江戸川乱歩の代表作と言われています。
江戸川乱歩の小説は読んだ記憶があまりないのだが、実に奇怪で面白かった。書かれた時代背景は大正のあたり。大正デモクラシーで明治と昭和の間の短い期間だったが、自由を謳歌した良い時代だったと言う。日本には珍しいのでは?
掲載されている2つは、どちらも代表作と言われるが、「孤島の鬼」のほうが、どろどろとした情念を感じ、私の江戸川乱歩観にぴったりで好きです。
登場人物が奇形や変人ばかりで、地方の祭りの出物小屋をこっそりのぞいた感じがします。
蛇女、小人、脊蟲男、口から火を吹く女、、、それが好きなわけじゃないけど、たぶん人は自分より容姿が劣っている人を見て笑い飛ばすとストレス解消になるのでしょう。人間のサガだからしかたないけど、、、。
だけど、その笑い飛ばされる方にだって、人の営みはあるだろうし、悩みもあるんでしょう。
この「孤島の鬼」はそんなことを書いているわけじゃないのですが、とある世界の出来事として、異次元の世界のこととして書いているんだと思う。リアリティなんてこれっぽっちもないのだが!
大正時代には、紀伊半島に鉄道が通っていなかったのは驚き。鉄道は鳥羽までだったんですね。新宮や串本、白浜は陸の孤島だったんだ。当時は鳥羽から3000トンの客船(自慢げに)で行ったそうだ。
今じゃ日本全国津々浦々、僻地なんていうところはないけど、私が物心つき一人であちこち行きだしたころは、東北の飯豊山塊や朝日連峰の山の中は、昔といっても、、、私にしちゃ江戸川乱歩の世界が残っていた。家の軒先が人の背丈より低い掘っ立て小屋があった。それを初めて見たときは、こんな生活がまだ残っているんだーとびっくりしました。
そうそう、三浦半島の先端に漁村が残っていて、「砂の女」のような、、、まるで、子供たち漁師も、映画の中のふるーいワンシーンを見ているようだった。
納沙布岬の近くの海岸で、漂うくず昆布を集めるお婆。
あーやって、人の口に入るものを自然から得ることもできるんだ、、、と思うと、珍しいものを見たというより、生活のオリジンを見たと言うのが正確。
中古のバイク、1959年製のホンダ・ベンリイC93を3000円(もともと古いし事故車で激安)で買って、興味があるがまま、今思うと不思議なところに良く行ったものです。当時、若い私にはバイクが魔法の足でした。
紀伊半島は交通の便が今でも良くないし、熊野神社に行くと、古代日本の入り口のような気配を感じます。ここから奈良の山之辺の道へ、いつかたどってみたい。
「孤島の鬼」は面白かった、お勧めします、おどろおどろが嫌いな方はダメですよー。