自国通貨の値うちが上がって心配する国が世界のなかでただひとつあります。それはどこの国ですか?世界中の国で自国通貨が暴落して悩んでいる国がいかに多いか。身近な例のひとつにお隣の韓国がある。韓国ウオンは昨年一年で36%、今年に入ってすでに16%値下がりした。
通貨の値打ちが下がるとモノの値段が上がる。モノの値段が上がることをインフレという。いくらお金を出しても買いたいものが買えない。これほど悲惨なことはない。天井知らずのインフレに直面したドイツが、リヤカーにマルク紙幣を一杯積んで町をゆく写真がむかし教科書に出ていた。
日本は戦後、一貫して、円高は悪、円安は善と刷りこまれてきた。一端刷りこまれるとなかなか抜けない。それはもはや病気である。自分が病気であると気がつかないこと自体が病気である。病気にも関わらず病気でないと思い込んでいる患者ほど厄介な存在はないだろう。
中国の温家宝首相は、13日、全国人民代表大会(全人代)のあとの記者会見で様々な話をした。それが今朝のWSJ紙に、「温、米国債懸念」のタイトルで詳しく紹介されていた。
WSJ紙は、第一に、中国は、4兆元(約52兆円)規模の景気対策を実施するが、必要とあれば追加の景気刺激策により年8%成長を達成する用意があると語ったと書いている。2番目に、米国は世界最大の経済大国を維持しているが、オバマ米大統領の経済政策の成果を注視していると書いた。
3番目に、「中国は巨額の資金を米国に貸している。それゆえに、中国の資産の安全について懸念している。この問題については、実際問題として、自分はいささか心配している」と語ったと書いた。そのあとに、出席者の質問に対して、温家宝首相は、「信頼の堅持、約束の遵守、中国の資産の保証を米国に求める」と答えたとWSJ紙は紹介している。
さらに温家宝首相は、中国は外貨建て資産を、安全性、流動性、収益性の観点から運用していると語り、そのあとで「中国は国益を最優先する。それと同時に、世界の金融の安定がある。二つはお互い影響し合うから、国際的金融の安定を真剣に考えている。」と語ったとWSJ紙記者は書いた。
クリントン米国務長官が、北京訪問の際、中国が米国債の保有継続を公の場で中国政府に求めたと報じられた。中国が米国債を売ればその気配だけで米ドルは暴落する。自国通貨が売られる悲惨さを日本人は体感していない。日本は資源の99%を海外から輸入している。円高は国益である。
NY外国為替市場は。3月13日、ドルが対ユーロで売られ、1ユーロ=1.29ドル台で取引された。ドルの対ユーロでの値下がりには、温家宝首相の米国債に対する懸念発言が指摘できる。ただ、ドルは対円では買われ、1ドル=98円台で取引された。円が売られた背景にスイスが政策金利を0.5から0.25%へ下げたあと日銀も右へならえして利下げするとの思惑が働いたからだ。
スイス中央銀行が一昨日、利下げを発表した意味をよくよく噛みしめたい。ラトビアやハンガリーが国家破たんの危機に見舞われている。なぜだろうか。金利の安いスイスフランを借りて住宅ローンを組み、家を建てさせた。欧州の銀行が好調なときは良かった。本丸に火がついた西欧の銀行が東欧から資金を一斉に引き上げた。引き金を引いたのが、リーマンブラザーズの破たんである。
温家宝首相が本心から心配しているのは米国債の暴落であろう。米国はG20の議題にGDPの2%の財政出動を打診している。フランス、ドイツはこれに早くも反発していると今朝の日本新聞に出ていた。特にドイツのメルケル首相にはインフレの恐怖を叩き込まれているに違いない。
ニューズウイーク日本版最新号は、「この10年間の金融史が書かれるときには、90年代のITバブル、00年の住宅バブルと並んで08年後半の尋常でない米債券バブル」と書かれるかもしれないとウォーレン・バフエット氏のことばを紹介している。
劇薬には必ず副作用が伴う。なりふり構わずペーパーマネーを刷り続ける米国。インフレとは通貨の値うちが下落することである。米国債がいま異常に売れているそうだ。過ぎたればなお及ばざりしとは論語の言葉である。温家宝首相は、最近の米国に恐怖心を抱き始めたに違いない。(了)
