蚊取り線香を傍らに。

2017-05-29 22:01:51 | 月見台の家


だんだんと夏めいてきて、窓を開け放しておくのが気持ちよい季節になりました。
窓辺のテーブルや、デッキに出て、冷たい麦茶(麦酒?)なんか飲みながら無為に時間を過ごすのは、なんとも言えず気分がゆったりとします。
カフェやお店ではなく、自分の家ならではの「ゆったり感」があるように思います。

写真の「月見台の家」」もそんなことをイメージしながらデザインした住宅です。
窓枠は木でできていて、そのレトロ感に愛着が沸きます。

デッキに出るときは蚊取り線香を傍らに置いて。
そんなひとつひとつのものに、愛着の沸くものを選ぶ。
そんなひとつひとつのことが、「ゆっくり暮らす」ことを楽しくしてくれますね。
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月見台の家.6 ~一年点検~

2012-05-15 16:46:05 | 月見台の家

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「月見台の家」ができあがってから1年が経ち、定期点検にお伺いしました。この住宅には、敷地の南北にふたつの庭が計画されていて、それらに包まれるようにしてリビングがあります。ですので、この一年の間に植えられた草木の雰囲気がどのようになっているかも、とても楽しみでした。

伺ってまず感じたのが、お施主さんがとてもこの家を大切にしてくださっているということ。ご自身で庭も手入れされています。手間がかかることではありますが、そんな風に暮らしていただいて、設計者としては頭の下がる思いです。

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点検では、お施主さんご夫妻と、施工担当の栄港建設の監督さんと一緒に家の内外を廻りながら、不具合等がないかをチェックしていきました。大工さんや建具屋さんをはじめ、各職人さんが丁寧な仕事をしてくださったおかげで、とても良い状態に保たれていました。時間が経って、その差がでてくるんですね。一通りチェックをし、庭の木戸の建て付けなど幾つかの部分について少し手を入れることにしました。

この家には、とりたてて目新しいデザインはありません。むしろ、極力そういう「個性」を削ぎ落しました。一方で、ものごとの間合いや、風景を切り取る窓のプロポーション、素材感や質感といったものを吟味しました。以前にこのブログで、「カタチ」ではなく「場所」をデザインしたかった、という話を書きました。丁寧につくられた木の窓枠や床は、少しずつ色味を深めています。窓からは庭の緑が鮮やかに見え、深い軒に守られた室内は、安らぎのある陰影に満たされています。椅子にすわって談笑しながら、今、この場所で時間を過ごしていることの居心地の良さを感じることができました。きっとそれが、この家の個性なのだろうと思います。

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南庭のパーゴラには、モッコウバラがだいぶ絡んできて、白いかわいい花がいくつか咲いていました。来年には、もっと多くの花が一斉に咲くことでしょう。華やかなんだろうなあ。楽しみです。

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月見台の家.5 ~ホームページに写真をアップしました。~

2011-10-07 13:05:45 | 月見台の家

春に竣工した「月見台の家」の写真を、オノ・デザインのホームページにアップしました。

http://www.ono-design.jp/tsukimidai.html

庭に草木が植わった後に、自分で撮った写真です。ですので、いわゆる建築写真とは撮り方がまるで違うのですが、その場の雰囲気がなるべく表れるように、という気持ちをこめて撮ってみました(笑)

撮影にお伺いしたのは暑い日でしたが、抜けていく風がとても気持ち良かったのが印象的でした。写真には風の心地よさが映らないのが残念ですが・・・。

さて、ホームページには載せていない写真から一枚。

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障子の前に置かれた、白磁の花瓶。ぱっと見ただけでは同じ白でも、素材の違いでその質感も異なります。抑制された自然光と陰影によるモノクロームの空間のなかで、異なる素材の表情が、落ち着きのなかにもキリリと引き締まった調和を生んでくれています。

白く塗られた障子の桟の、光沢の無いペンキの白。

障子紙の、ざらついた柔らかい白。

白磁の花瓶の、艶やかで品のある白。

ここは階段の途中にある出窓です。一日のなかで数回、上ったり下りたりするだけの場所ですが、そのときだけ感じられる、不思議な奥行きのある場所になりました。

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月見台の家.4 ~月見台の庭~

2011-08-22 14:41:50 | 月見台の家

春先に竣工した住宅「月見台の家」のお施主さんから、庭ができました・・・とのご連絡をいただき、先日お伺いしてきました。

すこし唐突な話になりますが、「家」というものについて考えるとき、床・壁・天井といったカタチあるものに最初に関心をいだくか、それとも、それらのカタチの間に挟まれた、いわば空気のようなカタチのない「場所」に関心をいただくかで、家の設計やデザインのあり方も変わってくると思います。

「月見台の家」は、まさにその後者の考え方でイメージした住宅でした。野生のリスが走り回る小高い丘の上の立地。そこから奥にぐっと引き込まれたような敷地。風が気持ちよく抜け、桜の木立が見える、ポケットのように奥まった静かな、場所。

「カタチ」ではなく、「場所」をつくりたいと思ったのです。床や壁や天井は、そんな「場所」を引き立たせる良き背景であってほしいと思いました。生活がはじまって置かれる家具や道具、植栽などは、「場所」のイメージをかたちづくる、ひとつひとつの「かけら」のようなもの。そんな「場所」の風景は、静けさと穏やかさに満ちた、そう、「ロマネスク」がもつ慎ましやかさにも似た雰囲気になるのではないかな、と思っていました。

