オープンハウスのご案内

2011-03-20 12:48:57 | 月見台の家

横浜市で建てている「月見台の家」の、オープンハウスのご案内です。
日時/3月27日(日) AM 11:30 ~ PM 5:00
場所/相鉄線 天王町駅または保土ヶ谷駅より徒歩約10分(途中に少し急な坂道があります)

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この家は、夫婦ふたりのための小住宅としてつくったものです。
南北ふたつの庭と密接につながる空間は、奥行きと静けさをもたらしてくれます。
造り付け家具や窓枠は木でつくり、質感を大事にしました。

内覧をご希望の方は、お名前・ご住所・ご職業・ご連絡先を、EメールまたはFAXにてご連絡ください。当方より折り返し案内図をお送りいたします。

Eメール/ono@ono-design.jp
電話・FAX/03-3724-7400

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震災の只中にありながら、オープンハウスをすべきかどうかも考えましたが、多くの人が関わり、手間と時間をかけてきちんとつくったものを、ぜひご覧頂きたいと思うようになりました。流通の困難などにより、庭や外構も未完成なので、本来ご覧頂きたい姿にはまだなっていないのが心残りではあるのですが、いずれできあがっていく雰囲気をイメージしていただけますと幸いです。

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月見台の家.2 ~詩仙堂の記憶~

2011-01-10 23:17:26 | 月見台の家

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新年最初のブログは、京都にある詩仙堂というお寺の話から。

江戸時代につくられた、もともと住宅であった慎ましやかなこの庵は、東山に散在するいくつもの美しい寺院のなかのひとつです。ゆっくりと坂をのぼりながら境内に向かう道すじは、僕にとって深く心に残る光景でもあります。境内の門から建物へは、両側を竹林にすっぽり覆われた石段をのぼっていきます。石段をのぼりきると、さっと鮮やかな白砂の前庭が現れ、白い障子の引き残された玄関からは、奥にひろがる庭がすーっと見通せます。

奥に奥にはいっていくという感覚でありながら、同時に、明るく開かれた場所にはいっていくという感覚。詩仙堂には、そんな一見相反する感覚が満ちているように思います。現在、現場が進行している「月見台の家」の敷地に向かう道は、以前に書いたロマネスクの感覚と同時に、詩仙堂のことを思い出させてくれました。

「月見台の家」は、その敷地形状ゆえ、道からはほとんどその姿を隠しています。そこで、玄関までに長いアプローチをつくり、奥にはいっていく感覚が十分に感じられるようにしたいと思ったのです。小さなこの住宅には、南側と北側の両方に庭があって、ふたつの庭に包まれるようにしてリビングがあります。ちょうど詩仙堂が、雁行しながら趣向の異なるふたつの庭に面しているように。

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そういえば、詩仙堂の間取りがジグザグと雁行しているのは、室内から月の風情を楽しめるようにしたから、と聞いたことがあります。桂離宮にしてもそう。日本の雅な住宅は、月や自然を繊細に楽しめる工夫に満ち溢れていますね。「月見台の家」が、そんな日本的な美しさをもってくれたら・・・と願わずにはいられません。

桜の木立が見える、静かな北庭。

明るく、つる性の植物が絡まるパーゴラやベンチがしつらえられた南庭。

その間につくられた家は、詩仙堂のように天井が低く、庭と密接につながり、奥行きをもって空間がつづきます。庭に出入りする窓は、アルミではなく木でつくり質感を大事にしました。

日々の暮らしの場所が奥行きのあるものになるように。それはロマネスクの「奥行き」にもイメージが重なって。現場で、詳細な寸法や材料の確認をしながら、そんな住宅のもつ「奥行き」について考えることがあります。

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月見台の家.1 ~山の上のロマネスク~

2010-11-08 23:44:11 | 月見台の家

住宅設計の依頼を受け、初めて敷地に向かう時のことは、いつも心に残るものです。現在、建設がすすんでいる「月見台の家」の時もそうでした。事前に知らせていたいただいた住所を頼りに、電車の駅を降り、しばらく歩くと、小山にのぼっていく階段状の坂道が続いていました。

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曲がりながら奥に続いていく、坂道。その脇には、お寺の緑と、木々の合間から見える街並みの風景。少し息を切らせながら、階段に誘われるようにしてのぼり、たどりついた敷地は、細い路地の奥にぽっかりと空いた場所でした。南北に細長く、視線の先には、桜の木立が見えました。音もない、静かな場所。今たどってきた道を胸のうちで反芻しながら、僕は、一冊の本のことを思い出していました。

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それは、田沼武能さんの写真集「カタルニア・ロマネスク」。昨年の正月にもブログでも書いたものです。ピレネーの山襞の村々。山道の先に点在する、古く小さな礼拝堂。単純素朴な建物の形。その内外に表される、窓やドアや装飾や家具やしつらえ、その周りにある木々や光と影までもが、どこか象徴的であり暗示的にも感じられます。何気ない単なるものごとの存在が、かけがえのないもののように思える、そんな雰囲気のことを、敷地に立ちながらぼんやりと考えていました。

西洋の中世の建築様式である「ロマネスク」のもつ特徴は、その簡素さや慎ましやかさにあります。でもそれを建築の専門的な学問にあてはめてしまうと、ロマネスク様式として分類されるものの、そこにある簡素な美しさや居心地の良さといったものは、きちんと論じられることはなかったように思います。きっと言葉にはならないのですね。無理に言葉にしようとすると、手のうちからスルスルとこぼれ落ちるか、急によそよそしくなってしまうような感じです。なんかいい感じだよね、そんな言葉で済まされてしまいそうなところですが、その「なんかいい感じ」ということを、じっくりと腰をすえてやってみたいと思うのです。

山の上のロマネスク。「月見台の家」を、僕はそんな風にイメージしながら、設計をはじめました。この敷地での暮らし。桜の木立を望む小さな窓。ふたつの庭に包まれた居間。木の床と家具。白い壁と天井に宿る陰影。夫婦ふたりのための、木造の小さな住宅。その空間のなかに、丁寧に「奥行き」を与えていくこと。ロマネスクのもつ「奥行き」にイメージを重ね合わせながら。

そしてもうすぐ、棟上げを迎えます。

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