古びた額縁とオディロン・ルドン

2024-07-13 22:56:53 | 山中湖の家


古びた額縁が、ひとつ。
実はこれ、建設が進行中の「山中湖の家」で使うアイテムなのです。
この家は不思議な物語性を内包した家で、施主のKさんが与えてくださったテーマと、スタッフのUさんのもつ感性やイメージにも導かれながら設計がすすんできました。
新築なのに懐かしく、異形なモノが室内にそして屋外にも散りばめられます。

とあるアンティーク屋さんでUさんが見つけたこの額縁は、この家のなかでちょっとしたイタズラ・・・いえいえ不思議なアイテムとして係留されることになります。
さてどのように細工をしようかと、いろいろと四苦八苦しているところですが、まずはイメージとして、ぼくの大好きなオディロン・ルドンの絵を入れてみたところ・・・。

ルドンはこれまでもぼくのブログによく登場してきましたが、19世紀末~20世紀初頭にかけて活動した不思議な画家です。
世紀末の時代に生き、文字通り「異形」なキャラクターを描き続けました。陰鬱なモノクロームの画風。
そしてある時代から次第に、慈愛と色彩に満ちた作品を生み出すようになりました。
上の写真の絵は、そんな時代の始まりの頃でしょうか。ヴェールで覆われた女性の横顔を描いたこの絵は、モノクロームで静かな画風のなかに、内省的な気分が漂います。

古びた額縁とルドンの絵の組み合わせは、なにか不思議な呼応があります。
それは、「山中湖の家」に底流する物語性にもどこか呼応しているように思えるのです。

この家ができあがったら、カッコよく記録写真を撮るというよりも、この家に宿る物語を、絵本のようにしたらおもしろいだろうなあ、なんて本気で思っています。


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別冊 太陽

2024-07-07 20:53:19 | 藤沢大庭の家


平凡社「別冊太陽」に、「藤沢の家」を掲載いただきました。昨年の特集で、「大磯の平屋」を掲載いただいて以来の掲載となります。
今回は「小さな平屋に住む」と題された特集号で、名作住宅についての論考や、著名な陶芸家の自邸についてのコラムなど、とても内容が濃く楽しい一冊です。

掲載していただいた「藤沢の家」の設計テーマは、窓いっぱいに広がる緑を楽しむ、ということ。
そのようなテーマを受けて、庭をぐるりと囲むように窓が連なっているのが特徴です。
居る場所によって窓辺の風情が異なるようにデザインし、一体感と変化に富んだ空間構成です。



庭に面した窓は木製でオリジナルにデザインしたものです。
同時に、長期優良住宅を取得するため綿密な断熱計算や構造計算を行っています。
オーダーメイドの自由なデザインを、それらの認定基準に適合させるのは設計の苦労を伴います。

上の写真で窓辺に佇むのは、担当したスタッフのハシモトくん。
彼にとっても、記念すべき書籍掲載となりました。
そして、素晴らしい設計の機会をいただいた施主のSさんに感謝です。

ぜひご高覧を。
平凡社「別冊太陽」 特集~小さな平屋に住む~









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ブリキのジョーロ

2024-07-01 22:56:13 | 自由が丘の家


家にある古いもの。
昔からあったピンコロ石の花壇。
素焼きの鉢植え。
ブリキのジョーロ。

どれもが何十年とこの場所にあったもの。
とくにブリキのジョーロは、ぼくのおじいさんがずっと愛用していたものだったそうで、いったいいつからあるんだろう。
工業製品なのか、手作りなのか、ちょっとわからないぐらいに素朴な造りで、だからこそ愛らしい雰囲気があります。
水を入れる口には網が貼ってあって、ゴミや葉っぱなどが中に入り込まないような仕掛け。
そして、なにしろ軽い軽い。
ジョーロのデザインもいろいろ素適なものがあるけれども、愛着という点では、なかなかこれに敵うものはないなあ。

この家には、ぼくが生まれる前からあった庭木や暮らしの道具があります。
姿かたちがどれもが好き、ということではないけれど、古びたものを見ていると、それらが歩んできた時間など「見えないもの」にイメージがつながったりします。
できたばかりの新しいものも、やがてはそんなイメージを宿すようになるのでしょうか。




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山中湖 夕方。

2024-06-23 21:59:56 | 山中湖の家


冬から続いてきた「山中湖の家」の現場通いも終盤になってきました。
真っ白の銀世界から始まって、新緑そして梅雨時期へ。

現場での打合せを終えて、ちょっとした安堵感とともに夕方の湖畔に足を運ぶのが習慣になりました。
このあたりはカフェやお店も早い時間に店じまいをしてしまうので、行くところが無いというのもありますが(笑)
でも、この夕方の光景が、ぼくにとっては最高の現場後のご褒美(?)なのです。

近隣の河口湖に比べると観光客もとても少ないのですが、夕方ともなると、ほぼ人影がなくなります。
とぷんとぷん。
湖の水面が揺れる音と、鴨がすいすいと波紋を残しながら泳いでいくのを眺めながら、満たされた気持ちになります。
作家の須賀敦子さんが著作「時のかけらたち」のなかで、夕方のヴェネツィアで感じ取った心情にちょっと重ね合わせながら、少しばかりの時間を過ごすのが、とても好きなのです。



夕方の光景は特別だな、とよく思います。
陽の光が次第に弱まりながら、でも横から事物を照らします。
照らされた事物は、光を受ける反対側に陰影を色濃く宿します。
そうすると、目の前にある事物が、真昼間には見せなかったような趣きを放ち始めるのです。
存在の「しわ」というのか、歩んできた時間や記憶というのか。

夕方には、山中湖畔の木々も、そんな趣きを宿して。


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書籍の取材

2024-06-18 16:54:29 | アート・デザイン・建築


少し前のことになりますが、書籍の取材で2軒の住宅を訪れました。
5月の気持ちのよい日の撮影取材となりました。
新緑の庭を通して窓越しに入ってくる光は、室内の壁をほのかに緑に染めています。
窓辺に置かれた家具や小物が、その質感を美しく見せてくれていました。



たんなる日常の光景だけれども、じんわりと趣きをもって感じられることが、本当にかけがえのない素敵なことだなと思います。
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