「不思議の国のアリス」原書講読会風景
江嵜企画代表・Ken
「不思議の国のアリス」を原書で読む講座を4月から来年3月まで月1回のぺースで芦屋の谷崎潤一郎記念館で開きます。お見えになりませんかと大阪府立大教授の堀江珠喜先生から昨年暮れに声をかけられた。
昨年夏8月に週一回のペースでミュージカル「キャッツ」の原書講読を初めて受けた。今回は二度目である。朝10時から11時まで。その間、辞書は使わない。予習もない。ぶっつけ本番で、堀江先生がほぼ1行ずつ読む。あとおっかけて生徒が声を上げて読む形で進む。
昨年夏8月の講座は、生徒は7~8人だった。今回の作品は「不思議の国のアリス」ということもあってか、定員18名満席、ご婦人16名、男性は小生いれて2名だった。教室の様子をいつものようにスケッチした。
作者のルイス・キャロルはペンネーム。本名はチャールズ・ラトゥウッド・ドットソン。本読みの前に、堀江先生は、写真家でもあるドッドソンの写真集を回覧した。少女ばかりを撮った写真が並んでいた。
今回の作品のいきさつは、1862年7月、友人の幼い三姉妹をボート遊びに連れ出した。三姉妹の次女がアリスだった。この作品は、白うさぎの縦穴を通り抜けて、人間の世界へ落ち込んだアリスという名の少女の物語である。
本日第一回目の本読みは、第1章「Down the Rabbit-Hole」である。アリスが地球の中心を通りすぎて地球の裏まで転がり落ちていく。アリスの様々な感情の変化に加えて、言葉遊びも見せ場の一つとなっている。物語は12章ある。講座は、8月は夏休み。あと9月から7回、毎月あって来年3月に終る。
本読みの途中、頃合いを見て堀江節が入る。作者のドッドソンは一生独身を通した。少女趣味を疑われた。ドッドソンに気に入った女の子がいた。それがアリスだった。「いま世界中セクハラ騒ぎだが、現代だったら作者のドッドソンはどうだったか」と堀江先生はいたずらっぽくウインクした。
作者のドットソンは左効きだった。親が右利きに執拗に直そうとした。そのため言語障害が出て吃音になったという話が残っていると堀江さん。
ドッドソンが活躍した時代はヴィクトリア王朝時代である。ヴィクトリア女王は7人の子供がいた。4男デオポルト王子とアリスと縁談があった。ということは、アリスの家柄はかなり良かったと考えられると堀江さん。
当の4男は血友病で31歳で亡くなる。王女の一人はロシア皇帝と縁組する。血友病は男子にのみに出るが、ロシア革命で処刑された王子は血友病だったと堀江先生は横道にそれた。
英語のプロの先生から直々、本読みを経験できることは願ってもない機会であるが、筆者は、比較文学の権威である堀江先生が時に横道にそれるのをむしろ楽しみにしている次第である。(了)