邂逅は今年もこのスペースコラリオンで12月公演をしてくれた。そして、またこのささやかな小スペースだからこそ可能な芝居を見せてくれた。今の自分たちの身の丈に合う適切な作品を作ることって、難しいはずだ。だけど彼女たちはやすやすとそれ乗り越えてしまう。無理をしないし、妥協もしない。
コロナ禍だから、小さな芝居を低予算で行わなくてはならないのなら、それでいい。反対にそれだからこそ可能な挑戦がある、と思う . . . 本文を読む
想像した映画とはまるで違う作品で驚いた。ホラー映画のようなタッチで隣人の恐怖を単純に描く作品ではなかった。ましてや生真面目な社会派映画でもない。隣の女の騒音に苦しめられる主婦、というどこかで見たような三面記事のお話から想像するお話下世話なドラマではなく、思いもしない映画に仕上がっていた。観客に善悪の判断を委ねる展開にも、さらには、まさかのどんでん返しを自然に描き、そして、マスコミの異常さをさりげな . . . 本文を読む
昨年7月公開作品だ。コロナによる劇場封鎖明けの頃、ようやく封切られたアクション大作映画である。派手な娯楽映画で、映画館でこそ見るべき作品だったのかもしれない。実は公開直後に見に行こうかと思っていた。あの時は大スクリーンの映画館でこそ楽しむべき映画を見たい、と思ったからだ。スカッとするアクション映画を見て改めて映画の魅力を満喫したい、とも思った。でも、なんやかんやで、忙しくしているうちにすぐ小さなス . . . 本文を読む
今年の7月頃に公開されていた篠原哲雄監督の最新作である。映画館で見たいと思っていたがすぐに上映が終わっていたので見逃していたけど、早くも配信がスタートしていてさっそく見た。(先月配信がスタートしてすぐに見ているので、もう見てから3週間ぐらいになる。なぜ今頃書くのかというと、実はここに書くのを忘れていたのを思い出したからだ。言い訳になるけど、どうしてもTVで見た映画は膨大すぎてここに書く時間が作れな . . . 本文を読む
こんなやつどこにもいないだろう。いくらなんでも異常すぎる。大学入学後からすぐ就活を初めて、就活が人生の目的で、そのためだけに生きている大学3年生。入学以来ずっとビジネススーツで学校に来て、なんと寝巻もスーツだ。いつどんなタイミングで企業の人と会う機会があるかわからないから、らしい。(そんなのキャンパスではないと思うけど。)言葉も誰に対しても敬語を使う。普段から面接対応が可能なように、ということらし . . . 本文を読む
大阪のキタを舞台にしたリム・カーワイの最新作であり渾身の力作。この猥雑な空気。なにがなんだかわからないけど、彼らが右往左往するさまに導かれて見慣れた風景であるはずの大阪キタの風景が一転する。この映画を梅田で見て、映画が終わった後、映画に描かれた風景のなかを歩き、映画のなかに入り込む気分にさせられた。(たまたま用事があって、映画を見た後そのまま、夜になっていく中崎町から天六に向けて、映画の舞台になっ . . . 本文を読む
『うちに帰ろう』の広小路尚祈の新作だ。だいぶん甘い小説で少し残念だけど、読みやすくて、気持ちのいい作品だし、悪くはない。でも、彼が書かなくてもこんなタイプのハートウォーミングならどこにでみあるのではないか。呼応する8つのお話は、いずれも深夜を走る寝台特急「北斗星」の中でのささやかなドラマだ。特別なことはない。「袖触れ合うも他生の縁」というくらいのドラマしか起きない。あたりまえだ。これでも触れ合いす . . . 本文を読む
映画.comの「作品情報」冒頭にはこうある。「高校生の安藤純は、自分がゲイであることを周囲に隠して生きている。ある日、書店を訪れた彼は、クラスメイトの三浦紗枝がBL漫画を購入しているところに遭遇する。」わかりやすいボーイ・ミーツ・ガールものだ。ただしそこにゲイとかBLという部分がなければ。
