宝塚市阪急仁川駅から車で7~8分のところにある航空、産業機械メーカーの新明和工業の株主総会が6月25日(火)午前10時からあり楽しみに出かけた。会場の様子をスケッチした。
冒頭、機械式駐車装置の製造販売業者と共同し受注及び販売価格維持、引き上げを図った疑いで現在,公正取引委員会の調査を受けていることで迷惑と心配をかけたと謝罪したあと事業報告本題の議事に入った。
23年4月~24年3月期間の売り上げ2,570億円(前年度比14.2%増)、営業利益、117億円(同26.6%増)、経常利益(121億円(22.3%増)と足元の事業内容は好調である。特に今期航空機部門が売り上げ319億円(同37.9%増)、営業利益(21.8億円(同56.5%増)が寄与したと説明があった。
質問時間に入り恒例により筆者も手を挙げた。1番に指名された。この日全部で5人が質問した。会場のかぶりつきに席を取り旅行ケースを傍に置いた女性が4番目に「自衛隊受注が少ない。問題があるのか。」と聞いた。社長さんは「防衛庁も予算面で様々制約を抱えているようだ。与えられた範囲内で最大努力する。」と控えめに答えた。
2番目は「甲南工場(飛行艇製造)の防潮堤の高さ1.5メートルで問題ないのか。南海トラフ地震の備えはしているのか。」と聞いた。社長さんは「南海トラフ地震の対応は日々確認対応している。」と答えた。3番目は「ROIC(投資利益率)5%は低いのではないか。」と質問した。社長さんは「5%を安定的に維持する方針を継続したい。」と答えた。最後5番目は「海外事業を現在800億円を2026年に1200億円の計画だ。為替レート160円をどう見ているのか。」と聞いた。社長さんは「今年度想定為替レートは1ドル=144円である。現状1ドル=10円程度円安効果が出ている。」と答えた。
筆者は「小学校1年の年の昭和20年(1945)、3月に学校まるごと米軍の空爆を受けた。先ほど映像でも会場で流されていたが当時川西航空機でゼロ式戦闘機「紫電改」を製造していた。工場と隣接していた母校は全壊した。講堂の屋根が修復したのは小学校3年の時だった。終戦の年の8月に新明和工業甲南工場が飛行艇製造工場として事業を再開した。子供のころから飛行艇の会社を眺めながら育った。飛行艇がなくなると寂しい。」と冒頭話した。
「ところで今年初め読売新聞に飛行艇製造が主にコスト高で高価となり買い手が自衛隊しかない。事業継続が危ぶまれると掲載された。一般紙に掲載されてはじめて飛行艇の会社と初めて知るひとは多い。独自技術の開発、継続、継承は御社の至上命令と考える。技術の新明和を広く知ってもらえると優秀な人材もより多く確保できる。顔が見えないと存在すら分からない。どんな広報活動しておられるのか併せお聞きしたい。」と質問した。
社長さんは「技術の新明和と自負している。技術の開発、伝承に最大限力を入れている。飛行艇からの事業撤退は毛頭考えていない。あらゆるケースを想定して新顧客開拓に努めている。広報活動についても担当事業部長がチームを組んで対応している。更なる技術揮発を進め新用途を開発し、同時に株価も上げていきたい。」と力強く答えた。社長さんが株価も上げていきたいと言葉を添えたところが特に印象に残った。
日本では株式の話題はまだまだ市民権を与えられていない。新NISAが今年スタートしたが岸田首相も「貯蓄から投資へ」と謳い文句だけは立派だが魂が入っていない。腰がふらふらしている。今年に入ってからのドル買い・円売り加速は、日本の技術競争力、技術開発力の底の浅さを市場に見抜かれた日本売りの結果だとの見方が外国人には一般的であるのが怖い。(了)