著者は増島みどりさん
シドニー・オリンピック女子マラソンを選考の前から追ったドキュメンタリーです。高橋を含め山口、市橋、選考会のあと1万mにスイッチした弘山、マラソンの補欠にまわった小幡。2000年のオリンピック・メンバーは史上最強の女子マラソン陣と言われた。
日本のオリンピック・マラソン選考は、4大会から3人を選ぶ 。一発選考じゃないのでタイムが劣っていても、気候や相手選手、順位などでどんでん返しがある。
さらに実績、期待などと言うものを持ち出されたら、ケンケンゴウゴウ。
シドニーでは高橋尚子の優勝で、アテネでは野口みずきの優勝、土佐が5位、坂本が7位と日本女子マラソン最強の名をとどろかした。
この本は、シドニーの年に、好タイムを出してオリンピック・マラソンに選考されなかった弘山を含め、3人のオリンピック選手、補欠に回った小幡の練習、心の葛藤を時を追って描いたドキュメンタリーです。
その頃の日本女子マラソンの最大の強敵シモンは今年の中国でも走って好成績だった。
実力を遺憾なく発揮し優勝した高橋尚子、おそらく前年あたりが高橋のピークだったんじゃないか。それでも十分強さを見せ付けた。高橋の陽気さと豪快さ緻密さ、それと絶対に勝つと言う信念なんだろう。それとて、現在のように勝てなくなることはいつか来る、いつまでも最強じゃないと言うことです。
山口衛理は5km地点で転倒したが、持ち直して7位。順位もタイムもわからないまま走りこんでの成績は、その時点の実力の片鱗を見せたといえるだろう。転倒したときにシューズに付けていた計測器がこわれたという。それで電光掲示板から山口の名前が消えていて、あわやノータイムになるところ?まさかだが。面白いのがマラソン界全体の流行なんだが、ボルダーやサンモリッツなど、今で言えば昆明など海外の高地に行かずに、山口は日本国内でずっと練習していたということ。それでも、女子マラソンの最強のひとりになれたということ。それも、普通に実業団の練習をやり、せいぜい菅平ていどの高地練習。しかも普通の高校生たちを引っ張って練習をしていたぐらい。普段とかわらない実業団の選手としてだ、それが山口のスタイルだった!
市橋有里は15位。世界陸上の成績で選ばれたので、市橋に世間の目は冷たかったが、それを跳ねのけようと積極的に前へ出てつぶれた。高橋の揺さぶりペースアップがすごすぎたので、市橋自身の頑張りは評価される。国内の大会で選ばれたんじゃないから、好タイムを出した弘山をはじき出したから、世間の風は強かった。だからこそ、市橋はシドニーでは積極的に前へでて、残念だけれどもつぶれた。そこに市橋の人としての意地が見えた。
アテネ選考では、今度は高橋が涙をのんだが、アテネ・オリンピックでの成績は日本女子マラソンで望むべき最高の成績だった。
意外に4大会で3人を選ぶ選考方法は良いのかもしれない。
だが今年の中国オリンピックの成績は近年にない日本女子マラソンの敗退だ。
オリンピック3度目、3連続優勝を狙って、補欠を含めて全員がオバーワークになったようだが、その予兆はあった。高橋にしても野口にしても、オリンピック優勝の後、骨折したりして長期のブランクを余儀なくさせられている。ギリギリの練習だったんだろう。
しかし体を壊しては元も子もない。
ルーマニアのシモンはいまだ世界のトップランナーのひとりです。しかも、しょっちゅうメジャーな大会にでています。あのタフさはなんだ、あの精神力の強さはなんだ?
精神的なよりどころを他に求めたり、、、それと悲壮感があると怪我をするんじゃないかしら??
このハードカバー本も古本屋さんで105円、、、作家泣かせだなー。