BL好きのクラスメートの隠していたその性情を知り、彼女の秘密を心に秘め人に言うことなく、付き合うことになる . . . 本文を読む
いくらなんでもこの2冊を並べて論じることはなかろう、と自分でも思う。たまたま同じ日に連続して2作を読んだし、読みやすくて、どちらも一瞬で読み終えたけど、まるで違う小説だし、一緒に論じるような共通点はない。でも、なんとなく並べてしまった。
どちらも日常のスケッチだ。たわいもない風景がや光景が描かれる。ドラマチックな展開はない。タイトルにもあるけど、ただの日記だ。小手鞠るい『文豪中学生日記』はふつう . . . 本文を読む
久しぶりに「まさにこれぞ小劇場演劇だ!」という気分にさせられる芝居を見た。これは僕がよく知っている懐かしい世界だ。芝居にだけに可能な魅力をそこで満喫した。それはこの劇場自体の雰囲気や周囲のロケーションも含めての感想でもある。今回初めてこの「狂夏の市場」というスペースに来た。オープンから2年ほど、これまでも盛んに公演を行っているようだけど、コロナ禍ということもあり、自分の芝居を見ることへのモチベーシ . . . 本文を読む
劇団青い鳥の『ガルボの帽子』を20年ぶりで再演した作品。懐かしい。青い鳥の世界は、もしかしたらあの頃以上に今の時代に優しいかもしれない。演じる側の年齢が高くなり、老人を演じることがリアルになってきたからこそ、反対に老人のかわいらしさを描く作品はあみゅーずにとってとても自然なこととなる。
青い鳥作品にはファンタジーのなかに漂うリアルな感触にドキドキさせられてきたはずが、今見ると、すべて含めてなんだ . . . 本文を読む
祖父が死んだ。両親のいない兄弟は、なんとか自分たちで葬儀も済まし、今は残された祖父の家の整理をしている。遺品整理をするそんな3人のスケッチである。だが、この3人の関係性がなんだかよくわからない。ふたりは姉弟のようなのだが、もうひとりは彼らに敬語を使うから、従弟かなんかなのかと思ったけど、それなら祖父にはふたりの子供がいたことになるはず。彼らは両親は死んだというけど、2家族とも?って、それは不自然。 . . . 本文を読む
柚木麻子の力作『らんたん』を読了した。凄い女性だと思った。これはその前後に見た映画なのだが、ここに描かれる女性もまた、すごい女性だ。あり得ない行為に全精力を傾ける。やりすぎだろ、と思うけど、決してそれだけでは済まされない。どこまでやると納得がいくか、とかいうと、それってただの自己満足でしょ、ということになる。世の中のために自分のすべてを犠牲にしても戦わなくてはならない、というとかっこいいけど、彼女 . . . 本文を読む
この2日間、ほぼずっと家でこの小説を読んで過ごした。500ページに及ぶ長編であることもその理由としてあるのだけど、この大河ドラマの中で描かれるふたりの女性の姿に魅せられて、彼女たちのたどる明治、大正、昭和をともに生きる気分を共有したかったから、ほかのことはもうどうでもいい、と思ったのだ。だから、ゆっくり時間をかけて読むことにした。
おもしろすぎてページを繰る手を止められないのではない。すごいスピ . . . 本文を読む
ジェーン・カンピオンの久々の新作映画だ。なんと劇場公開から10日ほどでネットフリックスでの配信がスタートした。最近このパターンで「垂涎もの」の映画がどんどん公開される。うれしいような、もったいないような。でも、ついつい安易にTVで先に見てしまう。
1925年のモンタナを舞台にした映画がニュージーランド映画として作られる。フランスとベルギーの合作映画でフランス人の監督がアメリカの西部を舞台にした映 . . . 本文を読む