今日の川崎ミューザでの演奏会。ただ感動あるのみで心身の芯から満足だが、何か言わねば(笑)
イブラギモヴァの最初のフレーズを聴き、唖然。声を失った。艶やかで柔らかい美音が眩いオーラを放ち、オーケストラの全員が引き込まれ一つになった。
クラリネットなど管は音が変わり、ヴァイオリンと一体化する、弦はぴたりと揃い、序奏の音とは別物。
2楽章のカデンツァは、あまりの美しさにホールは凍り付いたよう、静寂が支配し、息をするのもはばかれるほど。
涙が出る、感動のモーツァルト。ヴァイオリン協奏曲の3番がこれほどの深みを持った曲だとは、はじめて曲の真価を知った。演奏が曲を上回った?
休憩の後にはベートーヴェンの7番、これにも驚いた。女性指揮者ピツァラによるリズムの祭典は、流麗な迫力で、快適に進み、実に気持ちよい。颯爽とした開放的なベートーヴェンの登場に心はウキウキ。拍手が収まらず指揮者は数回も呼び出されたが、アンコールの用意がないので、4楽章の途中からを再演!興奮。
今日の感動のコンサートは、指揮者は女性、コンサートマスターも女性、ソリストも女性。新しい時代の始まりを感じさせる貴重な体験でした。
それにしても東響は、日本の生んだ独創的な名ホールの中で、のびやか、しなやかな音を出し、音楽するよろこびにあふれていた。なるほど、ホールとオーケストラが一体となってよい音楽を生み出すのだな、と実感。
この東響に幸福をもたらした女神=ミューザホールの設計者・小林洋子さんと会場で出会い、休憩時間にお話しをし、帰りは食事しながらの長時間の歓談。とっても楽しかったな。
それにしても、小林さん設計のこのホールは、従来のクラシック音楽のイメージを覆す斬新なデザイン。ホタテ貝のようであり、古代アテネの円形劇場のようでもある。視覚的にも音響的にも開放的で、音が固まらず、のびのびと広がり、権威的ムードとは無縁。視覚と聴覚で民主的思想を体現したかのような設計に心から悦びを覚えた。サイモン・ラトルやヤンソンスも激賞。小林さんに感謝だ。ホールがオケを変え、聴衆を変え、音楽を変える。
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武田康弘