わたしは、ベートーヴェンの音楽が大好きですが、
ピアノソナタと協奏曲は、ポール・ルイスのピアノが好き、というのを超えて「こよなく」愛しています。
優しさ、お洒落、溌剌、楽しさ、
矜持、揺るぎない強さ、
スムース、気持ちよさ、自由自在、
色気、うっとり、
躍動感、リズムのよさ、推進力、
健全、強靱、市民精神。
わたしにとって、ルイスの弾く「ピアノソナタ全曲」と「協奏曲全曲」の二組の全集は、ダントツのベストで、心にも身体にも頭にも、完全にフィットします。ウットリで超ブラボー!!
二組とも日本盤がないのは、日本の音楽関係者が音痴だからかな?(笑笑失礼)
もし、清瀬保二(ベートーヴェンとの出会いで作曲家になった孤高・独創の人で武満徹の唯一人の師)が聴いたなら、間違いなく絶賛したことでしょう。
今年11月の来日、ドキドキ(曲目は未定)。二年前のベートーヴェン後期3曲の演奏会(ベートーヴェン245才の誕生日)には、銀座の王子ホールにミューズとエロースとアポロンとディオニソスの神々が同時に降りたった!のでした。
(クリックで拡大)
以下のインタビュー記事は、とてもよくルイスの演奏を現わしています。
凄いんだってば!!
王子ホールマガジン Vol.31 より
図書館で8歳の男の子が手当たり次第にクラシックのアルバムを借り出していたら、さすがに多くの利用者が好奇の目を向けるだろう。しかしリヴァプール在住のポール・ルイス少年は周囲の目など気にせずに、ブラームスやシューマン、ときにはグラズノフなどの交響曲のLPを次々と自宅へ持ち帰り、自分以外はほとんど使わないレコードプレイヤーにかけて聴き入っていた。なかでもベートーヴェンの交響曲第4番との出会いは、30年経った今でもはっきりと憶えている。
第1楽章、穏やかにぽつりぽつりと呟き出した楽器たちが、やがて手を取り合って踊り出し、快活なアレグロへと流れ込む――ポール少年にとってそれはどこまでも力強く、胸踊る体験であった。彼はいてもたってもいられず母親をプレイヤーの前に引っ張ってきて、針を持ち上げ、第1楽章を最初から再生した。
「聴いてよ!」
……穏やかな導入部から、快活なアレグロへ……
「ね、すごいでしょ!」
すると母は、
「まあ……そうね、いいんじゃない?」
「そうじゃなくて! すごいんだってば!」