南海本線、粉浜駅下車、粉浜商店街の北詰角に『松屋』と
大きく書いた暖簾が目に入る。
お女将ひとりで切り盛りしている居酒屋で、震災後、同じ沿線の
住の江に仮住まいしていたころたびたびお世話になった。
この店を知ったのは偶然だった。父が近くの住之江病院に入っていた
とき帰路、気まぐれに立ち寄ったところ、お袋の味にその店で
久しぶりに出会ったのがきっかけである。
父がなくなったのは2001年9月、その年の暮れに、再建された
神戸のマンションに戻った。そのとき以来の『松屋』である。
「あれ、似た人がいるな」と店にはいってきたときお女将は
感じたとニコニコしながら話してくれた。
カウンターには3年前とおなじように並べられたお菜ものをまるで
子供に帰ったようにあれこれ眺めた。お酒のあてに、たこのぶちきりの酢物、
ゆり根の煮物、ぶりを選んだ。あとでかす汁350円の札を見つけたので
ご飯と一緒に注文して仕上げをした。
この間ほぼ2時間。帰り際夫婦づれとおぼしきふたりが入ってきた。
客人はこれで計4人である。右正面にご婦人が座って食事を始めた。
昔そのままだなと思い出しながら店の中をスケッチした。
「あれから人がさらに減ったんよ」とお女将さんはいう。近くの商店街も年を
追うごとに空きが出てもあと店は閉めたままと話していた。
「日本で初めて人口減少はじまる」と夕刊の見出しで見た。
街角のお袋の味を楽しませてくれる居酒屋もそして場末の商店街も
日本からいずれ姿を消すのであろうと思うとつらい。〈了〉
Kenさんのスケッチは、ブログ容量の関係で削除させて頂きましたが、11月1日に、「かんぽう」さんから『ユニークに乾杯』というタイトルで出版予定です。定価2.000円。
ISBN978-4-904021-03-3 C0071 1905E
株式会社 かんぽうサービス ℡06-6443-2173
大阪市西区江戸堀1-2-14 肥後橋官報ビル6F(〒550-0002)
大きく書いた暖簾が目に入る。
お女将ひとりで切り盛りしている居酒屋で、震災後、同じ沿線の
住の江に仮住まいしていたころたびたびお世話になった。
この店を知ったのは偶然だった。父が近くの住之江病院に入っていた
とき帰路、気まぐれに立ち寄ったところ、お袋の味にその店で
久しぶりに出会ったのがきっかけである。
父がなくなったのは2001年9月、その年の暮れに、再建された
神戸のマンションに戻った。そのとき以来の『松屋』である。
「あれ、似た人がいるな」と店にはいってきたときお女将は
感じたとニコニコしながら話してくれた。
カウンターには3年前とおなじように並べられたお菜ものをまるで
子供に帰ったようにあれこれ眺めた。お酒のあてに、たこのぶちきりの酢物、
ゆり根の煮物、ぶりを選んだ。あとでかす汁350円の札を見つけたので
ご飯と一緒に注文して仕上げをした。
この間ほぼ2時間。帰り際夫婦づれとおぼしきふたりが入ってきた。
客人はこれで計4人である。右正面にご婦人が座って食事を始めた。
昔そのままだなと思い出しながら店の中をスケッチした。
「あれから人がさらに減ったんよ」とお女将さんはいう。近くの商店街も年を
追うごとに空きが出てもあと店は閉めたままと話していた。
「日本で初めて人口減少はじまる」と夕刊の見出しで見た。
街角のお袋の味を楽しませてくれる居酒屋もそして場末の商店街も
日本からいずれ姿を消すのであろうと思うとつらい。〈了〉
Kenさんのスケッチは、ブログ容量の関係で削除させて頂きましたが、11月1日に、「かんぽう」さんから『ユニークに乾杯』というタイトルで出版予定です。定価2.000円。
ISBN978-4-904021-03-3 C0071 1905E
株式会社 かんぽうサービス ℡06-6443-2173
大阪市西区江戸堀1-2-14 肥後橋官報ビル6F(〒550-0002)