僕が設計する家は、壁が多くて、窓が少なく見える、という特徴があるようです。実際には窓が少なかったり小さかったりするわけではないのですが、道路からなど、外から人目につきやすいところには窓をあまりつけない、ということが結果的にそのような印象につながるようです。
プライバシーを考慮してそのようにしているということもありますが、壁が街並みのなかでゆったりとある姿は、ずっと古い時代の建物が持っていたような静謐な雰囲気であったり、秘めやかな雰囲気を宿すように思います。そしてその多くは、石造であったり土壁であったり、自然から生まれた材料そのものを使っているから、必然的にアースカラーの外壁になることが多いのです。
上の写真は「桜坂の家」の外観。コンクリートの腰壁の上に、大きなアースカラーの壁面があり、中庭に面して緑に覆われている。ただそれだけの簡素な外観です。イメージのもとには、ジョルジョ・モランディの風景画にあるような、素形としての建物の佇まいでした。
敷地の環境に合わせて壁でゆったりと囲み、暮らしに合わせて窓を開ける。たったそれだけの単純な操作でできあがる佇まいと空間が、時代を経ても変わらない居心地の良さをもたらしてくれると信じています。