人間がよく生きるために、頭を有効に使う力を鍛えるのではなく、
ただ覚えること、受験知・資格知しかない日本の現実は、知的退廃そのものです。
物知りになることが知的になること、と信じられている社会では、人間としての豊かさをもった頭脳は育ちません。
「知ってる・知らない」、という頭しかないと、
ほんとうに「よい」こと「美しい」ことは何か、という人間的認識の基本は遠のき、損・得と快・不快、だけの世界で生きることになりますが、それでは、昆虫の生のようです。
思考も、中身・内容を考えるのではなく、形式として考えるだけですので、総合判断はできません。形式論理しかないと、豊かな内容を伴った全体判断は不可能なので、与えられた既存の想念に縛られて、堂々巡りをするだけです。
そのような頭脳が優秀とされる社会に生きる人間は、不幸です。
受験教・資格教という悪しき宗教から抜け出るには、「よく生きるとはどういうことか」の明晰な自覚が求められます。
武田康弘