ずいぶん多くの無伴奏を聴いてきましたが、これには驚きました。
(バッハ作曲 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ)
20世紀の「客観という神話」から完全に解き放たれた「主観性の世界の豊穣」にただ聴き惚れて・・・・
実に多様で豊かな感情の表出、
愛に溢れる語りは、女性性そのもの。
観念的言辞とは無縁な身体の奥から湧出するイマージュ、微妙で繊細な皮膚感覚、まるで肉声と化したヴィオリンの音色。
21世紀は主観性の時代になるとわたしは見ますが、その一象徴となるようなバッハを超えたバッハで、なよやかな魅力に引き込まれてしまいます。
いよいよ命の始源=女性原理が、争いと覇権の男性原理を超える日が来るのかーそんなことまでも想わせるまったく新しいこのバッハの無伴奏全曲は、まだ20歳代前半(2008年録音時)のロシアの妖精・イブラギモヴァによって奏されたものです。
(わたしは、イブラギモヴァを知りませんでしたが、fbの友人・小林道子さん(コンサートホールの設計者)が昨年暮れのイブラギモヴァの独奏会でこの曲を聴き感激されていましたので、CDを購入しました。)
※20世紀のシェリングの名盤ー男性的な気高い抒情の美しさが色あせるわけではありませんが。
武田康弘