カナダから重症筋無力症(MG)における閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の合併に関する前向き研究が報告されている.対象は西オンタリオ大学にて経過観察中の400名!のMG患者(Ach受容体抗体陽性,テンシロン試験陽性,反復刺激陽性)から100名をランダムに抽出した.その後,multivariate apnea prediction (MAP) index(BMI,男性,年齢,症状などからSASの有無を予測する指数)を計算し,0.5以上の場合,PSGを施行した.
結果として,50例がMAP scoreが50以上で,うち13例がPSGを拒否し,37例にPSGを施行した.このなかの34例がOSAの診断基準(AHI>5)を満たした.Apnea-hypopnea index (AHI)で重症度を分類すると,軽症(AHI 5-14)10例,中等症(AHI 15-29)9例,重症(AHI >30)15例であった.睡眠時呼吸障害は主としてnon-REM睡眠期に生じていた.全体としてapneaよりhypopneaが主体であった.
最終的には,今回のstudyでOSAと診断された34例に,MAP index 0.5未満ながら以前からOSAと診断されていた2例を加えて,計36例がOSAということになり,有病率36/100=36%となった.これは15~20%と言われる一般人口における有病率を上回り,MGではOSAが多いという結果となった.
ただ,この研究ではMGのうちどのような症例がOSAを合併しやすいのかまったく分からない.またOSAに関しても,閉塞部位はどこかなど,その特徴が分からない(正直言うとかなりstudyデザインが甘く,よくアクセプトされたなあという印象は否めない).ただし,REM期に睡眠時呼吸障害が明らかになっていないところを見ると,横隔膜の筋力低下の影響は考えにくく,単純に上気道の筋力低下が生じているとかんがえるのが普通だろう.
いずれにしても,今後,MGのうちどのような症例がOSAを合併するのか考える必要がある.OSA合併例では,日中の易疲労性にも影響が生じる可能性があり,今後の検討が必要である. Neurology 67; 140-142, 2006