なんと5年ぶりの大阪公演となる。(3年前には名古屋公演のライブ・ビューイングがここウイングフィールドであったけど、あれからでも久々)今回のジャブジャブの新作はなんと川上音二郎と貞奴の評伝劇。しかも劇中劇としてシェイクスピアの『オセロ』を翻案して川上が作った『正劇オセロ』をダイジェスト版として上演する。だから一粒で2度美味しい。それを全体の上演時間は1時間10分を切るというランタイムで見せ切る大河ド . . . 本文を読む
久しぶりに劇団ひまわりの芝居を見る。もちろん脚色、演出は大塚雅史。(台本はプロデューサーの砂岡誠)大塚先生の指導のもと、さまざまな世代の子どもたちが舞台上を元気いっぱい駆け抜けていく。ミュージカルとタイトルには冠される。だから全編歌と踊りが満載。まだ幼児から高校生(サポートの大人含む)まで総勢71名(ダブルキャストだからこのArt班は56名)に及ぶキャストが舞台上に立つ。壮観である。これだけのキャ . . . 本文を読む
先日『@サクラ』を読んでいるからこちらもさっそく読むことにした。もうネタバレだけど、そんなことは承知の上である。というか、既にサクラを読んでいるということを前提にして読むことが作者の今回の仕掛けであり、それが楽しい。これはそんな楽しみ方も可能な(それを踏まえての)小説なのである。
だけどこの順番でよかった。こちらは『@サクラ』に比べると緩い。スマホを使った作品というパッケージングがより全面に出る . . . 本文を読む
『佐々木イン、マイマイン』の内山拓也監督の本格商業映画デビュー作。ということだけど、こんな商業映画はない。若い内山監督はわかりやすい描き方はしない。もちろん娯楽映画ではない。ハードなドラマで情け容赦ない。磯村勇斗が主演してスターが出ているから一般劇場でロードショーされているけど、これは安易な妥協がないから一般受けはしないだろう。キツい映画でなんだかわからないという感想が続出しても仕方ない。だけどこ . . . 本文を読む
『ノベンバー』のライナル・サイネット監督最新作ということで見ることにした。予告編を見た時は「なんなんだこれは、」と唖然としたけど、本編も予想以上に無茶苦茶な映画だった。そう言えば『ノベンバー』もヘンテコな映画だったけど、あれはなんとかアート映画だったからまだ騙されていた。だけど今回はおバカな青春映画で、カンフーアクションである。エンタメのはず。なのに、これって何? 訳がわからん娯楽映画である。たぶ . . . 本文を読む
35歳、非正規の図書館員の女性が主人公。彼女の日々が綴られる。タイトルにある「ちやっけ」は犬の名前。髙森美由紀の新刊は移動図書館の話だが、利用者と司書の交流を描くハートウォーミングではない。いや体勢はそうなのだが、作品自体はそうなりきれていないのだ。そういうところが彼女の小説らしいところだ。いつもそうだが,安定が悪い、だから話になかなか乗り切れない。それは下手だから、で一蹴することも可能だけど、そ . . . 本文を読む
近未来の東京。高校生たちの日常の日々のスケッチを淡々と描く青春映画。これは一応SF映画ということになるのか。だけどここには未来っぽい描写は皆無だ。だからといってよくある青春映画のキラキラも皆無。もちろん高校生たちによる学園ドラマだけど漫画が原作だったり荒唐無稽なお話でもない。スターが出るアイドル映画でもない。無名の若い子たちが演じる。監督はこれが劇場用長編劇映画デビューとなる空音央。サンダンスイン . . . 本文を読む
窪美澄だけど、これはまだ読んでなかった。今回文庫本になったから読むことにした。読んでいて気分が悪くなる。こんなにも不快にさせられる胸糞悪い小説はない。父親による虐待が描かれる。情け容赦ない暴力に曝される幼い兄と妹、そして母親。誰にも言えない。知られたくない。心を閉ざし生きる。DVを描く小説は多々あるが、これはあまりに生々しく強烈で吐き気がする。第1章の100ページは悪夢だった。
なんとかそこを切 . . . 本文を読む
久しぶりの神戸遥真。相変わらずかわいい小説か、と思ったけど、違った。これはかなりビターな内容だと思う。表のストーリーではなくその背景にあるテーマが重いのだ。そこはさらりとは描けないという作者の覚悟がある。
オンラインで知り合ったふたりの話をそれぞれのサイドから描く連作小説。もちろん2冊は独立した作品である。だからこの一冊でちゃんと完結する。だけど、それと同時に2冊セットでもひとつの作品であるとも . . . 本文を読む
これは『エクス・マキナ』や『MEN 同じ顔の男たち』のアレックス・ガーランドが監督・脚本したK24による超大作映画である。だけどよくある娯楽大作ではない。戦争映画だけど、派手な戦闘シーンからは遠く離れた映画である。だけどこの不気味さは悪夢としか言いようがない。荒唐無稽な話ではない。リアル過ぎて怖いのだ。こんな未来がある。確実にこの先すぐそこまで来ている。これは近未来のアメリカの現実かもしれない。い . . . 本文を読む
今回の君嶋彼方は高校生の日常スケッチである。「大人になれば忘れてしまう、全力でもがいていたあの日のこと」と本の帯にある。切ない6つの短編。
こんなにもドラマチック「ではない」日常スケッチなのに、こんなに胸に痛い。そして優しい。それぞれが傷みを秘めて生きている。触れられたら泣きそうになる想いを秘めて心静かにひっそりと教室の片隅で佇んでいる。
放課後の教室でひとり本を読む。幼なじみ . . . 本文を読む
『ドライブ・マイ・カー』の脚本家・大江崇允というのが名刺代わりになるのだろうが、僕は昔、彼の芝居をよく見ていたからその名前はなんだか懐かしい。旧劇団スカイフィッシュだったと思う。彼は映画監督になったのか、と感慨深い。演劇作品だった『適切な距離』と同タイトルの作品を映画としてリメイクしたことは知っていたけど、残念だが見ていない。もちろん『ドライブマイカー』は見ているけど、彼の監督作品はこれが初めてだ . . . 本文を読む
こんな小説がある。まさかのおしゃべりだけで続く、それだけで終わる。無意味すぎる会話劇。4人の中学生がたわいないことをダラダラしゃべっているのを生配信。ポッドキャストという手段で世界とつながる。全校生徒がたった4人しかいない中学で暮らす彼女たち。(生徒はみんな女の子)そんな配信を毎回チェックして保存する引きこもりの男の子。配信される彼女たちの放送とそれを聞いた彼の感想が交互に描かれていく。そこにはス . . . 本文を読む
こういうタイプの少しビターなファンタジー映画が今の時代の気分なのだろうか。示し合わせたわけではなくたまたまだろうけど、Amazonオリジナル映画の日本映画『不都合な記憶』に続いてNetflix映画であるこの韓国映画もまた現実の死を受け止められない人たちが人工知能AI技術による擬似現実の中で生きる日々を描く。
こちらはリアルな存在ではなくスマホを通してつながる。死者の生きているその後の日々。あ . . . 本文を読む
原田ひ香さんが帯でこの作品が「寺地さんの作品の中で一番好きです」と言っていた。僕より一足早くこれを読んだ妻も絶賛していたから、少しドキドキして読み始める。まわりの評価はあまり気にしないけど、それでガッカリするのは少し怖い。
もちろん期待は外れない。だけどこれが一番じゃない。「彼女のたくさんの小説にはこれくらい素敵な作品は山盛りあるよ、」と思うけどやはりこれはかなり好き。よかった。 . . . 本文を読む