思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

いよいよ今月、マレイ・ペライアの演奏会、時代を新たにする最高のピアニストの愉悦

2014-11-01 | 学芸

   

 和声(ハーモニー)への着目と重視で、楽譜の深い読みを可能とし、豊かに広がる音楽を創造するマレイ・ペライアは、現代最高のピアニストであると言えます。 わたしは、先に、「ペライアには過去の巨匠も現代の技巧派もかなわない」、と書きましたが、その一例を示します。

 バッハのゴールドベルク変奏曲は、グレン・グールドの新旧二つの演奏が最も高く評価されてきましたが、2000年に録音されたペライアの演奏を聞くと、グールドの内向的演奏を超えた豊かな音楽の立ち現れに唖然となります。他を寄せ付けない鋭い楽曲分析によるグールドの世界が、交響的な広がりをもつペライアの豊かな和声の前に閉塞感を感じさせます。なお、パルティ-タは、グールドの演奏に深みと面白味を感じます。ペライアは、余裕のある落ち着いた演奏で、なぜか宇宙を感じさせます。

 ピアノが、単なる打楽器ではなく、より大きな普遍性をもつ楽器であることを証明してくれるのがペライアのピアノ奏法で、それは、彼の全人的な生き方=思想により支えられているようです。ペライアの濃やかな美音は、美音であることを誇るのではなく、豊かな和声による新たな音楽世界を拓くための美音なのです。

 メロディーの心に沁みる歌わせ方、内的なリズムのよろこび、にとどまらず、音楽を音楽たらしめているハーモニーの重視は、ペライアの音楽を21世紀の新たな指針にまで高めています。そのペライアが、今月13日にサントリーホールで弾き振りをします。世界最高のピアノ音楽の魅力を生演奏で体験するのは、人生の得難いよろこびです。ぜひ、お出かけください。


武田康弘

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