思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

ジョルジュ・プレートルがつくる音楽?職人技に支えられた豊饒な主観性

2009-01-16 | 日記
ジョルジュ・プレートル
1924年8月14日 生まれのフランスの指揮者(アンドレ・クリュイタンスに師事)。


プレートルのつくる自由でこだわりのない音楽は、実に豊かです。
音楽の表情は(指揮する顔の表情も)変化に富み、飽きることがありません。
明晰にして豊饒です。
プレートルの音楽の豊かさは、アインザッツに無頓着で、各プレーヤーの自発性に任せていることに一因があると思います。
また、テンポも、プレートルの心身に忠実に刻まれているようで、聴いていて心地よいものです。ただし、楽譜の指定とはかなり異なることもあるようですが。
何より素晴らしいのは、音楽学的な窮屈な感じが全くなく、楽曲の意味が判然と伝わることです。全体がわしづかみにされて、明瞭に示されるので、とても分かりよいのです。

プレートルは、内外(フランスとオーストリア)で大きな音楽賞を受賞していますので、「異端」ではないはずですが、彼のつくる音楽は、ベートーヴェンやマーラーの交響曲においても、従来の演奏とは様相が大きく異なります。意味が濃く、表情がとても豊かで、分明かつパワフル。楽しいのです。楽譜に書かれた音楽が「客観」として示されるのではなく、プレートルという人間の「主観性」のエロースに満ちているので、面白く、長大な交響曲も繰り返し聴きたくなるのです。彼の主観性の豊かさ・魅力は、長年、オペラの指揮で身につけた確かな職人技に支えられているので、強く安定しています。

2008年、ニューイヤーコンサートの指揮者としてウィーンフィルの楽団員が選んだプレートルは、83歳にして突如大注目されるようになりました。昨年、録音後17年間もオクラになっていたマーラの交響曲・第5番、第6番が、『レコード芸術』誌で特選盤となり、第5番は、2008年度の「レコードアカデミー賞」・大賞も受賞しました。

従来の「客観主義」による正確・緻密な演奏とは大きく異なる「主観性」の豊かさに基づく演奏が、このように高く評価されるようになって、わたしは嬉しい限りです。
いま、時代が、更に言えば、人類の文化・文明が大きく変わろうとしているのかもしれません。なんだか、ワクワク、ドキドキしますね~。

ベートーヴェン交響曲第9番http://www.hmv.co.jp/product/detail/3307280
マーラー交響曲第5番http://www.hmv.co.jp/product/detail/2675266
マーラー交響曲第6番http://www.hmv.co.jp/product/detail/2675267


武田康弘
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