先月沖縄に行った時、町田そのこの『ぎょらん』をたまたま読んだ。読む本がなくて妻が持ってきた本を借りた。長い小説だったのに2日で読み終えた。暗いけど、とてもいい作品だった。以前に『52ヘルツのクジラたち』からの何冊かを読んでいたが、久しぶりに読んだ町田そのこ本が心に沁みた。
今回もまた彼女が借りてきたから読むことにした1冊である。5話からなる短編集だ。ひとつひとつが胸に痛い。傷ましい物語が、心に沁 . . . 本文を読む
岡山天音が主演する笑いに取り憑かれた男の狂気の物語。怪演である。こんな岡山天音は見たことがない。危ない男を取り憑かれたように演じ切る。役者の岡山が主人公ツチヤと一心同体になっている。まさにタイトル通り笑いのカイブツだ。ツチヤは笑いのことしか見えない。狂ったようにネタを書き続ける。ネタを考えると周りは見えなくなる。お笑い芸人の作家見習いになり才能を認められるが、周りが見えないし、周りに気を配れない。 . . . 本文を読む
昨年の『非常宣言』に続き新春1月公開のイ・ビョンホン主演パニック大作映画の第2弾。(もちろん、誰もそんなふうには言ってないけど)大災害により荒廃した韓国・ソウルを舞台に、崩落を免れたたったひとつのマンションが舞台となる。そこに集まった生存者たちの争いを描いたパニックスリラーである。デザスター映画というよりも人間ドラマに焦点を置く。マンションの代表に選ばれたイ・ビョンホンはみんなを守るために全力を尽 . . . 本文を読む
大好きな村山早紀の新刊が出ていたから、早速手にした。なんと今回はSFファンタジーである。どうかなぁ、と思いつつ読み始めたが、気がつくと完全に魅了されていた。猫から進化したネコビトのキャサリンと犬から進化したイヌビトのレイノルドが新しい本を作るためにふたりで作戦会議をするところから始まる。
犬、猫、少女の物語から始まった小さな物語は宇宙を舞台にして人類の歴史を語る壮大な物語を紡ぐ。全体 . . . 本文を読む
ダムの底に沈んだ村。そこで暮らしていた祖母や母。都は21歳。適応障害から引きこもりになり2ヶ月。1年間の予定だったイタリア留学から撤退して自宅に戻ってきた。恋人の住む長野の村が台風の大雨によって被災した。林檎園も壊滅して、自宅も水に浸かってしまう。都は彼の安否が気になって駆けつける。12日間。彼女は彼の自宅の片付けを手伝って過ごす。
元旦の能登地震から3日経ち、今日からは正月休みを終えて日常に戻 . . . 本文を読む
不思議な映画だ。何をしたいのがまるで伝わってこないから、見ていて困惑する。よくある少年の成長物語とはいささか違う趣きがある。これはジェームズ・グレイ監督の自伝的作品らしい。幼い頃の彼が見たこと、感じたことが描かれているのだろう。理不尽なことばかりの少年時代、誰よりも理不尽な自分自身のこと。それが描かれる。だが、その着地点が見えない。
1980年。12歳だった少年の日々。何不自由なく暮らしていた。 . . . 本文を読む
こんな小さな映画がある。低予算のインディーズ映画だが、とてもいい。2008年作品。2021年のケリー・ライカート特集で上映された1本。誰にも知られずひっそりと公開されすぐに埋もれて消えていく、そんな感じの映画なのに、アメリカでも日本でも大絶賛されているようだ。できることなら誰にも知らせず秘密にして置きたい映画だ。自分だけが知っている宝物。また今回もオレゴンである。彼女はアラスカに向かう途中ここで車 . . . 本文を読む
