続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

デュシャン『旅行者用折り畳み品』

2020-04-15 07:03:49 | 美術ノート

   『旅行者用折り畳み品』
 レディ・メイド:アンダーウッド社タイプライターのカバー

 カバーは2次的な物であり、無くても構わないが、あえて本体を保護・遮蔽するための付属品である。
 これを主題として提示するのはなぜか。
 本体を包み込むものとしてのカバーが、包み込んだ時と同様な形である場合、中には当然本体(タイプライター)があると思うに違いない。

 確信と錯覚、確信は過去のデータに基づく確率の高い決定であり、錯覚もまた過去のデータに基づく確率の高い決定である。つまり確信と錯覚は同じであり、結果において崩壊する可能性のある観念である。

「ある」か「ない」か、それが問題である。
『旅行者用折り畳み品』である理由、提示したものは折り畳んではない。(では、折り畳めるのか)携帯には便利である、しかし、本体のタイプライターがなければ意味がない。旅行者は携帯という身軽さを実施するためにカバーを折り畳んで本体を持たないという意味だろうか。
 あたかも有るような見せかけをもつ空疎な旅人(旅行者)は存在者であるわたし達を指しているのではないか。不思議に軽く奇妙に重い提示である。


 写真は『DUCHAMP』(ジャニス・ミンク) www.taschen.com


『忘れえぬ人々』129.

2020-04-15 06:48:05 | 国木田独歩

露店が並んで立食いの客を待っている。

 露店はロ・テンと読んで、路、展。
 並んではヘイと読んで、蔽。
 立食いはリツ・ジキと読んで、律、自記。
 客はカクと読んで、覚。
 待っているはタイと読んで、諦。

☆路(物事の筋道)を展(ひらく)。
 蔽(見えないようにする)律である。
 自記で覚(さとる)のは、諦(真理)である。


『城』3399。

2020-04-15 06:35:00 | カフカ覚書

「あの人、もうあなたを好きでなくなったらしいのね」
 ペーピは、コーヒーとケーキを運んできながら、そうたずねた。けれども、その訊きかたは、もとのような意地悪いものではなく、いかにもしんみりと悲しげで、自分はその後世間の意地悪さを知ったが、それにくらべたら、自分の意地悪さなんかものの数ではなく、まるで無意味であると言わんばかりであった。


☆「あなたをよく思っていないらしいわ」と、旅行鞄と骨とを運びながらペーピがたずねた。しかし、それは悪意ではなく悲しみに対処するものだった。かれこれする間に世間の悪意を知ったけれどそれに対して自分の悪意など馬鹿げているくらいである。