JAMA誌の提供する動画「Your COVID Vaccine Questions Answered」に,ワクチンに関するQ&Aがありました(1月28日公開).感染症と国際保健の専門家,Emory 大学Carlos del Rio教授が,12個の質問に対して回答しています.聞いてみて,分かっていることと分かっていないことを明確に提示している点,分かっていない(エビデンスが十分でない)場合でも,自分はどうするかを理由とともに示している点で,信頼できる本物の専門家という感じがしました. 以下,内容のメモです(もしヒアリングでおかしな点があったら教えて下さい).
◆免疫疾患やがん,免疫抑制剤を服用している場合,ワクチンを接種してもいいですか?
ワクチン接種の禁忌には当たりません.分からないことは,ワクチンに対する反応がどの程度良いのかということです.残念ながら,臨床試験には免疫抑制状態の人は含まれていませんでした.他の人と同じように良い免疫反応が生じるのかが分かりません.
◆妊娠中や授乳中でもワクチンは受けられますか?
妊娠中や授乳中の女性も臨床試験に含まれませんでした.実際には妊娠した人はいましたが,彼女らは綿密に追跡されています.アメリカ産科婦人科学会,母体胎児医学学会,CDCは「妊娠中ないし授乳中の女性が,ワクチンを受けるべきではないとする理由はない」という声明を発表しました.個人的な話をすると,母乳育児中の娘と嫁はすでにワクチンを受けています.
◆アレルギーがある場合,ワクチンを受けてもいいのでしょうか?
「アレルギーがある」がどういう意味かによります.ピーナッツアレルギーの人もいるし,色素にアレルギーがある人もいます.何にアレルギーがあるかは人それぞれです.ワクチンの成分の一つにアレルギーがあるならば絶対に受け取るべきではありません.しかし蜂に刺された時に発疹が出るようなアレルギーでは問題はないでしょう.
◆重度のアレルギー反応の既往歴がある場合はどうすればいいですか?
今まで見てきたアナフィラキシー反応は非常にまれです.私が人々に伝えているのは,もしあなたが以前にワクチンに対して重度のアレルギー反応を起こした状況や,アナフィラキシー反応を起こした状況を経験しているのであれば,エピペン(アドレナリン自己注射薬)を持ち歩いているということです.このことを予防接種の際に伝える必要があります.そうすると,医療者らはあなたをより注意深く観察しますし,エピペンや他の対応の準備もできます.
◆COVID-19に既に感染した場合,ワクチンを受けてもいいですか?
ワクチンは受けられますし,受けることをお勧めします.でもワクチンの供給量には限りがあるので,COVID-19に感染したのであれば,必ずしもすぐにワクチンを接種する必要はありませんと伝えています.免疫系がまだ反応していないため90日くらい待つように言っています.しかし,ワクチンは接種してほしいと思っています.ワクチンの臨床試験において,過去に感染した人も含まれていて,その人達はワクチン接種によりさらに保護されたためです.
◆どのワクチンが他のワクチンよりも優れているのでしょうか?また,接種を切り替えることはできますか?
知り合いに言ったのですが.ペプシとコーラを比べてみると実際は違うブランドですが,本質的には非常に似ています.ワクチンもわずかな違いはありますが,効能や安全性は非常に似ています.そうは言っても,米国では,もしあなたが最初のワクチンとしてファイザー接種した場合,2回目のワクチンもファイザーで受けた方がいいと推奨しています.1回目のワクチンをモデルナで受けたなら,2回目のワクチンはモデルナで受けるべきです.興味深いことに,英国はそうではありません.英国は,どちらのワクチンを受けてもいいと言っています.私は正解が分かりません.しかし私は伝統主義者ですので,1回目がファイザーなら,2回目もファイザーにしたいと思います.
◆リスクを最小限にするために1回分しか接種しないということはできないのでしょうか?
英国とアメリカでは,2回接種の代わり1回接種にできないか議論しています.また2回目の接種を遅らせることも議論しています. その理由は,2回の接種で少数の人に行うより,1回の接種でより多くの人にワクチンを接種しようとしているためです.しかし正解は分かりません.1回ではリスクを最小化することはできないでしょう.実際には後に感染するリスクを高めるかもしれません.つまり2回接種の理由は,免疫反応を高めるためです.現時点での私のお勧めは,自分ではどうするかと言うと,2回接種します.自分が2回接種するのに,他に人に1回で良いと言うことは難しいことです.
◆1回目を摂取してからCOVID-19に感染してしまいました.2回目の接種は行った方が良いのでしょうか?
