写真家の土門拳は、冬ざれの京都が好きだと言っていたそうです。
紅葉の季節は観光客でどんちゃん騒ぎになっているから、静かな冬こそじっくり味わうのに都合がよいのだとか。
華やかさはないけれど、その時にしか生まれない色。
写真は京都市北部にある宝ヶ池の冬のスナップ。
観光地ではないけれど、子ども時代に生活圏内でよく友達と遊びに行ったり、学校のマラソン大会でぐるぐる回ってしんどい思いをしたり。
その静かな雰囲気そのものをいいなと思うようになったのは、やはり大人になってからでしょうか。
川ではなく池だから、水が澄んでいるわけではないし、すぅっと吸い込まれていくような深い感じ。
鴨が音も無く水面をすすむ様は、上村松篁の絵のよう。
こういう色味は自然に自ずと出てくるものだから、狙って出せる色ではないし、ペンキで再現しようとするのも野暮というものです。
枯淡。
無名色。
でも有元利夫は現代の画家でありながら、それを体現していたなあ。
建築でも近づけないものだろうか。