富士市で計画している住宅の打合せに行った帰り、お施主さんに車で駅まで送ってもらいながら外を眺めると、傾きかけた陽に照らされて富士山がとても美しく見えました。富士山はいったいどの角度からが一番きれいに見えるか。タモリさんが番組の富士市のロケで、この角度からが一番きれいなんだよな~ということを話していたそうです。そこはそれなりにマニアックな場所で(やっぱりタモリさんはよく知ってますね)、きっといろいろな角度から眺めた結果なのでしょうか。
東京に暮らしていると山の気配も感じることがないですが、僕自身が生まれ育った京都でのことを思い返すと、いつも意識のなかに比叡山がありました。富士山とは比べものにならないくらい小さな山ですが、自分の生活圏内からはいつも見ることができ、少し歪んだそのシルエットが僕にとっての比叡山の姿でした。
時は江戸時代、後水尾天皇は、自身の離宮を造営するにあたり、比叡山が最も美しく見える場所を探し歩いたそうです。いったいどのような尺度で「最も美しい」とするかはとても難しいところですね。どこかで聞いたことがあるのですが、後水尾天皇は、一番の場所を探すのではなく、近からず、遠からず、あらずあらず・・・で探し続けて辿り着いたところ、であったそうです。たしかに、ひとつの真理に向かう筋道かもしれません。
さて、そうしてできあがった場所がここ。京都市北部にある小さなお寺、円通寺。数年前に訪れたこの時は霞がかかっていて、ほんのりと比叡山が見えるぐらいで、写真だと、どこにあるの~といった感じになってしまいました。でも、柱と生垣で縁取られた構図のなかに、一期一会の風景が広がります。何度でも訪れたくなる、人も少ない小さなお寺。オススメです。