講師:上田裕介先生、神戸赤十字病院副部長
江嵜企画代表・Ken
「進歩する肺がんの治療」というタイトルの「読売健康講座」講演会が11月19日(日)午後2時からよみうり神戸ホールで開かれる。講師は上田裕介先生、神戸赤十字病院、呼吸器内科副部長と新聞で読み楽しみにして出かけた。会場で配られたチラシに香川大医学部、平成16年卒、日本内科学会、日本呼吸器学会専門医とあった。
いつものように会場の様子をスケッチした。ご夫婦と思しき方の姿が多く見られた。気のせいか会場はピーンと張り詰めた雰囲気で静まり返っていた。
上田先生はプロジエクターに映像を交えて、肺がんとは何かという話から始め、具体的な臨床例も入れて、はじめの1時間ほどを早コマ送りのように一気に解説された。
肺がんにかかるひとがここ数年、右肩上がりに増えている。肺がんで亡くなる人ががん死亡者の中で一番多い。部所により症状が違う。脳や骨へ転移することもある。1.4~1.6ミリを切り取って検査するなどのことばが印象に残った。講演の中で腺がんと言う言葉がしばしば出て来た。肺がんの半分近くは腺がんで肺の先の細かい部所に発症する場合が多く、がんが見つかりにくい。転移しやすいという話が耳に残っている。
1時間の解説だったが、上田裕介先生は質問に答える時間を30分用意されていたことがそのとき始めて分かった。残り時間の半分をあらかじめ事務局に出した質問に使い、あと残り15分を会場参加者からの質問に用意されていた。
事前に提出された質問を事務局が読み上げそれに上田先生が答えた。まず男性(65)。「肺がんの原因を教えてください。」と。上田先生は「わからないです」と開口一番答えたあと「男性の場合、しいて言えばたばこかな。たばこを吸う方は吸わない方より肺がんになる数は1.3倍多い。後アスベストも原因になる。」と答えた。
2番目の質問。「54歳の妹に肺がんの陽性反応が出た。3期か4期ときいている。免疫療法について教えて欲しい。」と。「免疫療法は選択肢の一つです。効かない方もおられます。陽性の方は使い分けしてほしい。」と答えた。
3番目に女性(57)。「免疫療法は効果があるのですか?」と。「まとまったデータはない。交換治療で成功率24%と言うデータもある。」と。
4番目。女性。「今年3月に発病した。4ケ月交換治療を受けている。再発しないか心配だ。免疫療法は化学療法の後か先が教えて欲しい」と。「いままで再発がなければ免疫療法でいいが、進行中は免疫療法は疑問かもしれない。」と答えた。
5番目。女性(64)。「肺腺がんと診断された。2.6センチだった。抗がん剤を継続していいか教えて欲しい。」と。「拝見しないと答えられないが、一般的には抗がん剤治療を続けて欲しい」と答えた。
事前質問の後、会場での質疑応答が始まった。まず会場最前列の男性が手を挙げた。「高原病ステージ5です。抗がん剤治療を続けている。問題ないといわれている。73歳になった。もう十分生きたと思っている。抗がん剤をやめたい。どうしたらいいかご意見を伺いたい」と話した。「継続をお勧めするが医師と相談しながらお休みするのも一つの考え方かもしれない。こうして正直に言っていただくと私どもも楽だ」と答えた。
2番目に男性。「一般検査で左肺にがんが見つかった。手術後2年になる。半年1回CT検査を受けている。転移はないか伺いたい。」と聞いた。「手術を終えて居られる。今のままで観察を続けられたらいいと思う」と答えた。
3番目に男性が手を挙げた。「70歳。小細胞がんステージ2と言われた。再発はないのか。免疫療法はどうか。」と聞いた。「2期と言うことだが、再発が見られなければ抗がん剤、放射線治療継続がいいと思う」と答えた。
4番目にご婦人(59)が質問した。「6年前に肺腺がんがわかった。1センチ5ミリだった影が2.5ミリになった。経過観察と言われているが気になる。」と話した。「お話だけでは何とも言えない。肺腺がんでCTをとる方は増えている。最新のCT写真に過去の経過を見ることが大事なので数枚見せて欲しい」と答えた。
あくまで素人として、記録に残したい気持ちで努めてメモをとった。患者の立場に立ち一問一問丁寧に答えられる上田裕介先生の姿が強く印象に残った。(了)