あらゆるデザインで、simple is best とする志向は強くあります。
では、美しい装飾をデザインしてほしい、と言われると、なかなか難しいところです。
そんなことを思うとき、古来からのデザインにも目を見張るものが多くあります。
写真は、和室のある住宅の襖。襖紙として江戸からかみと呼ばれる和紙を選びました。
地の色も渋く、そこに黄金色で染められた波のモチーフが描かれています。
照明の具合で、見る角度によってくるくると表情が変わります。
古くに造られた版木が大切に保管され、今でも使うとのこと。
良いものは残り続けるのですね。
以前に、日本画家 上村松篁のエッセイを読んだとき、「川の水面から必要な線を引き出してくるのは苦労した」というエピソードがありました。
画家の手によって選ばれた線は簡潔でありながら、優美で装飾性のある線でした。
シンプルなもののもつ削ぎ落された美しさは好きだけれど、選び抜かれた線による装飾性もやはり惹かれるなあ。