Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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てんかん発作がアルツハイマー病の進行を促進する!? ―焦点とタウ病理の非対称性―

2024年10月24日 | 認知症
アルツハイマー病(AD)は,健康な高齢者に比べててんかん発症のリスクが2〜3倍高く,特に焦点発作(部分発作)の発症はADの進行と関連している可能性が指摘されています.しかし,ADにおける焦点発作とタウ・アミロイドβの蓄積との関連についてはよく分かっていませんでした.Neurology誌にマサチューセッツ総合病院(MGH)から,焦点発作を認めたAD患者(AD-Ep)において,焦点とタウ・アミロイドβの蓄積,および脳の萎縮の関連を検討した研究が報告されました.

対象は8名のAD-Ep患者で,タウおよびアミロイドPETイメージングと頭部MRIを実施し,てんかん発作の焦点のある半球でのタウやアミロイドβの蓄積について検討しています.てんかん発作を認めないAD患者群(AD-NoEp)14名も検討しています.この結果,AD-NoEp群と比較して、AD-Ep群ではタウの非対称性蓄積が顕著であり,特に焦点が存在する半球側にタウの蓄積が強く認められました(前頭葉,側頭葉外側,頭頂葉外側+内側に強く蓄積).また,アミロイドβの蓄積や脳萎縮も,焦点が存在する側に強い非対称性がありましたが,タウの非対称性ほど顕著ではありませんでした.図1の白い矢印は,焦点が存在する側においてタウ・アミロイドβの蓄積が多い領域を示します.黄色い矢印は,焦点の反対側に蓄積が見られた領域を示しています(つまり例外もある).



著者らは,焦点発作を伴うAD患者が一般的なADとは異なる病理的特徴を呈すると指摘しています. AD-Ep患者におけるタウの非対称性が顕著であることから,焦点発作がADの進行に影響を及ぼす可能性を指摘しています.つまり焦点発作=神経ネットワークの過剰な興奮(hyperexcitability)が片側の病理変化を助長し,ADの進行を早めると考えられ,ADの新たな治療につながる可能性があると述べています.

ただあくまでも観察的研究であり,てんかんがADの病理変化を引き起こすのか,それとも既存の病理がてんかんを引き起こすのかについては結論が出せないとも言っています.私も同感で,結論を出すには今後,縦断的研究が必要になると思います.

Lam AD, et al. Association of Seizure Foci and Location of Tau and Amyloid Deposition and Brain Atrophy in Patients With Alzheimer Disease and Seizures. Neurology. 2024 Nov 12;103(9):e209920.(doi.org/10.1212/WNL.0000000000209920

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