◆難聴は認知症の重大なリスク因子だが,補聴器使用で回避できる.
Lancet Public Health誌に,難聴および補聴器使用と認知症リスクの関連を調べた国際研究が報告されています.英国のコホート研究であるUK Biobankのデータを使用しています.2006年から2010年にかけて,40~69歳の43万7704人の成人を検討しています.ベースライン時の補聴器の使用の有無とさまざまな認知症(全認知症,アルツハイマー病,血管性認知症,非アルツハイマー・非血管性認知症)のリスクを推定しました.
難聴なしの人と比較して,補聴器を使用しない難聴の人は,全認知症のリスクが増加しました(ハザード比1.42).しかし補聴器を使用している人ではこのリスクの増加は認めませんでした!(同1.04).この補聴器使用の効果は,認知症のタイプによらず認められました.難聴の認知症への寄与危険割合は29. 6%と高いこと,また補聴器使用の効果は,抑うつ気分,孤独感,社会的孤立の軽減によってもたらされることも分かりました.以上より,難聴があっても補聴器を使用すれば,難聴なしの人と同程度まで認知症のリスクを下げられることが分かりました.難聴に適切に対処することで,認知症の最大8%を予防できることが知られていますので(図左),超高齢社会にある日本は難聴対策に取り組むべきではないかと思います(まだ安全性に懸念のあるアミロイドβ抗体療法より,加齢性難聴の評価と補聴器使用が効果的ではないかと思います).
ただ先日,この問題に取り組まれている耳鼻咽喉科の先生から「日本は補聴器使用の取り組みに関して世界から大幅に遅れている」と伺いました.そしてその要因として,日本では補聴器購入費用は一般的な健康保険ではカバーされておらず,オーダーメイドの耳穴式補聴器は片耳で15~55万円もすることを知りました(図右).補聴器使用の啓発に加えて,国が購入費用をサポートすること,そして企業はもっと安価な補聴器を開発することが重要ではないかと思います.そして若い人はヘッドホン難聴にもっと気をつける必要があります.
Jiang F, et al. Lancet Public Health. 2023 May;8(5):e329-e338.(doi.org/10.1016/S2468-2667(23)00048-8)
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◆時事通信社系の地方紙にて「認知症を防ぐ暮らし-根拠ある予防策を」連載開始.
週刊誌やテレビなどでさかんに認知症予防法が取り上げられていますが,エビデンスのあるものないもの様々です.どうせ取り組むなら根拠のある認知症予防をすべきと思います.お話をいただいて,時事通信社系の地方紙に12回シリーズの連載「認知症を防ぐ暮らし-根拠ある予防策を」を始めました.まず陸奥新報(青森),神戸新聞,北羽新報(秋田),岩手日日新聞で掲載が始まりました.ぜひお読みいただければと思います!
1. 認知症の総論
2. Lancet論文と12の認知症修飾因子の紹介
3. 新しい修飾因子 COVID-19
4. 若年期:教育(学ぶ習慣の重要性)
5. 壮年期1:難聴
6. 壮年期2:高血圧/肥満
7. 壮年期3:外傷性脳損傷/過度のアルコール消費
8. 老年期1:喫煙/大気汚染
9. 老年期2:うつ病/社会的接触の少なさ
10. 老年期3:運動不足/糖尿病
11. 睡眠と認知症
12. 良い睡眠のために
Lancet Public Health誌に,難聴および補聴器使用と認知症リスクの関連を調べた国際研究が報告されています.英国のコホート研究であるUK Biobankのデータを使用しています.2006年から2010年にかけて,40~69歳の43万7704人の成人を検討しています.ベースライン時の補聴器の使用の有無とさまざまな認知症(全認知症,アルツハイマー病,血管性認知症,非アルツハイマー・非血管性認知症)のリスクを推定しました.
難聴なしの人と比較して,補聴器を使用しない難聴の人は,全認知症のリスクが増加しました(ハザード比1.42).しかし補聴器を使用している人ではこのリスクの増加は認めませんでした!(同1.04).この補聴器使用の効果は,認知症のタイプによらず認められました.難聴の認知症への寄与危険割合は29. 6%と高いこと,また補聴器使用の効果は,抑うつ気分,孤独感,社会的孤立の軽減によってもたらされることも分かりました.以上より,難聴があっても補聴器を使用すれば,難聴なしの人と同程度まで認知症のリスクを下げられることが分かりました.難聴に適切に対処することで,認知症の最大8%を予防できることが知られていますので(図左),超高齢社会にある日本は難聴対策に取り組むべきではないかと思います(まだ安全性に懸念のあるアミロイドβ抗体療法より,加齢性難聴の評価と補聴器使用が効果的ではないかと思います).
ただ先日,この問題に取り組まれている耳鼻咽喉科の先生から「日本は補聴器使用の取り組みに関して世界から大幅に遅れている」と伺いました.そしてその要因として,日本では補聴器購入費用は一般的な健康保険ではカバーされておらず,オーダーメイドの耳穴式補聴器は片耳で15~55万円もすることを知りました(図右).補聴器使用の啓発に加えて,国が購入費用をサポートすること,そして企業はもっと安価な補聴器を開発することが重要ではないかと思います.そして若い人はヘッドホン難聴にもっと気をつける必要があります.
Jiang F, et al. Lancet Public Health. 2023 May;8(5):e329-e338.(doi.org/10.1016/S2468-2667(23)00048-8)
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◆時事通信社系の地方紙にて「認知症を防ぐ暮らし-根拠ある予防策を」連載開始.
週刊誌やテレビなどでさかんに認知症予防法が取り上げられていますが,エビデンスのあるものないもの様々です.どうせ取り組むなら根拠のある認知症予防をすべきと思います.お話をいただいて,時事通信社系の地方紙に12回シリーズの連載「認知症を防ぐ暮らし-根拠ある予防策を」を始めました.まず陸奥新報(青森),神戸新聞,北羽新報(秋田),岩手日日新聞で掲載が始まりました.ぜひお読みいただければと思います!
1. 認知症の総論
2. Lancet論文と12の認知症修飾因子の紹介
3. 新しい修飾因子 COVID-19
4. 若年期:教育(学ぶ習慣の重要性)
5. 壮年期1:難聴
6. 壮年期2:高血圧/肥満
7. 壮年期3:外傷性脳損傷/過度のアルコール消費
8. 老年期1:喫煙/大気汚染
9. 老年期2:うつ病/社会的接触の少なさ
10. 老年期3:運動不足/糖尿病
11. 睡眠と認知症
12. 良い睡眠のために