Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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SLEにおける認知機能障害の予後因子

2005年02月04日 | その他
SLEでは認知機能障害がしばしば認められ,そのパターンから皮質下性の障害が示唆されている.認知機能障害とステロイド内服積算量の関係については報告によって見解が異なっている.また血清学的に,抗カルジオリピン抗体の上昇は認知機能低下と関連することがすでに報告されている.また認知機能障害を防止する治療法については不明である.
今回,SLEにおける認知機能障害の予後因子の検討がアメリカより報告された.対象は123名のSLEで(うち116名が女性),最低3年の経過観察が行われた.4ヶ月ごとにfollow upを行い,認知機能と各種抗体価を調べた.結果として,血管病変を来たす危険因子の頻度は以下の通りであった;高脂血症(17.1%),糖尿病(21.1%),高血圧(48.0%).治療はaspirin(21.1%),prednisone(65.0%),NSAID(42.3%),hydroxychloroquine(58.5%;国内未発売の抗リウマチ薬)が行われていた.常時,陽性であった抗体としては抗リン脂質抗体(54%),抗CL beta GP1(73%),抗ribosomal P(17%)であった.認知機能低下に有意に関与する因子としては,①抗リン脂質抗体陽性,②prednisoneの恒常的な内服,③糖尿病,④高い「うつ」スコア,⑤教育レベルが低い,であった.②については,prednisone自体が認知機能に悪影響を及ぼしている可能性が考えられるが,prednisoneの恒常的な内服自体,SLEが重篤であることを示唆しており,原疾患の活動性を反映している可能性も否定できない.また,aspirin内服は認知機能障害の改善をもたらし,とくにその効果は血管病変を来たす危険因子を有する高年齢層(48歳以上)において明らかであった.
今後,vascular risk factorをもつ(とくに高齢の)SLE症例に対しては,積極的にaspirin内服を検討すべきかもしれない.

Neurology 64; 297-303, 2005
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