首相は、何度も言います。記者会見でも国会でも。
「テロには屈しない」と。
いま、後藤さんが人質にとられている最中、極めて危うい状況のなかにある最中、命が奪われようとしている最中に、なぜ、犯人たちを挑発するようなことを言うのか?あまりの愚かさ、こどもじみた強がりに、わたしは、言葉もありません。
テロ行為が悪であり、許しがたいものであることは理の当然ですが、
問題の核心は、なぜテロをするグループが次々と現れ出てしまうのか、それをなくしていくためにはどうしたらよいのか、少なくとも被害に合わないようにするには、何をすべきか、何をしてはならぬのか、を考えることです。
そうした本質的な問いに向き合い、不条理な世界で苦しむ子どもたに助力してきたのが、後藤さんです。
ヨルダンの女性死刑囚は、イラクでアメリカ軍に兄弟3人を殺された経験をもち、それがテロ行為につながったと伝えられますし、「イスラム国」とは敵対関係にある別の過激派集団「アルカイダ」は、クリントン氏の証言を待つまでもなく、元々アメリカがつくった組織です。
深く思慮せずに、ただ「テロには屈しない」と言うのには、虚しさだけがコダマします。現に今は、屈しているのですし、今は、屈するほかないではありませんか!
後藤さんの危機を前にして、あまりにも、あまりにも、あまりにも、無思慮な言辞(怒)。自らのメッセージが意味すること、結果するのことを考慮しない人は、首相としての基本条件を満たしません。
武田康弘 (元「参議院行政監視委員会調査室」客員調査員 哲学講師)