監督・長井龍雪、脚本家・岡田麿里コンビによる新作。岡田麿里監督作品とは一味も二味も違う世界がここにはある。思った以上に小さな映画になっている。小さいことがよくないというのではない。小さくまとまってしまったのが残念なのだ。3人の幼なじみの友情物語でいいけど、それが僕たち観客の胸にどれだけ届くかである。先月見た『君の色』も小さな映画だった。アニメはなんでも出来るからスケールの大きな設定と世界観を提示し . . . 本文を読む
シリーズ第3弾になる。(僕がこのシリーズを読むのは初めてだけど)描かれるものは喫茶ドードーにやって来て心休める人たちの姿だ。彼女たちはここで一休みして再び大変な毎日に立ち向かう。ここにくれば美味しいコーヒーや不思議なデザート(食事も)がある。あなたの悩みに効くメニューに励まされ、戦場(職場だけど)に戻る。働くことが生きること。仕事は楽しいけど困難なことだらけ。いつも倒れそうになり傷だらけ。
たっ . . . 本文を読む
「今年、カンガルー年にピッタリな社会派カンガルー喜劇」とボケをかます魔人ハンターミツルギ率いる超人予備校久々の新作。キャッチフレーズは「人生をやり直す」。仕事に疲れた人たちがカンポケ社を訪れる。ここはもう一度最初から人生をやり直してリフレッシュするための施設。そこにやって来た人びと。彼らのそれぞれのドラマが語られる。まず、母カンガルーのポケットの中に入って胎児からやり直し。そんなこと可能なのか、な . . . 本文を読む
タイトルの猛獣は別荘地に現れて男女ふたりを殺した熊のことではない。殺された不倫カップルのことだろう。さらにはこのお話の主人公である管理会社のふたりの男女が関わる6組の夫婦かもしれない。死んだふたりは「姦通」していた、という表現をした手紙が管理人のもとに届く。差出人はわからない。
この別荘地で暮らす彼らの日常を丹念に描く。表面的にはもう何も起きない。冒頭のところでふたりを殺した熊も殺されている。事 . . . 本文を読む
上田誠が率いる劇団「ヨーロッパ企画」が手がけたオリジナル長編映画の第2作。監督は前作に引き続き山口淳太。冬の京都・貴船を舞台にして、何度となく繰り返す2分間のタイムループから抜け出せなくなった人々の混乱を描いた群像コメディ。いかにもヨーロッパ企画、という感じの映画だ。なんと20回近くも同じ時間が繰り返される。このしつこさは感嘆に値する。これは小さな映画だけど、きちんと作られてあり、楽しい。ただ映画 . . . 本文を読む
還暦女子が主人公みたいで、村山由佳が激推しらしいから、なんとなく読むことにした。還暦過ぎの男子としてはいささか気になったので。
ただこのタイトルはそそられない。それどころか恥ずかしい。還暦赤パン(パンって、🍞ではなく、パンツ)っていう発想にはついていけない。まぁ軽い読み物だろうから、暇つぶしを兼ねて読む。つまらないなら途中で止めればいい。(まぁ読み出したら、辞めれない . . . 本文を読む
白石和彌監督が渾身に挑むNetflixオリジナル映画。(ドラマだけど) 80年代の女子プロレス団体を描く大河ドラマ。1時間から1時間半というボリュームで全体は5話からなる。
ビューティーペアやクラッシュギャルズというアイドルスター。彼女たちの時代を描きながら、その影を担う悪役レスラーとして戦うひとりの女の子の覚悟を描く。ダンプ松本(ゆりやんレトリイヴァ)を主人公にして、彼女だけでなく . . . 本文を読む
『ブルーピリオド』の萩原健太郎監督が手掛ける新作だからそれだけでも期待は大。原作はもちろん辻村深月。前作に続いて彼はお話を広げないのがいい。ピンポイントで丁寧に深める。前回は「受験」だったが、今回は「恋愛」。もちろんそこまで簡単に割り切っているわけではないけど、そんな2文字で説明できる問題を突き詰める。原作は2章構成で、彼の話と彼女の話に分断されているけど、映画は基本彼の話に集約される。萩原監督ら . . . 本文を読む
今年どんどん新作が公開されていく絶好調の黒沢清監督作品。今回は菅田将暉を主演に迎えて挑むサスペンススリラー。ただ前回の『蛇の道』が残念な一作だっただけに期待と不安を抱いて見る。評判はいいみたいだし、今年のアカデミー賞日本代表にも選ばれたらしい。だけど、これは完敗である。今回もまた、まるで不完全燃焼。一体なんだったのだろうか。これは。前半部分は転売ヤーの話で、何があるというわけではないけど異様な緊張 . . . 本文を読む
下町を舞台にした人情劇かと思って読み始めたら、なんだかよくわからないサイキックもので、確かにタイトル通りのお話だよな、と納得する。中学1年の女の子と近所に住む友おじさん(実の叔父です、と書こうとしたけど、最初の部分を見返してみるとただの近所の知り合いのおじさんだった)が、不思議な出来事に遭遇してそれと向き合う。彼女には霊感があり、見えないものが見えてしまう。母と離婚した父が魔性の若いきれいすぎる女 . . . 本文を読む
相変わらずかわいい小説を書くのが今の中村航だ。今回は1984年末4月の男女と2024年4月の男女のお話。この別々の時間を過ごす別々のふたりたちが文通とラジオ番組を通して通じていく、という話だ。ふたつの時間が交互に描かれていくが、混じり合うことはない。4月の1週から始まって2週目に続く。穏やかに時間は過ぎていく。
そして運命の8月18日を迎える。と言っても、たいしたことではない。ラジオ番組を通して . . . 本文を読む
『ある男』の石川慶監督がAmazonで撮った最新作である。劇場公開ではなく配信公開された。小さな作品だか、それなりに大予算をかけたSF映画だ。2200年、人類は環境汚染が進んで人が住めなくなった地球を離れてスペースコロニーで暮らしている。ある夫婦のお話。
密閉空間を舞台にして、登場人物は(ほぼ)たったふたりのサイコサスペンス映画。伊藤英明と新木優子。彼は死んだ妻を模したアンドロイドと . . . 本文を読む
2日振りに図書館に本を返しに行きがてら、予約の本を取りに行くついでに新刊コーナーを見ると、なんと谷口雅美さんの新刊が入っているではないか! これはうれしいとさっそく手にしてカウンターに行く。
『私立五芒高校 恋する幽霊部員たち』の谷口さんである。これを読まないではいられない。自宅に戻って読みかけの本を片付けて、待機中の10冊を横にして、まずこれを読み始める。カレーの話なので、僕も晩御 . . . 本文を読む
今年快進撃を続ける山下敦弘監督によるミステリー映画である。彼がミステリーなんて初めてではないか。しかもホラータッチのアクション映画である。そんなジャンルも初挑戦ではないか。まるで山下映画らしくないけど、どうしてこれをやることにしたのだろうか。本人の希望なのか、たまたまオファーがあったのか。それを引き受けただけか? 慣れないことをするから失敗したのか? いや、これは確信犯なのか。さまざまな憶測をして . . . 本文を読む
これが最後の仕事になる、という一文をスタート地点として書かれた短編集。24人の作家による。彼らがどんな仕事を取り上げて小説にするか、たった6ページ程度という制約をどう生かすか、興味の焦点はそこにある、わけではない。
実はこのタイトルに惹かれたのだ。僕も今、これが最後の仕事になる、と思いながら、この1年を送っているから、タイトルにドキッとした。今の自分にピッタリの本ではないか、と思い、そこに(大袈 . . . 本文を読む