いい質問です.何人かの人から同じ質問がありました.私の同僚に土曜日に予防接種を受けた人がいたのですが,月曜から症状が出て,火曜日にCOVID-19と診断されました.つまり,彼はすでにCOVID-19に感染し,潜伏期であったということです.ワクチンはすぐには効かないのです.免疫が抗体を作り,あなたを保護するまでには時間が必要です.おそらく最初の接種から約2週間後,10日から14日には効果が出始めます.そして2回目の接種も必要です.しかし大切な問題は,2回目の接種をいつするかです.私のお勧めは,2回目の接種を,最初の接種後21から28日までに行うことです.もし可能ならもう少し遅らせたいと思うかもしれません.しかし,それ以外に2回目の接種を行わない理由はありません.
◆2回目の服用の予約を取り損ねてしまいました.いつまでに受ければ良いのでしょうか?
2回目の接種はできるだけ早く受けていただきたいです.英国では12週間遅らせるという話が出ています.12週間も遅らせることは可能なのかというと,あまりデータはないのですが,おそらく可能なのではないでしょうか.この考え方だと,ファイザーは2回めが21日後,モデルナは28日後となっていますが,免疫反応については分かっているので,さらに2週とか,4週,8週とか簡単に延ばせるのではないでしょうか?そういうわけで,英国は12週を行っています.
◆免疫力を高める自然な方法はありますか?
免疫力を高める自然な方法として,本当に良いものはないのです.でも健康になることで,免疫力を上げることになり,COVID-19感染後の重症化のリスクを減らすことができます.ですから,私のお勧めは,健康状態を全体に改善することです.血圧,体重,血糖をコントロールしましょう.これらをすべて実行すれば,あなたの全体的な寿命はより改善するでしょう.健康的な食事や運動,ライフスタイルを送ることで,免疫を改善することができます.
◆ウイルスの変異でワクチンの効果は落ちますか?
ウイルスの突然変異でワクチンが効きにくくなる可能性があります.今のところ,私たちの知っているウイルスの突然変異はワクチンの効果を低下させるようには見えません.ワクチンは幅広い中和抗体を産生します.つまり,ワクチンの対象となるエピトープ(抗原)は複数あるということです.しかし,ワクチンが効かなくなる突然変異が生じる可能性があります.RNAウイルスは,そうして生存しているのです.実際に突然変異を繰り返し,常に変化している.もしより迅速に感染を防止し,ワクチン接種をすることができれば,ウイルスが突然変異する可能性を低下させることができます.
◆どのぐらいワクチンの保護効果は続くのですか?
第3相試験の参加者は,どのくらいの期間,保護されるかを明らかにするため,2年間,経過観察されます.第1相試験に登録された人たちから現在のところ分かっていることは,現在もまだ免疫があること,すなわち,少なくとも6ヶ月間は,ウイルスに対する免疫が残っているということです.
Your COVID Vaccine Questions Answered
◆免疫疾患やがん,免疫抑制剤を服用している場合,ワクチンを接種してもいいですか?
ワクチン接種の禁忌には当たりません.分からないことは,ワクチンに対する反応がどの程度良いのかということです.残念ながら,臨床試験には免疫抑制状態の人は含まれていませんでした.他の人と同じように良い免疫反応が生じるのかが分かりません.
◆妊娠中や授乳中でもワクチンは受けられますか?
妊娠中や授乳中の女性も臨床試験に含まれませんでした.実際には妊娠した人はいましたが,彼女らは綿密に追跡されています.アメリカ産科婦人科学会,母体胎児医学学会,CDCは「妊娠中ないし授乳中の女性が,ワクチンを受けるべきではないとする理由はない」という声明を発表しました.個人的な話をすると,母乳育児中の娘と嫁はすでにワクチンを受けています.
◆アレルギーがある場合,ワクチンを受けてもいいのでしょうか?
「アレルギーがある」がどういう意味かによります.ピーナッツアレルギーの人もいるし,色素にアレルギーがある人もいます.何にアレルギーがあるかは人それぞれです.ワクチンの成分の一つにアレルギーがあるならば絶対に受け取るべきではありません.しかし蜂に刺された時に発疹が出るようなアレルギーでは問題はないでしょう.
◆重度のアレルギー反応の既往歴がある場合はどうすればいいですか?
今まで見てきたアナフィラキシー反応は非常にまれです.私が人々に伝えているのは,もしあなたが以前にワクチンに対して重度のアレルギー反応を起こした状況や,アナフィラキシー反応を起こした状況を経験しているのであれば,エピペン(アドレナリン自己注射薬)を持ち歩いているということです.このことを予防接種の際に伝える必要があります.そうすると,医療者らはあなたをより注意深く観察しますし,エピペンや他の対応の準備もできます.
◆COVID-19に既に感染した場合,ワクチンを受けてもいいですか?
