命あるものにはいずれ終わりが来る。油田も同じで、メキシコ最大で、サウジアラビアのGhawar油田に次いで世界第2のCantarell油田の寿命があと8年という記事をWSJ紙(4月5日)電子版トップでDavid Luhnow記者が紹介している。
世界油田トップ15が占める原油生産全体に占めるシエアが、2007年の20.5%から08年20.3%、09年19.5%、2010年18.8%へ減少すると予測されている。世界最大のGhawar油田も、2010年予測で現在の560万バレル/日から500万バレル/日へ11%減少する。
ところが、Cantarel油田は176万バレル/日から123万バレル/日へ30%減る。ひときわ減り方が目立つ。しかし、これといった打開策もない。原油収入が国家予算の40%強を占めるメキシコ財政は早晩窮地に追い込まれるだろうとLuhnow記者は指摘している。
世界の原油生産は、2007年の8,800万バレル/日が、08年8,990万、09年9,260万、2010年9,530万バレル/日と予測されているが、小型の油田の開発での増加が支える形となっている。大油田は狭い範囲で原油が噴出する。大規模油田は、水分率が1%以下であるが、小型は5%とか7%と高い。そのため水と油の分離に膨大な費用がかかるそうだ。
Cantarell油田は、1971年、メキシコ湾の底引き漁船の網に油が大量に付着していたことがきっかけで発見された。大油田に共通した特徴は、6,500万年前の地殻大異変でディノザウルスが絶滅した時代と重なる。①狭い範囲に集中、②海底から浅い場所、③油層が厚い。
油田は巨大な風船の原理と同じで、時間の経過と共に油層表面の張りがなくなり、石油をくみ上げていく過程で風船全体が縮んでくるという。これを読みながら、人間様の世界で見聞きし、自ら体験する老化現象と酷似していると実感した。
4月6日のNY原油先物市場は、英人15人質解放のニュースにも格段の反応を示さず、バレル64ドル台で頑強に相場を維持した。米国のガソリン相場が堅調で、この先ドライブシーズンを控えて、ガソリン高が原油相場を下支えするとの目先の需給要因に加えて、油田の構造的問題が底流にあることと石油資源が欧米の手を離れた、開発途上国での開発にウエートが移り、政治的に相場がかく乱される怖れを相場自身が嗅ぎ取っているようだ。
日本では、現在一部のタクシー料金に値上げの動きが見られるが、ガソリン相場は値上がりムードが陰を潜めている。原油供給不足懸念に関していえば、日本に住んでいる限り、話題にもされず、全く実感に乏しい。「春の海、ひねもすのたりのたりかな」である。
日本は資源のほぼ100%が輸入依存である。資源確保に向けた国家戦略が欠落している。(了)
江嵜企画代表・Ken
世界油田トップ15が占める原油生産全体に占めるシエアが、2007年の20.5%から08年20.3%、09年19.5%、2010年18.8%へ減少すると予測されている。世界最大のGhawar油田も、2010年予測で現在の560万バレル/日から500万バレル/日へ11%減少する。
ところが、Cantarel油田は176万バレル/日から123万バレル/日へ30%減る。ひときわ減り方が目立つ。しかし、これといった打開策もない。原油収入が国家予算の40%強を占めるメキシコ財政は早晩窮地に追い込まれるだろうとLuhnow記者は指摘している。
世界の原油生産は、2007年の8,800万バレル/日が、08年8,990万、09年9,260万、2010年9,530万バレル/日と予測されているが、小型の油田の開発での増加が支える形となっている。大油田は狭い範囲で原油が噴出する。大規模油田は、水分率が1%以下であるが、小型は5%とか7%と高い。そのため水と油の分離に膨大な費用がかかるそうだ。
Cantarell油田は、1971年、メキシコ湾の底引き漁船の網に油が大量に付着していたことがきっかけで発見された。大油田に共通した特徴は、6,500万年前の地殻大異変でディノザウルスが絶滅した時代と重なる。①狭い範囲に集中、②海底から浅い場所、③油層が厚い。
油田は巨大な風船の原理と同じで、時間の経過と共に油層表面の張りがなくなり、石油をくみ上げていく過程で風船全体が縮んでくるという。これを読みながら、人間様の世界で見聞きし、自ら体験する老化現象と酷似していると実感した。
4月6日のNY原油先物市場は、英人15人質解放のニュースにも格段の反応を示さず、バレル64ドル台で頑強に相場を維持した。米国のガソリン相場が堅調で、この先ドライブシーズンを控えて、ガソリン高が原油相場を下支えするとの目先の需給要因に加えて、油田の構造的問題が底流にあることと石油資源が欧米の手を離れた、開発途上国での開発にウエートが移り、政治的に相場がかく乱される怖れを相場自身が嗅ぎ取っているようだ。
日本では、現在一部のタクシー料金に値上げの動きが見られるが、ガソリン相場は値上がりムードが陰を潜めている。原油供給不足懸念に関していえば、日本に住んでいる限り、話題にもされず、全く実感に乏しい。「春の海、ひねもすのたりのたりかな」である。
日本は資源のほぼ100%が輸入依存である。資源確保に向けた国家戦略が欠落している。(了)
江嵜企画代表・Ken