Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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アルツハイマー病に合併する白質病変は,脳血管へのアミロイド蓄積を示唆する初期徴候である

2023年10月21日 | 認知症
アルツハイマー病(AD)患者では,頭部MRIでしばしば大脳白質の高信号病変(WMH)を認め,経時的に増加します(図1).この所見を見るたび,ADの進行に伴う神経変性を反映するものなのか,全身性・動脈硬化性の血管病変を反映するものなのか(いわゆる混合型認知症なのか)気になっていました.


(AD患者における大脳白質高信号病変は経時的に増加する(上段→下段;同一症例).J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2005 Sep;76(9):1286-8より)

JAMA Neurol誌に,DIAN研究,ADNI研究,HABS研究から収集した常染色体優性および遅発性アルツハイマー病患者1141人の横断的/縦断的MRIデータ(3960回分)を用いたコホート研究が報告されました.

結果ですが,WMH容積の増加は,脳微小出血(cerebral microbleeds;CMB)を有する人で大きく,灰白質容積の減少と相関しており,高齢ほど大きくなりました.またWMH容積の増加は,PETで評価したアミロイド蓄積量が多い群で増加していました(図2).


(PETでアミロイド沈着の多い群で,高信号病変(赤)は多くなる)

年齢,灰白質容積,CMBの存在,およびPETによるアミロイド蓄積量の影響を除外した後でも,全身の血管病変とは関連しませんでした.また検討開始時にCMBを認めなかった高齢者を対象とした場合,WMH容積の大きな群では経過観察中のCMBの出現が多いことが分かりました(図3).


(WMH容積の大きな群では経過観察中のCMBの出現が多い)

以上より,ADにおけるWMH容積の増加は,灰白質減少,アミロイド蓄積量,脳微小出血,すなわち神経変性,脳実質と脳血管のアミロイドーシスと関連する一方,全身の血管病変とは関連しないことが示唆されました.つまりあの白質病変は基本的にADに伴う変化であり,CMBの出現前に認められる血管のアミロイド蓄積を示す初期徴候である可能性が示唆されました.
JAMA Neurol. Published online October 16, 2023.(doi.org/10.1001/jamaneurol.2023.3618
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