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エッセイとショートショートと―あちこち話が飛びますが

黄金の国

2007-09-30 08:51:10 | エッセイ
 
 かのマルコ・ポーロによって、昔この日本が〈黄金の国 ジパング〉と紹介されたことは、知っている人も多いと思う。佐渡や菱刈(鹿児島)で金が多く採れていたからだそうだが、渡来人が持ってきたガラス器具などと交換して、海外に流出してしまったようだ。もったいないことしたもんだ。

 ただ別の意味で、日本はやはり〈黄金の国〉ではないかと思う時がある。それがこの季節。ここ静岡でも、あちこちで稲刈りが行われている。
 稲穂の垂れるころの田んぼというのは、黄金色に輝いている。そして収穫されたお米で炊いたご飯は「銀シャリ」と呼ばれ、残った稲の茎は乾燥されて銅のような色になり、わらじや畳の芯に使われるようになった。金・銀・銅、なのだ。ついでながら、お百姓さんの顔や腕は、赤銅色である。

 そして稲刈りが終われば、秋のお祭り(収穫祭)となる。日本全国、お祭りは四季にわたってあるけれども、秋のお祭りが最も盛大に行なわれるはずだ。1年の苦労も実り、やれやれっと、年末に向かって気持ちが安らいで行く時季なのである。

 おそらく日本人の体には、このお米作りの流れというのが染み付いているはずだ。春先から準備を始め、苗作りから田起こし、田植えに稲刈り、そして正月にお餅を供える、という。だから、いくら欧米がそうだからといって、9月に年度を始めるなんて、無理があるからやめた方がいい。
 もう一つ。サマータイムとかいって夏場に時計の針を早めるなんてのが考えられているそうだが、基準となる〈時間〉を動かしちゃあいかん。早く仕事したいのなら、したい者だけが夏の始業時刻を、たとえば9時から8時に早めればいいだけのこと。

 外国に行って、街並みや人間が違うのは当たり前だが、違いを感じるのは、きれいな田んぼがあるかどうかってこと。日本に帰ってきて田んぼのある風景を見ると、ホッとするものだ。だんだんその数も減って行くだろうが、この国の治水・気候、そして気持ちにもいい影響を及ぼしているであろう〈黄金の風景〉というのは、ずっと残しておきたいものである。

 そうそう、庭のバケツでやっている米作りは、今年もうまく出来ました。買ったお米と一緒に炊いて、みんなでおいしく戴いています。
 
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