『旅行者用折り畳み品』
レディ・メイド:アンダーウッド社タイプライターのカバー
カバーは2次的な物であり、無くても構わないが、あえて本体を保護・遮蔽するための付属品である。
これを主題として提示するのはなぜか。
本体を包み込むものとしてのカバーが、包み込んだ時と同様な形である場合、中には当然本体(タイプライター)があると思うに違いない。
確信と錯覚、確信は過去のデータに基づく確率の高い決定であり、錯覚もまた過去のデータに基づく確率の高い決定である。つまり確信と錯覚は同じであり、結果において崩壊する可能性のある観念である。
「ある」か「ない」か、それが問題である。
『旅行者用折り畳み品』である理由、提示したものは折り畳んではない。(では、折り畳めるのか)携帯には便利である、しかし、本体のタイプライターがなければ意味がない。旅行者は携帯という身軽さを実施するためにカバーを折り畳んで本体を持たないという意味だろうか。
あたかも有るような見せかけをもつ空疎な旅人(旅行者)は存在者であるわたし達を指しているのではないか。不思議に軽く奇妙に重い提示である。
写真は『DUCHAMP』(ジャニス・ミンク) www.taschen.com