映画監督アンドレイ・タルコフスキーによる写真集「Instant Light」を手に入れました。
この写真集は1979年~84年の間に、彼がポラロイドカメラでロシア・イタリアで撮りためた写真を編集したもの。映画「ノスタルジア」の準備のためだったとも言われています。初版当時はすぐに売り切れ、長らく絶版になっていたそうです。再版されたこの本は、大きさも手頃で、原寸大のポラロイド写真が程よい余白をともなってレイアウトされています。いつでも傍らに置いておきたくなるような一冊。なんか、そういう本とかモノって、ありますよね。
ピントもぼやけ、輪郭もぼやけた写真の数々。焦点も定まらない日常のスナップ。ですが、不思議な光の中に浮かび上がる光景や、人や、犬や、事物を見ていると、何か不思議な感覚にとらわれてきます。何らかのイメージが、ゆっくりゆっくりと、頭のなかをめぐりはじめる、ような。
タルコフスキーは「一日で起きた出来事を、ひとつずつ思い出して映画にしたら、それはとても神秘的なものになるでしょう」と語ったことがありました。そして、我々の日常生活は、スクリーンの上につくられるものよりもずっと神秘的だ、とも。
今、目の前にある写真に映し出された日常のシーンの数々。日常の神秘的なイメージだけを、一瞬の光で切り取って表現したのが、これらの写真なのかもしれません。
日常は、神秘に満ちている。