細川正義氏大いに語る
江嵜企画代表・Ken
大阪と東京に本社を置く創立大正7年(1918)老舗合繊メーカーT社の株主総会が6月22日(木)午前10時からウエスティングホテルで開かれ、楽しみにして出かけた。会場に着くと入り口で首にぶら下げる株主カードと手土産が渡される。今年のお土産の中にテルクリンという名前の抗菌・防カビ・防臭スプレーと今一つ小物繊維製品が入っていた。
会場正面に第151回帝人株主総会の横断幕が目に入る。帝人という名前が帝国人絹という社名から生まれたと理解できる株主は今や少ないかもしれない。
型どおり営業報告にはじまり10時40分ごろから出席株主から受ける質問時間となった。所用があり11時半で失礼した。「同業の東レが売り上げ1兆5,000億円で走っている。当社は売上7,700億円で低迷している。マテリアル(素材)とヘルスケア(健康医療)二本柱で成長を狙うと言うが物足りない。昔の知名度にもっていかないとダメなのではないか」とある株主が質問した。
鈴木純社長は「中期経営計画に基きコアビズネスを確立し成長戦略を推進する。来期2018年3月期の連結見通しは売上高8,500億円、営業利益630億円、増収増益。5円増配して通期で60円配当を予定している」と胸を張った。
ある株主が「当社は小さな本社を目指すと言ってきた。本日、ひな壇に並んでいる役員の数が多いのではないか」とクレームを付けた。社長さんは「他社と比べても決して多くない。株主の皆様に十分なご説明ができるように後ろに座らせた。」とかわした。
当社は2016年10月1日に5株を1株に併合している。16年3月期の期首に株式併合が行われたと仮定して、1株当たりの配当金を算定している。株価は2,100円前後で推移しているが、併合前で言えば1株420円前後となる。配当も年12円程度と見ればわかりやすい。
当社は2019年にかけて経営目標をROE10%以上、EBITDA1,200億円超に置いている。ROEは株主から預託された資金に対する投資利回り。EBITDAは主に将来の成長投資の原資としてキャッシュを創出する力。「投資効率の追求」と「稼ぐ力の強化」「10年かけて大きく発展させたい」と株主の質問に社長さんは答えた。
当社は米国の自動車向け複合素材整形メーカーCSP社を16年に買収した。CPS社はガラス繊維の複合素材メーカーで当社とパートナーを組んで自動車メーカーに直接部品を供給できる体制を強化すると説明した。
ある株主が「昨年の株主総会で米自動車メーカートップのGMとの共同開発を取り上げていた。今年の報告書にはなかった。どうなっているのか」と質問した。担当役員さんが「GMとの共同開発は最終段階を迎えている。GMの意向で公開できないことをご理解願いたい」と答えた。
「日経朝刊に「ポリカーボネート樹脂で車のフロントガラス」という記事が出ていた。説明してほしい」とある株主が質問した。担当役員さんが「新幹線には既に採用されている。車にも拡大していく。」と手短に答えた。
ある株主が「女性を積極的に登用すると言って来たが女性の役員の姿が見えない」と質問した。担当の役員さんが「新規採用で女性の比率30%を目指している。2001年に女性の課長が誕生した。女性取締役が並べるように育成していく。」と答えた。
筆者は合繊メーカーの事業者団体職員として当社に大変お世話になった。地元大阪での株主総会開催ということもあり、愛着一つで株主総会にも出席して来た。
昔の名前で出ていますという歌がはやったことがある。日替わりで変動する不安定な国際情勢のもと、内外での熾烈な生き残り競争に、T社自身も愛着だけでは勝ち残れないと改めて実感した次第である。(了)