思い描いていた「山の上のロマネスク」の家。どんな風になっているかなと、とても楽しみにしながら坂道をあがっていきました。

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たどり着くと路地状の通路に、背の高い雑木が覆うように植えられていました。樹木の奥に風景が見え隠れし、奥行きのある雰囲気がでてきていました。

庭にしつらえられたベンチコーナーの板壁に促されるように、さらに、さらに奥に。

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そうして玄関にはいると、高さの抑えられた窓から、北庭の気配が見えます。

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この住宅は、北と南の両方の庭に包まれるようにリビングが配されています。リビングへは、木でできた大扉を開けて入ります。リビングへ入ることが印象的なものになるように。

大扉を開けた視線の先は、リビングを抜けて、南庭へすうっと抜けていきます。

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南庭は雑木の庭。ソロの木が幽玄な幹肌を見せてくれます。リビングからデッキへ、デッキからベンチコーナーへ、床の高さと雰囲気を変えながらつながっていきます。ベンチコーナーの柱には、モッコウバラが絡んでいます。やがて蔓が延びていき、綺麗な花を咲かせてくれるのが楽しみです。設計の意図を汲んで植栽を施していただいた造園家、手入れを欠かさず丁寧に住んでいただいているお施主さんに、頭が下がる思いになります。

北庭は和風の庭。白砂利の敷かれた、落ち着いた庭の先には桜の木立が見えます。

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木でできた家具と床は、家にしっとりとした質感を与えてくれます。単調で大きな白い壁と天井は、ものごとの背景としての心地よい余白になってくれます。そんな単純で素朴な家の内と外には、歩き回るといろいろな風景と場所が連なっていて、常に新鮮な気持ちになります。ちいさな楽しみが、ギュッとつまったような家。緑が植わり、家具類も置かれ始めて、この家が持つべき空気感が見え始めているように思いました。

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月見台の家.3 ~新しい家~

2011-04-08 15:46:05 | 月見台の家

「月見台の家」の引き渡しをしました。オープンハウスの時にはまだ備わっていなかった障子が備わり、室内には静謐な雰囲気がもたらされました。板塀やベンチも完成し、あとは植栽を待つばかり。

家の外観の様子の写真は、雰囲気が備わってきたときにまでとっておいて、室内の写真のみ、少しばかりご紹介したいと思います。

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上の写真は、玄関ホールから、リビング、そして南庭を見通した場面。
玄関ホールとリビングを隔てる大きな扉は、米松の無垢板を貼ってつくりました。家の中心にあるリビングに入ることが、特別な印象になるように、この大きな扉を象徴的に扱いたかったのです。

南庭の植栽は、雑木による木漏れ日が気持ち良い場所になりそうです。
緑が育ってくると、白い壁には、ほんのりと緑色がかった樹影が映り込むことと思います。

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上の写真は、リビングの北側を見返した風景。障子の桟を白く塗り、「光窓」のようにしたいと思いました。ほの明るいやわらかな自然光が入ります。
その傍には、いずれソファを置いて。障子越しの北庭は、少し和風の庭になる予定。

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キッチンに立つと、南北ふたつの庭の気配が感じられることと思います。
開放的でありながらも、不思議な「囲まれ感」があって、落ち着く場所になりそう。

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キッチンをはじめ、この家の家具はすべて造り付け。ライフスタイルに合わせて設計して図面をひき、家具職につくってもらいました。
 シナ合板をベースに、タモ材を天板と手掛けにあしらって、着色しました。丁寧につくられたものは、見ていて愛着がわいてきます。

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この家の姿かたちは、どこをとってみても、とりたてて変わったことはありません。そのかわり、光や影の具合、物事の間合いなどを、ずっと吟味してきました。家のしつらえだけでなく、置かれる家具や道具までもが、美しく存在感をもって映えるようなものになることを求めてきました。そういった道筋の先に、住まいにとっての「奥行き」が滲み出てくるように思うのです。

茶室建築に興味をもち、いろいろ調べていたときに学んだことがありました。それは、千利休の造った茶室に、特殊なものは何ひとつ無かった、ということ。たとえば、踏み石は、ごろっとした石を歩きやすいように並べられていること。障子の形も、まったく奇をてらうことなく普通のかたちであること。以後に続く多くの茶人がデザインしたどの茶室よりも、ひとつひとつのパーツは「普通」であった、ということ。でも、利休が残した茶室は、それらのパーツの位置関係や間合いの吟味によって、動かし難い厳密な雰囲気と、緊張感が生み出されています。

たんなる普通のものごとによってつくられる、凄味。美しさ。居心地の良さ。そんなことに憧れを持ちました。そんな雰囲気に少しでも近づきたいという思いが、僕の胸の内にもすこしだけ、あったかもしれません。住まいにおいては、そんな雰囲気こそが、最高の居場所になるのではないかと思うのです。

いずれにしても、そのような雰囲気が少しでももたらされるためには、生活がはじまって、まだもうしばらく時間がかかるでしょう。それを楽しみにしたいと思いますし、時折、ブログでもそんな姿をご紹介していけたら、と思っています。


コメント (2)
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