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昨晩の演奏会は、至福の時でした。
若書きのメンデルスゾーンは、指揮者なしで、助走にふさわしい演奏。アカデミー室内管の弦の美しさを堪能。
続くモーツァルトのピアノ協奏曲21番は、ペライア得意の名曲。完成された美で、言うことなし。三楽章のカデンツァはCDとは異なり、持続力が強く面白い。プゾー二のものかな。
休憩後のバッハの7番(元はチェンバロ協奏曲)は、なんとも幸福な演奏で、これほど品の良い愉悦感のあるバッハは、滅多に聴けません。イギリス的な中庸のよさが満開。
最後のハイドンの交響曲94番「驚愕」は上質な愉しさ。まるで、ホールの上に美しい光が広がるようで、ティンパニーの強打(上手い!)や弦の強奏も荒さは全くなく、快感が広がります。実に気分のよいハイドン、ペライアの指揮は彼のピアノ奏法と同じで、品位が高く、和声の豊かさを感じさせるもの。ただし、シャープで迫力があり、メリハリも強くて別の側面も感じさせる。
う~ん、愉悦、幸福な音楽たちに出会えました。
なお、会場では、久しぶりに大島久子さんと二女のピアニストの直子さんにお会いし、談笑!なんと、久子さんは、ゲルギエフのファンだとのこと、数年前の来日時に聴いたチャイコフスキーの「悲愴」に感激、彼の演奏で、「悲愴」という曲の素晴らしさに開眼したとのこと。わたしも同じ!と話し、10月18日に所沢で聴いたゲルギエフの「悲愴」の素晴らしさ(多くの聴衆が感涙)を話し、また、10月15日にここサントリーホールで聴いたストラヴィンスキーの三大バレエの話をし、たまたま持参していた当夜の写真をお見せしたら、「これ頂けるの!」と、とても喜ばれました。90歳にしてこの情熱!!いや~、さすが白樺派 (久子さんは、柳兼子のただ一人の内弟子で、青春時代を柳家で過ごし、宗悦や志賀直哉などとも日常的に接していた方です。まさに「白樺派」の最後の生き証人)。手を握り合ってしまいました。
直子さんは、なんと、若きペライアの最初の来日時に上野の文化会館で聴き(会場ガラ空き)、それ以来、理想の音をもつ最高のピアニストと思い続けているとのこと。一時、ポリーニの超絶技巧に影響されて、バリバリ弾いて指をダメにしたことを、ポリーニなんかに影響されてバカね~、と思っていたら、美しく豊かに広がる奏法に戻り、よかった!素敵!と、言っていました。筋金入りのペライア支持者です。
もう、意気投合しすぎて、タイヘンタイヘンでした(笑)。
この日の演奏会のこと、お教えした甲斐がありました。お二人にとても感謝されました。
(注)なお、直子さんと三女の文子さんのことは、以前にCD「十五の心」でご紹介しましたので、ご覧ください。
(写真はクリックで拡大。大島久子さん、大島直子さん、武田康弘)
武田康弘