映画少年Y登場。
「連休中、どこか行ってきた?」(私)
「ええ、<ジャック.リベット>観てきましたよ」(Y)
「相変わらずやってるね」(私)
「いやあ、<リベット>は良いですよ」(Y)
「そりゃあ、良かったね」(私)
「何だか今ひとつですね、反応が」(Y)
「個人的にはそれ程好きじゃないから」(私)
「そうですか?良いんですけどね」(Y)
「なんだろうね、<エリック.ロメール>は良くて<リ
ベット>は駄目、<ブレッソン>は良くて<リベット>
は駄目、何が原因なのか自分でも良く分からないとこ
ろだね」(私)
「あと、<松涛美術館>にも行ってきましたよ」(Y)
「<松涛美術館>?、何でまた」(私)
「<中西夏之>を見てきたんですよ」(Y)
「そんなのやってるの」(私)
「ええ、やってるんですよ<ハイ.レッド.センター>の
<センター>の」(Y)
注)ハイ.レッド.センターというのは、嘗て「高松次郎」
(ハイ)と「赤瀬川源平」(レッド)、そして「中西夏之」
(センター)が組んでいた芸術集団。
「いやあ、これも良かったですよ、どうですか<中西夏
之>は」(Y)
「どうですかって、元々<中西夏之>は好きだよ、Yが
注目するずっと前から、それより何でYが<ハイ.レッド.
センター>なんて知ってるのか、それの方が不思議だ
よ」(私)
「有名じゃないですか」(Y)
「有名って言えば有名かもしれないけど、<ハプニング>
なんていう芸術活動が全盛の時代だよ、こっちだってリ
アルタイムに経験したわけじゃないし」(私)
「まあでも、ちょっと芸術に興味のある人間だったら
知っておくべきものじゃないですかね」(Y)
「そうは思うけどね」(私)
「だんだん表現方法がシンプルになってきて、時代に
よる変化も良く分かって、非常に良い展覧会です、枯
れてきたとかそういうのではないんですよね、より研
ぎ澄まされてきたって感じですか」(Y)
「ふむふむ」(私)
「大分、年のはずなんですけど、やっぱ芸術家ですね、
それに比べると<村上隆>なんかどこが良いのかさっ
ぱり解らないですよ」(Y)
「それは本当そう思う」(私)
「幼稚化しているだけとしか思えないですよ、兎に角
<中西夏之>は必見です、行ってくださいよ」(Y)
「行ってくださいよと言ったって<松涛美術館>だろ
う、遠すぎだよ」(私)
「それより、これ観るか」(私)
と、もったいぶってブレッソンのDVDボックスを見
せる。
「えっ、どうしたんですか」(Y)
「どうしたんですかって、買ったに決まってるじゃな
い」(私)
「観ます観ます」(Y)
「一本ずつね」(私)
「何でですか」(Y)
「この手のやつは、ちゃんと行き先を管理しないと、
ふっと消えるものだから」(私)
「しょうがない、じゃあ、これ」(Y)
と言って「たぶん悪魔」を選んだYであった。