西宮病院待合室
兵庫県立N病院の玄関待合室風景をスケッチした。N病院に最初にお世話になったのは筆者が後厄の
43歳の時だからちょうど半世紀前になる。左目網膜剥離手術を当時の眼科部長のI先生の執刀のお世話になった。その後、右目網膜剥離レーザー手術のあと白内障手術を1回それぞれ10日間入院している。
本来なら白内障手術は1回で終わると当然のように認識していた。ところが筆者は違った。挿入したレンズの内、左目のレンズが時間の経過とともに「脱臼」した。視力低下が徐々に進んだ。やむなく再手術となった。
白内障手術は本来レンズを挿入したら完了する。患者Aのケースは、「脱臼」レンズをまず取り出す。カラにした場所に新しいレンズを挿入する二段式の手間と細心の注意が要求される。その時の様子は当欄2019年2月7日で詳述しているので省略する。
厄介な手術をクリアしていただいたのがN病院眼科部長のM先生だった。そのM先生が急に大阪の他病院勤務の為3月16日で退職される。
本日14日はM先生の最後の診察日となった。患者Aが、がっかりしているのを、お見通しなのか、診察が終わるなりM先生の方から声をかけられた。
「大阪の住吉区の公立の病院から依頼がありまして行くことになりました。いつもきれいなスケッチをいただきありがとうございました」と話が始まった。話の内容は省略させていただく。
多々お世話になったと礼を述べたあと、是非お聞きしたいことがあると切り出し「医師としていつも心がけておられることは何ですか」と尋ねた。
一呼吸おいてM先生は「患者さんはいろいろ異なります。患者さんそれぞれに合わせるよう心掛けております」と短く話されたことばが強く印象に残った。
M先生は6年前、当時のN病院長から強く要請され当病院に赴任された2人の内のおひとりと承知している。この度は大阪での新天地赴任である。患者Aとしては寂しいが、新天地でM先生の赴任を心待ちしておられる多くの患者さんのことを思いながら診察室を後にした。
診察が終わると玄関待合室で支払いをすます。待ち時間を利用してスケッチした。男性がこの日は多かった。たまたまなのかもしれないが野球帽が目立った。待合室での後ろ姿はいつ見てもうら寂しい。
連日伝えられるウクライナの惨状と比べ様もないが、患者の立場から見れば、医療皆保険制度に守られて、日本の医療制度は特別に恵まれているのかもしれない。その一方で、ごく限られた悪徳医師の話を除けば、軽率に物を言うことは当然できないが、全体としてお医者さんだけでなく看護師含めた医療関係者の激務と比べて待遇の悪さも指摘されている。
患者Aとして安心して老後を送れる日本国を孫子の代まで堅持して欲しいとただ祈るばかりである。
(了)