2016年12月11日 撮影・武田。
「コジ・ファン・トゥッテ」終了後。
東京芸術劇場で。
このところ、CDで、ジョナサン・ノットの指揮するマーラーの9番(バンベルク交響楽団)とブルックナー8番(東京交響楽団)を繰り返し聴いてきましたが、
ノットの指揮は、余裕感があり、実に多面的・多色で、今までいない指揮者だな、と改めて強く感じています。各場面が万華鏡のように色とりどりで、感情の変化に富み聴き飽きません。クラシック音楽に新しい世界を拓きますが、それは、変わった演奏で人を驚かさせるのではなく、本質的に新しく素敵なのです。
昔の名演、一つの曲を一色で統一し、求心的に聴衆を引きずり込んでいくというのとは全く異なり、それぞれの場面が、それぞれの音が、そして全体の色模様が楽しく美しいのです。エロースの音楽です。今月92才で亡くなったジョルジュ・プレートルのように色気がたっぷりですが、ずっと現代的で知的です。
ノットは、たいへん頭がよく分析力が強いのですが、それが表に出ず、抒情的な優しさと明るさが全体を支配します。昨年、6回聴いたライブ(東京交響楽団)も、すべて嬉しくなる演奏ばかりで、なんとも気持ちがよいのです。健康で、美しい。
パワフルでダイナミックですが、丁寧で優しく、人間愛に満ちていて、威圧感が皆無で、民主的で、親しみがあり、心が温かくなります。悲しい曲や場面にも愛があり、救いがあります。
求心的な宗教性や主義ではなく、多様で明るい人間性豊かな世界です。これは21世紀の音楽で、とても明晰、みなを幸せをにします。、何度でも聴きたいと思わせる演奏です。
次は、マーラーの交響曲全曲セット(バンベルク交響楽団)を購入しよう。
それにしても、ノットの指揮でこの先7年間もさまざまなライブが聴けるのは、なんという幸せ!! 今年もまた東京交響楽団との演奏会、とても楽しみです。
武田康弘
追加(FBのコメント欄に載せたもの)
最初は歌手志望で、ピアノ奏者であり、器楽(フルート)奏者でもあるノットは、
個々の音楽場面の内側から音楽を見、知り、
そして、
頭脳明晰な指揮者として全体を俯瞰する。
個々の音の美しさ・よさの追求と、中身=イデー、いわゆる精神性の追求を同時に行えるので、
健康で、流れのよい展開が、快感(頭と身体の双方の)を呼びます。