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★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

軍艦の場合などでは

2014-06-10 23:20:10 | 文学


 私が予め読者諸氏に、ことわって置く必要があると云うのは、これから、第三金時丸の、乗組員たちが、たといどんな風になって行くにしても、「第一、そんな船に乗りさえしなければよかったんじゃないか、お天陽様と、米の飯はどこにでもついて、まわるじゃないか」と云われるのが、怖しいためなんだ。
 船の高さよりも、水の深さの方が、深い場合には、船のどこかに穴さえ開けば、いつでも沈むことが能きる。軍艦の場合などでは、それをどうして沈めるか、どうして穴を開けるかを、絶えず研究していることは、誰だって知ってることだ。

――葉山嘉樹「労働者の居ない船」