ワクチンは受けられますし,受けることをお勧めします.でもワクチンの供給量には限りがあるので,COVID-19に感染したのであれば,必ずしもすぐにワクチンを接種する必要はありませんと伝えています.免疫系がまだ反応していないため90日くらい待つように言っています.しかし,ワクチンは接種してほしいと思っています.ワクチンの臨床試験において,過去に感染した人も含まれていて,その人達はワクチン接種によりさらに保護されたためです.
◆どのワクチンが他のワクチンよりも優れているのでしょうか?また,接種を切り替えることはできますか?
知り合いに言ったのですが.ペプシとコーラを比べてみると実際は違うブランドですが,本質的には非常に似ています.ワクチンもわずかな違いはありますが,効能や安全性は非常に似ています.そうは言っても,米国では,もしあなたが最初のワクチンとしてファイザー接種した場合,2回目のワクチンもファイザーで受けた方がいいと推奨しています.1回目のワクチンをモデルナで受けたなら,2回目のワクチンはモデルナで受けるべきです.興味深いことに,英国はそうではありません.英国は,どちらのワクチンを受けてもいいと言っています.私は正解が分かりません.しかし私は伝統主義者ですので,1回目がファイザーなら,2回目もファイザーにしたいと思います.
◆リスクを最小限にするために1回分しか接種しないということはできないのでしょうか?
英国とアメリカでは,2回接種の代わり1回接種にできないか議論しています.また2回目の接種を遅らせることも議論しています. その理由は,2回の接種で少数の人に行うより,1回の接種でより多くの人にワクチンを接種しようとしているためです.しかし正解は分かりません.1回ではリスクを最小化することはできないでしょう.実際には後に感染するリスクを高めるかもしれません.つまり2回接種の理由は,免疫反応を高めるためです.現時点での私のお勧めは,自分ではどうするかと言うと,2回接種します.自分が2回接種するのに,他に人に1回で良いと言うことは難しいことです.
◆1回目を摂取してからCOVID-19に感染してしまいました.2回目の接種は行った方が良いのでしょうか?
いい質問です.何人かの人から同じ質問がありました.私の同僚に土曜日に予防接種を受けた人がいたのですが,月曜から症状が出て,火曜日にCOVID-19と診断されました.つまり,彼はすでにCOVID-19に感染し,潜伏期であったということです.ワクチンはすぐには効かないのです.免疫が抗体を作り,あなたを保護するまでには時間が必要です.おそらく最初の接種から約2週間後,10日から14日には効果が出始めます.そして2回目の接種も必要です.しかし大切な問題は,2回目の接種をいつするかです.私のお勧めは,2回目の接種を,最初の接種後21から28日までに行うことです.もし可能ならもう少し遅らせたいと思うかもしれません.しかし,それ以外に2回目の接種を行わない理由はありません.
◆2回目の服用の予約を取り損ねてしまいました.いつまでに受ければ良いのでしょうか?
2回目の接種はできるだけ早く受けていただきたいです.英国では12週間遅らせるという話が出ています.12週間も遅らせることは可能なのかというと,あまりデータはないのですが,おそらく可能なのではないでしょうか.この考え方だと,ファイザーは2回めが21日後,モデルナは28日後となっていますが,免疫反応については分かっているので,さらに2週とか,4週,8週とか簡単に延ばせるのではないでしょうか?そういうわけで,英国は12週を行っています.
◆免疫力を高める自然な方法はありますか?
免疫力を高める自然な方法として,本当に良いものはないのです.でも健康になることで,免疫力を上げることになり,COVID-19感染後の重症化のリスクを減らすことができます.ですから,私のお勧めは,健康状態を全体に改善することです.血圧,体重,血糖をコントロールしましょう.これらをすべて実行すれば,あなたの全体的な寿命はより改善するでしょう.健康的な食事や運動,ライフスタイルを送ることで,免疫を改善することができます.
◆ウイルスの変異でワクチンの効果は落ちますか?
ウイルスの突然変異でワクチンが効きにくくなる可能性があります.今のところ,私たちの知っているウイルスの突然変異はワクチンの効果を低下させるようには見えません.ワクチンは幅広い中和抗体を産生します.つまり,ワクチンの対象となるエピトープ(抗原)は複数あるということです.しかし,ワクチンが効かなくなる突然変異が生じる可能性があります.RNAウイルスは,そうして生存しているのです.実際に突然変異を繰り返し,常に変化している.もしより迅速に感染を防止し,ワクチン接種をすることができれば,ウイルスが突然変異する可能性を低下させることができます.
◆どのぐらいワクチンの保護効果は続くのですか?
第3相試験の参加者は,どのくらいの期間,保護されるかを明らかにするため,2年間,経過観察されます.第1相試験に登録された人たちから現在のところ分かっていることは,現在もまだ免疫があること,すなわち,少なくとも6ヶ月間は,ウイルスに対する免疫が残っているということです.
Your COVID Vaccine Questions Answered