通貨の値打ちが下がるとモノの値段が上がる。モノの値段が上がることをインフレという。いくらお金を出しても買いたいものが買えない。これほど悲惨なことはない。天井知らずのインフレに直面したドイツが、リヤカーにマルク紙幣を一杯積んで町をゆく写真がむかし教科書に出ていた。
日本は戦後、一貫して、円高は悪、円安は善と刷りこまれてきた。一端刷りこまれるとなかなか抜けない。それはもはや病気である。自分が病気であると気がつかないこと自体が病気である。病気にも関わらず病気でないと思い込んでいる患者ほど厄介な存在はないだろう。
中国の温家宝首相は、13日、全国人民代表大会(全人代)のあとの記者会見で様々な話をした。それが今朝のWSJ紙に、「温、米国債懸念」のタイトルで詳しく紹介されていた。
WSJ紙は、第一に、中国は、4兆元(約52兆円)規模の景気対策を実施するが、必要とあれば追加の景気刺激策により年8%成長を達成する用意があると語ったと書いている。2番目に、米国は世界最大の経済大国を維持しているが、オバマ米大統領の経済政策の成果を注視していると書いた。
3番目に、「中国は巨額の資金を米国に貸している。それゆえに、中国の資産の安全について懸念している。この問題については、実際問題として、自分はいささか心配している」と語ったと書いた。そのあとに、出席者の質問に対して、温家宝首相は、「信頼の堅持、約束の遵守、中国の資産の保証を米国に求める」と答えたとWSJ紙は紹介している。
さらに温家宝首相は、中国は外貨建て資産を、安全性、流動性、収益性の観点から運用していると語り、そのあとで「中国は国益を最優先する。それと同時に、世界の金融の安定がある。二つはお互い影響し合うから、国際的金融の安定を真剣に考えている。」と語ったとWSJ紙記者は書いた。
クリントン米国務長官が、北京訪問の際、中国が米国債の保有継続を公の場で中国政府に求めたと報じられた。中国が米国債を売ればその気配だけで米ドルは暴落する。自国通貨が売られる悲惨さを日本人は体感していない。日本は資源の99%を海外から輸入している。円高は国益である。
NY外国為替市場は。3月13日、ドルが対ユーロで売られ、1ユーロ=1.29ドル台で取引された。ドルの対ユーロでの値下がりには、温家宝首相の米国債に対する懸念発言が指摘できる。ただ、ドルは対円では買われ、1ドル=98円台で取引された。円が売られた背景にスイスが政策金利を0.5から0.25%へ下げたあと日銀も右へならえして利下げするとの思惑が働いたからだ。
スイス中央銀行が一昨日、利下げを発表した意味をよくよく噛みしめたい。ラトビアやハンガリーが国家破たんの危機に見舞われている。なぜだろうか。金利の安いスイスフランを借りて住宅ローンを組み、家を建てさせた。欧州の銀行が好調なときは良かった。本丸に火がついた西欧の銀行が東欧から資金を一斉に引き上げた。引き金を引いたのが、リーマンブラザーズの破たんである。
温家宝首相が本心から心配しているのは米国債の暴落であろう。米国はG20の議題にGDPの2%の財政出動を打診している。フランス、ドイツはこれに早くも反発していると今朝の日本新聞に出ていた。特にドイツのメルケル首相にはインフレの恐怖を叩き込まれているに違いない。
ニューズウイーク日本版最新号は、「この10年間の金融史が書かれるときには、90年代のITバブル、00年の住宅バブルと並んで08年後半の尋常でない米債券バブル」と書かれるかもしれないとウォーレン・バフエット氏のことばを紹介している。
劇薬には必ず副作用が伴う。なりふり構わずペーパーマネーを刷り続ける米国。インフレとは通貨の値うちが下落することである。米国債がいま異常に売れているそうだ。過ぎたればなお及ばざりしとは論語の言葉である。温家宝首相は、最近の米国に恐怖心を抱き始めたに違いない。(了)