Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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機能性神経障害診療ハンドブック 予約開始と先行販売のご案内

2024年05月25日 | 機能性神経障害
機能性神経障害(FND)は,ヒステリー,心因性疾患,転換性障害,身体表現性障害,心気症,詐病など,さまざまな病名で呼ばれてきたcommon diseaseです.歴史的に見ると,戦時中に心的ストレスの影響で患者数が増加したのは有名ですが,現代においてもパンデミックやコロナワクチン接種の影響で患者さんを診る機会が大幅に増えました.近年,海外を中心にFNDに対する診療は大きく変わりつつあります.とくに症状は偽りではなくかなりの苦痛と障害を伴うこと,FNDを示唆する陽性徴候から積極的に診断する必要があること,正しい診断・治療を行えば改善する患者さんが少なくないことを医療者は認識する必要があります.

本邦でも日本神経学会や日本臨床神経生理学会が,教育コースやシンポジウムを行ってきましたが,FNDの正しい診療が十分に浸透しているとは言い難い状況です.このため日本神経学会は,2022年に「機能性疾患/精神科領域疾患セクション」を設置し,FNDに対する診療レベルの向上を目指した試みを開始しました.またこれまでなかった本格的な教科書を作る必要がありました.下記に示すエキスパートの脳神経内科医,精神科医の先生方にご協力いただき,標題の本がついに完成しました.

また脳神経内科,精神科の境界領域にはFNDだけでなく,向精神薬による薬剤誘発性運動障害がありますし,カタトニア・カタプレキシー・PNES・常同運動・チックなどの運動障害もあります.さらに認知症や自己免疫性脳炎など2領域にまたがる疾患もあります.本書ではこれらについても独立した章として取り上げました.FNDにファーストタッチしうる総合診療科の先生方にも役立つものと思います.本書が多くの先生方や患者さんのお役に立てば望外の喜びです.

なおアマゾンではすでに予約開始されました.29日からの第65回日本神経学会学術大会でも先行販売されます.
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【目次と著者】
I 機能性神経障害 ―総論―
1 FNDの診断治療の考え方 (園生雅弘)
2 歴史から学ぶ(1):シャルコー以前のヒステリー (柴山秀博)
3 歴史から学ぶ(2):シャルコーの火曜講義録に見る機能性神経症状 (岩田 誠)
4 歴史から学ぶ(3):精神分析とヒステリー (加藤隆弘)
5 転換性障害の精神科的概念 (吉村匡史)
6 FNDとフェミニズム (飯嶋 睦)
7 診療のコツ・注意点 (廣瀬源二郎)
8 受診診療科により異なる診療のコツ・注意点 (堀 有行)
9 Stroke mimicsとしてのFND (下畑享良)
10 身につけるべき症候学 (園生雅弘)
11 FNDに間違いやすい神経疾患を通してFNDを考える (福武敏夫)
12 FNDを合併しやすい神経疾患 (今井 昇)
13 コロナウイルス感染症の後遺症 (大平雅之)
14 COVID—19とFND (下畑享良)
15 FNDに合併しやすい精神疾患 (是木明宏)
16 FNDの病態 (冨山誠彦)
17 電気生理学的検査 (関口輝彦)
18 FNDにおける脳画像研究の現状について (吉野敦雄)
19 治療(1):脳神経内科的アプローチ (神林隆道)
20 治療(2):心身医学・精神医学的アプローチ (福永幹彦)
21 FNDに対するリハビリテーション医療 (角田 亘)
 
II 機能性神経障害 ―各論―
1 機能性運動麻痺 (安藤哲朗)
2 機能性感覚障害 (関口兼司)
3 機能性振戦 (渡辺宏久)
4 機能性ジストニア (下畑享良)
5 機能性ミオクローヌス (守安正太郎 花島律子)
6 機能性チック (藤岡伸助 高橋信敬 坪井義夫)
7 機能性パーキンソニズム,およびパーキンソン病に合併しやすい機能性運動障害 (武田 篤)
8 機能性歩行障害 (大熊泰之)
9 機能性発作性運動障害 (田代 淳)
10 機能性顔面障害 (仙石錬平)
11 機能性発声障害 (竹本直樹 讃岐徹治)
12 小児の機能性運動障害 (久保田雅也)
 
III 薬剤誘発性運動障害
1 Neuroleptic malignant syndrome(NMS,悪性症候群) (服部早紀 岸田郁子 河西千秋)
2 セロトニン症候群 (長田高志)
3 ドパミン拮抗薬によるパーキンソニズム (関 守信)
4 遅発性ジスキネジア (野元正弘)
5 薬原性アカシジア (稲田俊也)
6 急性ジストニア (宮本亮介)
7 レストレスレッグス症候群 (岡 靖哲)
8 抗うつ薬による運動障害 (佐光 亘)
9 薬剤誘発性振戦・ミオクローヌス (坪井 崇)
10 薬剤誘発性運動障害・薬剤誘発性小脳性運動失調 (太田康之)
 
IV 境界領域の運動障害
1 せん妄とカタトニア (西尾慶之)
2 過眠症・カタプレキシー (鈴木圭輔 小俣伸介 木村真由香)
3 心因性非てんかん発作(PNES) (赤松直樹)
4 PNESにおける脳波検査 (村田佳子)
5 常同運動(Motor stereotypies) (野村芳子)
6 チックとTourette症候群 (星野恭子)
7 ADHD,ASD,OCDと運動障害 (金生由紀子)
 
V 境界領域の精神・神経疾患
1 レビー小体型認知症 (織茂智之)
2 前頭側頭型認知症 (渡辺宏久)
3 ハンチントン病 (長谷川一子)
4 自己免疫性精神病 (木村暁夫)
5 自己免疫性運動障害 (大野陽哉)

最後になりますが,真摯な思いを込めた素晴らしい原稿をご執筆くださった先生方に深く御礼申し上げます.




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