1845年、オレゴン州。一応は『ファースト・カウ』と同じで西部劇だ。今回もオレゴン。ちなみに『ウエンディ&ルーシー』もウエンディはオレゴンで迷子になった。ケリー・ランカートはこれで3作目になるが、最初の『オールド・ジョイ』の驚きを越えられない。(この後で『ウェンディ&ルーシー』は見た)移住の旅に出たテスロー夫妻ら3家族は、道を熟知しているという男スティーブン・ミークにガイドを依頼する。だが . . . 本文を読む
これはホ・ジノ監督の短編映画である。昨年日本で劇場公開されていたが、30分の短編なので見に行くのを躊躇した。2017年作品だが未公開だった作品だ。近年の彼の映画は明らかに迷走している。もうあの2本でやりたいことをやり遂げてしまった後のような感じ。彼は『八月のクリスマス』と『春の日は過ぎゆく』という2本の最高の映画を作った。映画史に残る傑作である。だがその後は残念だがあの2本を超える映画は作れていな . . . 本文を読む
ようやく見ることができた。ただ期待があまりに大き過ぎたからか、少しガッカリする。確かにカウリスマキらしい映画だが、それだけ。セルフリメイクを見せられた気分だ。新しい発見はない。ヘルシンキの町で出会った男女が不器用な恋をする。ラジオからはロシアによるウクライナ戦争の情報が流れる中、小さな恋はもどかしいくらいにゆっくり進展していく。
理不尽な理由から仕事をクビになった女と、真面目だが . . . 本文を読む
今年に入ってまだ三日目だが、なぜか不思議な小説や映画ばかりを見ている。まぁ、「ばかり」と言ってもまだ3本目だが。いずれもある種のジャンルものなのだが、微妙におかしい。定型には収まらない。確信犯的にではなく、恣意的に、である。なんだか何も考えずにそうなっているような自然さなのである。偶然そうなっているだけだが、それがもしかして今年を象徴することだったりして。
さて、今はまずこの小説 . . . 本文を読む
なんと320冊を読んだ。ほぼ毎日1冊のペースである。かなり長い作品もあるにも関わらず。よくやるわ、と自分でも思う。あまりたくさん読むと読んだ鼻先から忘れてしまうから困った。今年はもう少し減らしていこうと思う。200冊くらいがいいかなと思っている。これはいつものお遊びベストテンである。
1位 波あとが白く輝いている(蒼沼洋人)
2位 ヨルノヒカリ,トワイライライト . . . 本文を読む
『渇きと偽り』のロバート・コノリー監督の新作だから見に行ったのだが、まるで乗れなかった。真面目な映画だが、退屈。何を描きたかったのか、よくわからない。環境破壊から海を守ること? 海に育てられた少女の成長物語? 母と娘の絆? まぁいいけど、あまり胸に沁みてこない。あまりの定番展開。
オーストラリア映画である。めったに日本では公開されない。ハリウッドで活躍するエリック・バナが出ている . . . 本文を読む
ギデンズ・コーのデビュー作『あの頃、君を追いかけた』は青春恋愛映画の傑作だった。だが第二作の『怪怪怪怪怪!』は一転してホラー映画。だけど普通のホラーではない。青春映画であり、なんと怪物との友情物語。訳がわからん話だ。そして最新作『赤い糸 輪廻のひみつ』が現在劇場で公開中だが、あれはファンタジーみたいだ。(まだ見ていない)あらゆるジャンルに挑戦するというより、なんか何も考えていないみたいな自由さが彼 . . . 本文を読む
こんな不思議な小説は滅多にないだろう。普通の青春小説のフリをしているし、ジャケットはアニメ朝のイラストだし、軽いタッチのYAタイトルだろうと思っていた。だが、タイトルになっている『私が鳥のときは』を読み終えた時、「えっ!」と思う。こんなところで終わってしまうの?と。いろんな意味で中途半端なところでいきなり幕を閉じる。まるで視聴率低下から突然打ち切りになっていくドラマみたいな感じ。理不尽な、納得し難 . . . 本文を読む