場所によって時期は多少違うだろうが、キンモクセイの香る、いい季節である。この香りに包まれると「あー秋だなー」と実感するとともに、何だか幸せな、しかし少々センチな気持ちになる。
『枕草子』の「春はあけぼの」ではないが、僕ら日本人、春は桜の花を愛で、夏はセミの鳴き声を聞き、秋はこのキンモクセイの香りを感じ、そして冬はもちを食べて暮らしている。
これって考えてみれば、それぞれ視覚、聴覚、嗅覚、味覚及び触覚と、五感を順番に刺激するというか、楽しませてくれるものだ。日本人の細やかな感性というのは、こういうところからも来ているに違いない。
まとめると、
春 桜 花見 視覚
夏 セミ 鳴き声 聴覚
秋 キンモクセイ 香り 嗅覚
冬 もち 食感・手触り 味覚・触覚
もちろん他にも、春には梅や菜の花の香りがあり、夏には海で泳ぎ花火を楽しみ、秋には紅葉や名月を愛でるし虫の音も聞くし果物もおいしいし、冬は雪や氷や炭火があるのだが、いずれも日本人の感性に深くかかわっているはずだ。
…日本は、今でも充分、美しい。
ところで、清少納言が「春はあけぼの…」と書き始めた時季は、やはり春なのだろうか。