Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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多系統萎縮症におけるαシヌクレイン封入体の超微細構造は多彩で,ミクログリアにも認められる

2024年05月17日 | 脊髄小脳変性症
多系統萎縮症に特徴的な病理所見として,オリゴデンドロサイトにおけるαシヌクレイン陽性glial cytoplasmic inclusion(GCI)があります.他のαシヌクレイノパチーでは主として神経細胞にαシヌクレインが認められるので大きな相違があります.またαシヌクレインはもともと神経細胞に豊富に発現しているのに対し,オリゴデンドロサイトでは発現が低く,オリゴデンドロサイトに蓄積するαシヌクレインがどこから来たものなのか,その起源についてもよく分かっていません.今回,各細胞のαシヌクレイン封入体の超微細構造を明らかにした研究がスイスからBrain誌に報告されました.

この目的のために,6人の剖検脳の被殻と黒質を光学顕微鏡と電子顕微鏡で検索し,128個のGCIを同定しました.興味深いことに,オリゴデンドロサイト,神経細胞,dark cellに「3つの異なるタイプ」のαシヌクレイン封入体が存在しました(図).以下,細胞ごとに特徴を示します.

1)オリゴデンドロサイト:GCI様フィブリル(線維)が一貫してオートファジーのオルガネラであるリソソームやペルオキシソームと共局在する.ミトコンドリア異常はなし.→ αシヌクレインの蓄積にオートファジー経路が関与することを示唆する.
2)神経細胞:神経細胞細胞質封入体(NCI)は,線維状および膜状の構造を持ち,パーキンソン病の封入体に類似する.→ MSAとパーキンソン病の類似性が示唆される.
3)dark cell:electron dense(電子密度の高い)な細胞でdark cell と呼ぶことができる.この細胞はミクログリアと考えられる.異なるタイプがあり,GCI様フィブリルまたは非GCI様超微細構造が認められる.→ 「αシヌクレイン蓄積の様々な段階」を示している可能性がある.またGCI様フィブリルが認められたことは,この細胞がMSAにおける病的αシヌクレインの発生や伝播に重要な役割を果たしている可能性を示唆する.



いずれにせよMSAではαシヌクレイン病理は,複数の細胞の複雑な相互作用によって引き起こされる可能性があります.PSPにおけるタウに関しても同様の相互作用が提唱されています(Ann Neurol. 2022 Oct;92(4):637-649).行ったことはシンプルなのですが,徹底的に観察することの大切さを教えてくれる論文だと思いました.



Böing C, et al. Distinct ultrastructural phenotypes of glial and neuronal alpha-synuclein inclusions in multiple system atrophy. Brain. 2024 May 2:awae137.(doi.org/10.1093/brain/awae137)


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