カタルニア・ロマネスク

2009-01-06 11:31:56 | 

明けましておめでとうございます。今年も、このブログにお付き合いくださいますよう、よろしくお願いいたします。

さて、年初めに初心に還る意味も込め、僕にとって「原点」ともいうべき本の話をしたいと思います。

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僕がまだ中学生だった頃、京都にあった自宅の父親の書斎の本棚に、その本はありました。「カタルニア・ロマネスク」。・・・??当然、カタルニアというスペインの地域の名前も知らなければ、ロマネスクという美術史上の名前も知りませんでした。銀色に光る表紙に惹かれて手に取り、ページをめくっていきました。モノクロの、山村の風景。そこに屹立する素朴な礼拝堂の数々。そしてそこに生きる人々と、そこに昔から生きてきた事物の数々。写真家・田沼武能が1987年に撮りためた写真集でした。その写真集との出会いは、とりたてて衝撃的なものでもありませんでしたし、見ながら感動することもありませんでした。ただ、その写真を通して感じる空気感が、なんとなく頭の片隅に残り続けていて、時折、書斎に忍び込んでは眺めるようになりました。

高校生のとき、また本を引きずり出してきて眺めていたときに、僕がやりたいことは建築なのかなあと、直感的に思ったのを覚えています。きっと素朴な礼拝堂の写真や彫刻が多かったせいでしょう。これが、建築を志すきっかけになりました。

実際に建築を学問として学び、実務を通して仕事をするなかで、よく、「カタルニア・ロマネスク」の本のことを思い返します。僕の進んでいる道は、あの写真のようなものになり得ているだろうか、と、自分によく問いかけてきました。

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石を積み上げただけの、単純にして素朴な礼拝堂。そこに生きる人々の慎ましやかでありながら美しい日常生活。そう、日常。僕が求めたいのは、石積みの礼拝堂というスタイルではなく、そのような存在によってもたらされる素晴らしい日常です。

昨年は、不穏な事件が多い年でした。不穏な空気感はそのまま社会情勢としてなおも続いていますね。いろいろな価値観が崩れつつある、時代の転換点に立ち会っているのだろうと思います。そんなときこそ、より深く「日常」に目を向けていきたいと思います。余計なことがそぎ落とされた、シンプルでありながら豊かな気持ちになる日々の生活。自分の感覚を鋭くとがらせて、そんな価値観をしっかりつかんでいきたいと思っています。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
明けましておめでとうございます。 (おつう)
2009-01-06 17:02:08
明けましておめでとうございます。
いつも楽しみに拝見しています。
普段は読み逃げばかりですが、新年くらいはご挨拶を(^ ^)>

うちはどこもかしこもゴッタゴタなので、ここの洗練された静かな雰囲気は別世界のようです。
家が造られていくのを見るのも、面白い。
あの天然木の板から作ったテーブルはとても良かったです。機能的で美しい。

遥か昔の同級生という以外、縁もゆかりも無いわたしですが、小野君のご活躍をお祈りします。

本年もどうぞよろしくお願いします。
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かじやまさんですね。昔の同級生とこんな風にして... (ONO)
2009-01-06 18:53:38
かじやまさんですね。昔の同級生とこんな風にしてまた交流できるなんて、ブログをはじめインターネットって、すごいね。
ブログをよく見ていただいているとのこと、とても嬉しいです!
しかもいろいろ励みになる言葉をかけてくれてありがとう。すこし、自信にもなります。
僕は東京に来て随分たちましたが、同窓会で旧友に会うと、やはり京都の空気がしっくりくるような気分にもなります。また同窓会などで会えるときを、楽しみにしています。
こちらこそ、今後もよろしくね。
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私もいつも読み逃げばかりしてるものです。この日... (萌花)
2009-01-07 13:13:32
私もいつも読み逃げばかりしてるものです。この日記をみつづけてはや1年となり、本当に楽しみにしています。ある雑誌にてとりあげられた自由が丘の家が印象的でこのサイトを知り、それ以来拝読させている次第です。いつかは家を購入したいと考えていた矢先の出会いでしたので、感謝してます。
では本年も堂々、読み逃げさせていただきますので どうぞよろしくお願いいたします。
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萌花さん、嬉しいコメントをありがとうございます。 (ONO)
2009-01-07 14:55:48
萌花さん、嬉しいコメントをありがとうございます。
ゆっくりペースのブログですが、肩ひじをはらずに、これからも楽しみながら書いていきたいと思います。
気が向いたら、ぜひコメントをお願いします(笑)
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