Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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みんなにも研究にチャレンジしてほしい!@岐阜大学医学部 臨床講義

2024年09月14日 | 医学と医療
5年生に「神経疾患の創薬 ―DRPLAと脳梗塞―」という講義をしました.伝えたいメッセージは「みんなにも研究にチャレンジしてほしい!」です.以前,数人の学生から「自分は地域枠入学なので地域医療をすれば良く,研究とは無縁,英語も不要です」という発言を聞き,それ以来,この講義に力を入れています.

講義では自分の研究歴を話しました.将来研究をするなど考えてなかった自分が,医師4年目に歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の女の子,ひとみちゃんの主治医となり,自分の無力さを痛感して研究を志したこと(図1),大学院で立派な論文を書かせてもらったものの,指導教官と衝突しDRPLAの研究を断念したこと,失意から立ち直り脳卒中の治療研究に取り組むために留学したスタンフォード大で得たことは創薬・産学連携の経験と,真のグローバル化とは英語が流暢に話せることではなく「日本のこと」や「日本人としての自分」をしっかり考えられることだと理解したことを話しました.帰国後,仲間と取り組んだ創薬研究はいまだ成功と失敗の連続だが,諦めなければ研究は続くこと,創薬研究は「人とのつながりや信頼」が大切であることを話しました.


図1の説明.右は主治医として担当した1年半で,一度だけ笑ってくれたときに,看護師さんが撮ってくださったひとみちゃんの写真です.左はお花見に出かけたときのものです.ひとみちゃんは22歳で天国に召されました.Neurology. 1998 Jan;50(1):282-3.(doi.org/10.1212/wnl.50.1.282

最後に「研究・留学に必要なこと」として3つのキーワード「情熱と仲間をもつ(Passion and colleague)」「取り組むに値する問題を探す(Create questions)」「世界に発信せよ(be Global)」について説明しました.具体的には「情熱」は患者さんとの出会いによって強く芽生えること,患者さんとの出会いを通じて,取り組むべき問題を見つけられた人のモチベーションは強いこと,また日本の科学は閉塞状態に陥って久しくすでに科学の後進国にあること,これを打開するには若いうちから意識的にどんどん海外に出て高いレベルの医学に触れることが必要で,そのため当科では若手を支援してどんどん海外学会に参加させていることを話しました.オリンピックでの日本の活躍のように,必死に努力して取り組めば日本人の力はこんなもんじゃないと激励しました.

またDRPLAの女の子,クリちゃんとお母さんの動画も見てもらいました(下記).とくにハワイの医師が「研究が発表できることは素晴らしいことだが,研究をする理由はクリちゃんのためである.もしクリちゃんのことを念頭においていないのであれば研究の道に進むべきではない.そもそも医学の道に進むことも良い考えではない」と仰った場面は学生全員が食い入るように見ていました.講義後の感想文もみな立派で(図2),難病の研究に取り組んでみたいという学生も少なからずおり,とても嬉しく思いました.

YouTube動画:Don't give up hope!希望を捨てないで!
https://www.youtube.com/watch?v=Phufk4O7uLc


図2の説明.学生のみなさんの感想です.真剣に考えて書いてくださったことが伝わります(本人の許可を得て掲載しました)

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