!」

 「きみらしいね」といわれ・・・。


 なやんでいたのは、びっくりマーク”!”。質問したのは はてなマーク”?”。

 

 罫線のある便箋かノートを思わせる地に、絵文字のような顔が、しょんぼりしたり、おどろいたり、わらったり と、すごくシンプルな絵。

 「自分さがし」と おおげさに構えなくても 楽しめます。

 ”!””?”って、普段何気なく使っていますが、これだけで含蓄のある表現ができることに”!”です。


カメラにうつらなかった真実 3人の写真家が見た日系人収容所

2023年03月03日 | 画集・写真集

   カメラにうつらなかった真実 3人の写真家が見た日系人収容所/エリザベス・パードリッチ・文 ローレン・タマキ・絵 松波佐知子・訳/徳間書店/2022年

 

 1941年12月、日本軍が真珠湾を攻撃した三か月後の1942年2月9日、「大統領令9066号」が発令され、西海岸に住む12万人以上の日系人が、「集合センター」に移送されることになりました。「移送」されるということは収容されること。収容所から西海岸へ戻ることを許されたのは1945年。

 この間の収容所のようすを、3人の写真家が残した写真とイラストでたどります。

 大統領令がだされた当初から、収容所へ収容されるようすから、そこでの生活。写真家の一人ドロシア・ラングは、強制収容所が人道的に正しいことを証明する写真を残すために撮影を依頼されましたが、撮影を引き受けることで、いかに不正で非人道的な政策を実行しているかを写真で記録しようとしていました。

 もうひとりの写真家アンセル・アダムスは、収容所を許容する立場から、暮らしが過酷だとわかるものは写しませんでした。また、忠誠心を示した二世だけを撮ろとしました。

 ロスアンゼルスで写真店を営んでいた宮武東洋は、一家でマンザナー収容所に送られました。「ここで起きていることを、すべて記録しなければ。こんなことは、二度とあってはならないからだ」と、危険を犯して、写真機を持ち込み、用心深く行動し、写真を撮りはじめます。

 

 餅つきや子どもたちの遊ぶ様子、孫を肩車するおじいさん、結婚式などの写真家からは 収容所での過酷な暮らしはつたわってきません。映らないところに、有刺鉄線がはられ、兵士が見張っています。映っているのは、ごく一部。映らないこともあります。

 「強制収容所に向かうバスを待つモチダ一家」という説明の写真には、家族九人が映っていますが、これから待ち受けているであろう生活への思いは、うかがい知ることはできません。

 一方、「砂嵐のなかのマンザナー収容所」の平屋がならぶ荒涼とした風景には、生活の匂いはまったく感じることができません。

 明確な理由もなく、相当のバッシングがあったであろうアメリカ国内の空気感がつたわってこないのは、写真家に焦点をあてたからでしょうか。

 ただ、いったん、戦争がおこれば、なにがあっても不思議はないということを思い知らされました。