ジャケットデザインに惹かれてたまたま購入した輸入盤が、レイボヴィッツの指揮したサティの『ソクラテス』。その生々しい実在感のある美に触れて呆然自失。
半世紀近くのクラシックファンのわたしですが、まったく知らない人でしたので、慌てて調べたら、ベートーヴェンの交響曲全集が出ているのを知り、それを購入、続けてこの13枚組(ベートーヴェンはだぶる)を買いました。
どの曲も出だしから「採れたてホヤホヤ」のような音にゾクっときます。
第九は4回聴きました。交響曲の5番から第九まで通して聴いても感動感激が持続し、倍加されます。音がフレーズが音楽がいま作曲されたばかりという感じで生きているのです。わずか61分の第九など鳥肌が立ちっぱなしです。1番2番も大変な名演ですし、エロイカも4番もみな快適快調で新鮮この上なし。シューベルトの9番もあっという間に終わってしまう。春の祭典は、昨年話題となった原点回帰のロトを半世紀以上前に実現させていたレイホヴィッツの先駆性に言葉もない。しかもフルオケの迫力のまま。
とにかく、超モダン性と音楽の生気がみなぎるさまは、クラシックのダルさを微塵も感じさせない名演集で、これが半世紀以上前の録音とは恐れ入ります。録音も超低域こそないが、まるで最新録音のよう。CD聴いてこんなに驚いた経験は初めて。レイボヴィッツは、作曲者=創造者の目と精神で楽曲を再現していて、とくにベートーヴェンは楽曲のイデアを直接見るような眩さ。
録音はすべて1960年~62年 レイボヴィッツ46歳~48歳。この13枚組のボックスは、ルネ・レイボヴィッツ ルネサンスの導火線となるかも。必聴です。聴けば仰天・感動間違いなし。
武田康弘