細川正義氏大いに語る
江嵜企画代表・Ken
中堅輸送機器メーカーS社の株主総会が6月27日(火)午前10時から宝塚仁川の本社会議室で開かれ楽しみにして出かけた。社歴によれば当社は1920年に川西機械製作所に飛行機部を設置したことに始まる。2020年に創業100周年を迎える。「自分たちの手で航空機を作る」という決意のもと川西航空機が誕生、戦後、現在の新明和工業に受け継がれた。
母校本庄小学校は、隣接するゼロ式戦闘機、海軍紫電改の生産工場が米軍の空爆の標的になり手ひどい被害を受けた。小学1年、戦争が終わった年の12月に疎開先から戻ったが焼夷弾の残骸が運動場の隅に山積みされていた。直径20メートル以上の爆弾池があちこち残っていた。母校の講堂は小学校3年の時にようやく屋根が出来た。雨の日は傘を差して授業を受けた。しがない1000株株主だがS社に対する愛着が原点にある。
会場の様子をいつものようにスケッチした。昨年までの社長さんが控えに座り、議長席にはイケメンの若社長、五十川龍之社長(58)が立ち、議事を進めた。型どおり営業報告が終わり10時22分すぎから株主の質問時間に入った。社長さんがどのように対応され、どう答えるかにいつも関心がある。
ひと呼吸置いてある株主が質問した。「単元株式数を1,000株から100株になぜ変えるのか。メリットはないと思う。それにいかにもさびしい。意見を聞きたい。」と質問した。社長さんは「株式取引所の決まりで変更することになった。100株単位にすることによって少しでも多くの株主の皆様にチャンスをつくってもらえるよう期待します」と答えた。
2番手の株主が「森林火災、都市火災が世界中で多発している。消防飛行艇の出番ではないか」と質問した。担当役員さんが「飛行艇のさらなる有効活用に期待している。各省庁にも今後とも引き続き強くアッピールしていきたい」と答えた。
3番手の株主が「新明和と言えば航空機となっているが19%だけだ。当社の技術力を生かした成長分野はないのか。当社は余裕資金を持っている。有効活用していないのではないか。」と質問した。社長さんは「当社は①航空機、②特装車、③液体、④産業システム、⑤パーキングの5本柱をベースに事業多角化を展開している。2018年にはV字回復、右肩上がり出来ることを明らかにしたい」と答えた。
4番目に筆者が質問した。「しばしば為替による業績悪化という説明が出てくる。海外と国内の比率はどうか。前期と今期のレートを知りたい。海外が多い航空機は売上の19%だ。為替の影響を直接受けにくい成長分野を持っているのだから円高を業績悪化理由に挙げると株価にもマイナスと思う。」と質問した。社長さんから「確かに円高要因を取り上げて話して来たことは事実だ。」と話したあと担当役員さんから「前期は1ドル₌120円想定で108円と減益要因になった。今期は1ドル₌108円で見ている。」と答えた。
その他の株主からの質問の中の一つに「若返りを目指して社長は若返った。若返りは結構だ。しかし、その他の役員の一部は全く若返りしていない」と質問した。社長さんは「自分はパーキング出身である。航空機その他は勉強をする。経験豊富な人材の智慧を生かしながら会社全体で力を合わせて頑張るのでご理解願いたい」と答えた。
会場入り口でお土産を2点渡された。帰宅して中身を開けたら包みのひとつに「陸上をダッシュ、水面をスイスイ」のうたい文句の水陸両用のUS-2救難飛行艇の小型模型グッズが出て来た。
愛着だけで企業業績は良くならない。しかし、会社に対する愛着抜きにして企業の将来はない。当社は「自分たちの手で飛行機を作る」との強い決意から会社が生まれた。若返りした社長さんに託された期待は大きい。(了)